第7話ビーストハンター 第1話 「狩猟免許と言う名の殺人許可証」 (6)

 21世紀初頭、世界の市民はイスラム過激派などのテロや銃の乱射、凶悪な組織犯罪の脅威に晒された。

 日本は国際社会の秩序を守るため、先進国と協力して国防軍を派兵したり、国際犯罪組織の掃討に当たったりした。

 その結果、日本もテロリストや国際犯罪組織の標的となり、特に都市部ではテロリストや犯罪組織の活動が活発化した。

 ネオ東京のドームへの立ち入りは、人も車両も、警察や警備会社の厳重なチェックを受けるので容易には侵入できない。

 勢いテロリストや犯罪組織に狙われるのは、一般市民の生活の場である街の中…人が行き交い集まる場所に集中した。

 イェーガーたちはただ犯罪の取り締まりだけでなく、警察と協力してテロリストや犯罪組織と戦う任務も背負っていた。


 ヒジリの運転するビーグルは、ネオ東京の12番街の外れにある「音羽警備」の車庫に着いた。

 若い美人女社長である音羽沙羅が経営する「音羽警備」は、三階建ての古いビルの中にある。

 一階は警備の訓練場と車庫になっていて、ビークルの他にイェーガーたちが通勤に使う車が止まっていた。

 その中には異彩を放つ車両があった…それはナチスドイツ軍を彷彿とさせる3台の武装サイドカーだった。

 車体にB.M.W製の2000C.Cと言う強力なエンジンを搭載し、最高時速250キロの抜群の機動力を誇る代物だった。

 オートバイ本体と側車部は、完全防弾仕様であり、側車部には脱着式のロケット弾やマシンガン銃座が装備されている。

 犯罪が起きると、イェーガーは側車にシャルクを乗せるか、武器を取り付けてパッセンジャーとともに現場に急行する。

 ジョーやシュンは元より、以外な事に沙羅もこの武装サイドカーの巧みな乗り手であった。


 ビルの二階は「音羽警備」の事務所とシャルクのケージが置かれ、その奥は応接室兼会議室になっている。

 三階が居住スペースになっているが、廊下を挟んだ二部屋は、宿なしで転がり込んで来たジョーとウズメが住んでいた。

 反対側の間取りの広い部屋は、沙羅が12年前の事件のショックで病気になった母親を介護しながら暮している。

 さらに、もう一つ部屋があるが住人は住んでおらず、現在は武器や資料の倉庫として使われていた。


「お帰りなさ~ぃ」

 事務員の早川ヒナが帰って来たイェーガーたちとシャルクを迎えた。

「おぅ、またポイント稼いで来たぜ~」

 シュンは得意気にそう言うと、検死官に切ってもらったポイント切符をヒナに手渡した。

 デスクに座っていた社長の沙羅が、笑顔で立ち上がってみんなを出迎えた。

「みんなお疲れ様でした」

「あぁ、ちぃっとばっかし疲れたわ」

 そう言ってヒジリはジョーと共に、サムソンとボルテをケージに入れると奥の応接室に入って行った。

「雨でビショビショに濡れちまったよ。シャワー浴びなきゃね…おいで、ルージュ」

 ウズメはそう言ってシャルクのルージュを連れて三階の自室に上がっていった。

 シュンはカイザーをケージに入れると、ヒナを相手にとうとうと手柄話をし始めた。

 ツクモはいささか疲れた顔をして、沙羅のデスクの前にある椅子に腰を下ろした。


~続く~

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