第9話 アタック・ザ・キラー飛芽 B(バスター)パート

 【スナックサファリ】

 太陽戦隊サンバルカンで登場する喫茶店。

 太陽戦隊長官・嵐山大三郎が身分を隠す為に経営している。名物はサファリカレー。従業員は山田隆夫。子供達が笑顔で立ち寄る良店である。

 海賊戦隊ゴーカイジャーや宇宙戦隊キュウレンジャーでも、主人公たちが地球で最初に立ち寄った店として登場している。




 九話 アタック・ザ・キラー飛芽 B(バスター)パート



 注文した料理を平らげた頃に、飛芽と朝顔は店長の来訪を受けた。

 そのややクモ怪人化した料理人兼ノベルワナビーを見ても、飛芽は誰だか分からなかった。

 最後に会ったのは、簀巻きにして神田川に放り込んだ情けない姿だったので、ギャップが激しくて分からなかった。

 その後の二ヶ月。極秘戦隊スクリーマーズとの日々が濃密すぎて、簀巻きにして川に捨てた生みの親(作者)の事など忘れていた。


「店長さん。客に向かって大根足とか、正直にブッこいたらダメでしょ。あのメイドロボ店員の思考ルーチンを、もっとマトモに調整してよ。お詫びは、店長のエア焼き土下座だけでいいからさ」


 大泉太平店長が又もフリーズしたので、メイドロボ店員一号は、頭をスパコーンと叩いて景気付けをする。

 店長は、中ボス怪人クラスの貫禄をかき集めて、飛芽に話しかける。


「私だ、トマト怪人トメイトゥ。お前の登場する小説の作者にして、支配者。大泉太平だ。忘れたとは言わせんぞ」


 そう言われて、飛芽は遠い記憶を振り返る。


「本物?」


 ぬまっち(シャア芸人)を初めて見た一般市民のように、飛芽は店長を怪訝にジロジロと観察する。


「おかしいなあ〜? 簀巻きにして神田川に流せば、練馬区に漂流して戻って来られないはずなのにな〜」

 この娘の地理感覚は、一切信用できない。

「細かく覚えているじゃないか!!?」


 大泉太平は絶叫しながら、神田川に放流されて以降味わった恨み辛みを言い募ろうと飛芽に接近し、


「隙あり!」


 先制攻撃を、もろに食らった。


 飛芽の真空飛び膝蹴りが、店長の顔面を直撃する。

 そのまま勢いを殺さずに大根足で店長の首を両足の太ももで挟み込むと、飛芽は全体重をかけて首の骨をへし折った。

「人の生足を抱き枕にしようとした変態を、忘れる訳ないじゃん」

 ついで着地と同時に店長の体を振り回してメイドロボ店員たちをなぎ払い、レッドスクリーマーに変身。

 不死鳥(フェニックス)を模した紅玉の戦闘服が、飛芽の全身を瞬時に包み込む。

 途端、飛芽の全細胞がテロメアごと再生し、最大限に活性化する。

 レッドスクリーマー(仮)飛芽は、怪鳥の如きつんざく絶叫を発しながら、朝顔を抱えて脱出を図る。


「飛芽、買い物袋が」

「後で買い直す!」


 朝顔をお姫様抱っこしながらキックの連打でメイドロボ店員たちを蹴散らし、飛芽は喫茶店スナックアマゾンの入り口まで三メートルの距離まで戻る。

 その瞬間、入り口は鉄扉で覆われ、東急ハンズ渋谷店内に戻る道は閉ざされる。


「鉄の扉ぐらいで、止まるかああーーーー!!!!」


 レッドスクリーマー(仮)飛芽のキックは、一撃で鉄扉を五〇センチは凹ませた。

 連続して蹴り続ければ破壊も可能だったであろうが、煮え滾るカレーがレッドスクリーマー(仮)の足元にかけられる。

 張り付いたカレールウから、戦闘服越しにも高熱と激辛の痛覚が染みてくる。

 朝顔がカレールウを浴びない事を最優先に庇いながら、レッドは敵に向き合う。

 頭がカレー鍋のシェフ姿の男が、地獄のカレールウ二撃目をオタマに掬いながら、名乗る。


「カレー怪人、マキシマム大鷲。我が激辛から、逃がれる事は叶わぬ」

「なら、自分で食ってみろ!」


 カレールウが付いたままの右足爪先を、レッドはハイキックでカレー怪人の口中に突き返す。

 カレー怪人マキシマム大鷲は、余裕で自作のカレーをブーツからひと舐めすると、満足した顔で倒れる。

 

「ふふ。我が攻撃用激辛カレーは、我すら倒すほどに完璧なるかな」


 なら食うなよというツッコミの中、カレー怪人マキシマム大鷲は気絶した。

 続いて、巨大なパンケーキに身を包んだ巨漢が、レッドの前に名乗り出る。


「次鋒、パンケーキ怪人、サイレント鮫島。キャラ設定は…」

「やかましいわ」


 面倒臭いので、レッドは極秘戦隊専用攻撃銃スクリームブラスターを発砲する。


「ぎゃあああああ」


 心臓を撃ち抜かれて、パンケーキ怪人サイレント鮫島は瞬殺された。

 あまりにも簡単に始末してしまったので、非難の視線がレッドスクリーマー(仮)飛芽に集まる。


「なんだよう。ブラスターの一発で死ぬような怪人がいるなんて、思わないよう」

「現実世界には、主人公補正も怪人補正も無いのでございます。通常攻撃で、充分に死にます。殺陣も見せ場もなしで瞬殺とか、この鬼畜KYレッド」

 メイドロボ店員一号が、骨折した店長の首を手探りで直しながら、飛芽の抗議に逆ギレする。

「様式美、ないよね。現実世界」

 首の治った店長が、現実離れしたタフネスさで現実を嘆く。

 朝顔が、レッドの腕から降り立ち、パンケーキ怪人の遺体に手を合わせる。

「パンケーキ、ごちそうさまでした」

 いい子やなあという共通認識が敵味方に広がる中、三人目の怪人が場の空気を芳醇な香りで包む。


「コーヒー怪人、アクション雨氷。朝顔さんと話をさせてくれろ、トマト怪人。それが目的だから」


 爽やかな笑顔で腹部のコーヒーミルを操作しながら、コーヒー怪人(外見は普通の飲食店員だけど)は場の空気から闘気を削ぎにかかる。

 特殊なコーヒーの芳香に戦意を削がれながらも、レッドスクリーマー(仮)飛芽は断固断る。


「話が終わっても返す気が無いと見た。撃滅あるのみ」 

「トマト怪人。君はそもそも、戦うべきではなかった」

 コーヒー怪人は、コーヒーミルの操作を止めて、背を向けた。


 レッドスクリーマー(仮)飛芽は、温厚そうな相手に背中から攻撃する程に卑劣でも冷酷でも無い。

 背中を向けられて、お人好しは迷う。

 その隙に、背中からの攻撃が平気な敵が、レッドの背後を取っていた。


 レッドスクリーマーの首筋に、黒い大型ナイフが根元まで差し込まれる。

 体勢を立て直す隙も与えられず、黒い大型ナイフがレッドの背中や肩、肺、臓腑に十二本。

 レッドの視界の片隅に、静かに奇襲を決めたサイボーグ男の姿が映る。

 全身に黒い大型ナイフを装備した黒尽くめの黒基サイボーグ男が繰り出した十三本目は、心臓に突き立てられた。

 戦闘服の防御力など無視して、黒い大型ナイフの刃はレッドスクリーマーの再生能力を上回るダメージを与えた。

 そこまで痛めつけられて倒れても、死ねずにレッドは朝顔を視線だけで追う。


 朝顔は、メイドロボ店員一号からのパンケーキ投入で容易に蘇生したパンケーキ怪人に挟まれて、身動き取れない状態に。絵的にエロい束縛状況に、朝顔の顔が一気に赤面する。

 朝顔は、それでもまだ飛芽の方を心配して悲痛な視線を向ける。

 パンケーキで簀巻きされた朝顔と違い、レッドの方は全身串刺しで大量出血。

 レッドスクリーマーの再生能力の事は知っていても、ビジュアル的にはトラウマものの惨状である。

「飛芽ーーーー!!!!」

 朝顔の叫びに、飛芽は意識を苛む激痛を気合いで押し退ける。

 心も守れという岸司令の言葉を思い出し、レッドスクリーマー(仮)飛芽は喉にナイフが刺さったままでも声を絞り出す。


「…だいじょう…ぶ… …これ…トマトジュース…だから…」


 レッドの強がりに、朝顔は涙混じりの苦笑で返す。


「今の奇襲程度は躱せ、未熟なレッドよ」


 黒色基調のヤバい戦闘装甲服を着こなすサイボーグ男は、レッドに上から目線発言を本当に真上から浴びせてから、店長に正対する。


「川底帝国 攻撃隊長 ダーク・アラシ。

 盟約通りに、助太刀に参った」


 顔に辛うじて残っている右眼球で、ダーク・アラシはカメラ目線でウインクをした。



 次回予告

 シリアスな敵が出ないなんて、いつから錯覚していた?

 作者のせい?

 うん、そうだね。

 人質を取られ、東急ハンズ渋谷店が巨大ロボへと変貌する中、ついに極秘戦隊の巨大ロボが出撃するかもしれない事もない事もあるないアルヨ。

 次回「アタック・ザ・キラー飛芽 Cパート」を、親戚一同で観よう!!




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