第12話ビーストハンター 第2話 「東京租界に死す」(1)
荒れ果てた街の中は、汐の香りが入り混じったすえった臭いを漂わせていた。
人々に見捨てられた街のはずれにある、東京租界はゴーストタウンさながらのたたずまいを見せている。
水没をまぬがれた旧東京の一角にあるこの地区は、かっては各国から来た難民が住まう国連の租借地だった。
その昔、世界規模の気候変動と自然災害によって住む土地を失った世界各地の人々が、仕事と安全を求めて日本にきた。
しかし、その国連世界復興事業に協力した日本も、異常気象と頻発する自然災害に飲み込まれて首都を失ってしまった。
そして、見捨てられた難民たちが住む東京租界はスラムと化し、テロリストや犯罪者たちの巣窟となってしまったのだ。
警察の目が容易に届かない東京租界は、そんな人間たちが暮す掃き溜めの街…明日の希望のない街であった。
しとしとと降り続く雨の中、ビルの谷間にある錆びた裏口の扉の前に、小銃を手にした一人の男が立っていた。
突然向こうの方で「ドサッ!」と何かが落ちてきたような音がした。
物音に気付いた男は、油断なく小銃を構えて音のしたビルの下に近寄った。
見ると、路上に小さな植木鉢が落ちて砕けていた…鉢から飛び出したベゴニアの花が雨に打たれて濡れていた。
(おおかた、ビルの上のベランダから落ちたのだろう)ほっとした男は、構えていた銃を下ろしてビルを見上げた。
そして次の瞬間、首に絡みついたピアノ線に声も出せずに命を奪われた。
見張りを倒したジョーは、すぐさまビルの陰に待機していたシュンとヒジリに合図を送った。
シャルクを連れた二人の狩人がサササッ!と、扉の前に近寄っていった。
「ド!ド!ド!ド!ドッ!」ヒジリのMP-5 サブマシンガンが難なくドアの錠を破った。
突然の銃声に驚いたテロリストたちが、部屋にあった銃を手に取ろうとした時は、もうすでに遅かった。
「バリ!バリ!バリ!バリッ!」たちまち部屋の中は、イェーガーたちが放った銃弾の嵐が吹き荒れた。
「ヒョッホ~ィ!」シュンは楽しそうに奇声を発しながら、AK-47 カラシニコフの引き金を引いていた。
彼にとって銃撃戦は魅力的な殺人ゲームだった…人の命などはどうでもよい。標的を倒せさえすれば満足なのだ。
「ズド!ド!ド!ドッ!」「ドガッ!ドゥン!」ヒジリのMP-5 サブマシンガンと、ジョーのモーゼル C-96が協奏曲を奏でた。
あっ!と言う間にビーストに指定されていた五、六人のテロリストが、血の海の中に転がっていた。
「ガシャ~ン!」と窓ガラスの割れる音が聞こえた。
かろうじて隣の部屋に逃げ込んだ三人のテロリストが、窓ガラスを破って反対側の表通りに逃げ出したのだ。
「逃がすか~っ!」シュンとカイザーがひょいっ!と破れた窓を乗り越えた。
ヒジリとサムソン、ジョーとボルテも、すぐ後に続いて表通りに跳び出した。
~続く~
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