第8話ビーストハンター 第1話 「狩猟免許と言う名の殺人許可証」 (7)

「失敗だった…もうちょっと早く駈け付けてりゃぁな~」ポツリとツクモは言った。

「聞いたわ…でも、夜行さんのせいじゃないわよ」慰めるように沙羅が言った。

「園児を人質に取って撃ってきやがったんでなぁ…ネトゲが始末しちまった」

「仕方ないわ…どんなに助けようと思っても、助けられない時もあるわよ」

「スマンな…何でこうなるのが分かっていて犯罪なんぞやるんだろうな」

「誰もビーストになろうと思っている訳じゃない…きっと、犯罪を犯すのはどうにもならない事情があるのよ」

「そいつを前もって聞いてりゃぁ、俺が止めてやるんだがな」

「そうね…人として生まれてきながら、獣として殺される。不条理よね」

「そう言やぁ…ビースト法ができたのって、俺が産まれるず~っと前だったよな」

「えぇ、初めはアメリカだった…私もまだ産まれてなかった遠い昔に「血の金曜日」事件ってのがあったそうね」

「あぁ、ウォール街がイスラム過激派の同時多発テロに遭って3000人からの死者が出たってんだろ」

「それで、テロリストの人権を剥奪する法律が作られた…それが徐々に犯罪者にも適用されるようになったのよね」

「あれから欧米では極右勢力が台頭して、アメリカじゃぁK.K.K団、ドイツじゃぁネオナチが復活したんだよな~」

「どこの国でもひどい人種差別や民族差別が横行するようになってしまったのね」

「日本はまだましな方さ…よその国じゃぁビースト法を悪用して反体制派の弾圧や、偽装殺人も起きているらしい」

「でも、どこの政府も国民を管理して治安を維持するのに都合がいいからって…ビースト法はなくならないわ」

「だよな…イヤな思いをするのは、俺たち現場で働くイェーガーだけってこった」

「だからイヤな思いをしなくてもすむように、できるだけ助けたいのよ…犯罪を犯す人たちを」

「あんたも辛い思いをしたもんな~…俺は死んだ音羽さんには随分世話になった。あ、スマン!イヤな事を思い出させちまった」

「いいのよ。もう父の事は…私もその父と同じ思いでやってるんだから」

「いい人だったよなぁ、沙羅さんの親父さんは…面倒みのいい刑事だった。あんないい人は二人といない」

「ありがとう…死んだ父をほめてくれて」

「未だに分からん。何で事件を捜査していた音羽さんが公安に射殺されたのか?…どうも裏がありそうな気がして」

「もうやめましょ…父の話は」沙羅は話をさえぎった。

「そうだな。スマン、スマン…悪かった。イヤな話をして」

 ツクモはそう言って沙羅に謝ると、椅子から立ち上がって階段まで歩いて行った。

「どこ行くの?夜行さん」

「ちょっと気になる事があってな…ちょっくらウズメねえさんに聞きにいってくる」

 沙羅にそう言い残すと、ツクモは三階へ続く階段を上がっていった。


~続く~

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