002 罷免されカオステラー
僕らは彼らについて、深い森の中に入り、歩く。その間、先ほどの『ぬいぐるみ』や『チェスの駒』が現れることはなく、僕らは無事に彼らのアジトについた。
アジトにつき、僕らを座らせると、キールは僕たちに尋ねた。
「まず聞かせてもらおう。君たちは、何者だ?」
「名乗るときは自分たちからいうものだろ?」
タオが強気に返す。それをキールは聞いて、フンっと鼻を鳴らすと、話した。
「いいだろう、俺はサヴァンキール。サヴァンと呼んでもらっていい。そしてこいつはラーラ。元見習い神官だ。」
「宜しくお願いします。」
ラーラと呼ばれた少女が僕たちにお辞儀をする。
「さて、もう一度聞くが、お前たちは何者だ?」
サヴァンさんはタオに再度尋ねた。
「俺たちは、ある事情で旅をしている旅人だ。で、こいつがシェイン、俺の義妹。で、その隣のこいつが、れいな、元お姫様、そして、こいつがエクス、最近旅に加わった新入りだ。」
「宜しくお願いします。」
紹介された僕たちはサヴァンとラーラにお辞儀をする。サヴァンはそんな僕らを見て、納得した様子をして、驚くべきことを言った。
「なるほどな。旅人か…。で、この想区を調律しに来たのか。」
今、調律って、サヴァンさんは言った!?
「ど、どうしてそのことを…。」
れいなが警戒したようにサヴァンさんに尋ねる。
「安心しろ。俺たちはこの現状を引き起こしたカオステラーではない。」
れいなの質問をどうとらえたのかは知らないが、サヴァンさんは、さらに驚くべきことを言った。
「…ではなぜ、『調律』や『カオステラー』のことを知っているのですか?」
この中で唯一冷静さを保っていたシェインが、サヴァンさんに尋ねた。
「それは、この物語には、そもそも『カオステラー』がいたからだ。」
「はぁ⁉どうゆうことだ?それは。」
タオが食って掛かる。
「人の話は最後まで聞け。この物語には、そもそも『カオステラー』がいた。そして、俺はこの物語の元主人公で、ラーラはこの物語の元『カオステラー』だ。」
「…はぁ⁉」
もっと訳が分からなくなった。僕たちは、思わず、叫んでしまった。
「詳しくお話ししましょう。」
ラーラが僕たちを落ち着かせてから、話し始める。
「そもそもこの物語は、サヴァン様が裁判官をやめたところから始まります。で、この物語の中には『ヴィラン』と名づけられた怪物がいて、人々が襲われていました。」
「ちょっと聞きたいんだけど、その『ヴィラン』って、黒くて手足が生えていて、『クルゥ…』って鳴くやつ?」
れいなが、ラーラに尋ねると、サヴァンさんが答えた。
「ああ、そうだ。たぶん、お前たちの想像している奴と同じだ。」
サヴァンさんが、ラーラに話を続けるように促す。
「ここで、聖教、この町で信仰されている、宗教ですが、そこが主導となって大規模な`ヴィラン’狩りが行われるようになります。そこで、キール様はもとから剣に自信があり、裁判官の報酬より、`ヴィラン‘を倒すほうが報酬がよかったことから、裁判官をやめ、賞金稼ぎとなります。」
「え、そんな理由で!?」
僕は、正直驚いた。シンデレラの想区には裁判官たる人はおらず、王子様が裁判を行っていたが、裁判官がどうゆう仕事で、賞金稼ぎに比べて、安全な仕事であることを知っていたからだ。
「ああ、俺はあの頃は金の亡者だったからな。」
サヴァンさんは懐かしむように、そして自嘲的な渡井を浮かべながら言った。
ラーラが話を続ける。
「しかし、人々が`ヴィラン’をいくら倒しても、減ることがありません。そこで、私が研鑽を積んでいた神殿に眠っていらっしゃった、『スケエル』という女神に人々は助けを乞うようになりました。しかし、神殿でスケエル様に仕えていた高位四神官の皆さんは『スケエル様は黒き五本の矢を心に射抜かれて、永遠の眠りについていらっしゃるから、どうしようもない。』と人々に言いました。」
「四神官って誰がいるの?」
れいなのそんな質問に、ラーラは少し驚いたようだったが、説明してくれた。
「冷静沈着な長女イストス、心配性の次女リアン、四姉妹の中で最も勇敢なステイ、自由奔放な四女テルミエの四人で、聖教の幹部を除くと、最も地位の高い神官の四姉妹です。」
「つまり、直接的な支配はその四神官の方々がやっていたということですか?」
シェインがラーラに聞くと、サヴァンさんが答えた。
「いや、あいつらは、町人に何かすることを強い労とはしなかった。が、町人からはシンボル的な存在として尊敬されていた。」
「なるほど…。」
ラーラが話を続ける。
「しかし、私はそのことが信じられず、こっそりとスケエル様が眠られている部屋に入りました。 その部屋には確かにスケエル様が眠られていました。しかし、別物ものもいたのです。それは黒き五本の矢から漏れていた瘴気でした。私はあっという間にそれにあてられ、『カオステラー』となり、『ヴィラン』を操って、人々を虐殺するようになりました。」
「その時の記憶とかはあるのか?…つらいなら、いわなくてもいいが。」
タオが、遠慮がちにラーラに尋ねた。ラーラは、小さくうなずくと話した。
「…はい。あります。といっても、夢の中で、勝手に体が動いているような感覚でしたが。」
「そうか…話の腰を折ってすまなかった。」
タオは何かわかったような、わかんなかったような顔をした後、ラーラに話の腰を折ったことを謝った。
「いえ。そのころ、キール様は名をあげられ、町一の賞金稼ぎとなっていました。そして、聖教は私が『カオステラー』化してしまったことをキール様に話し、倒すように言いました。」
「倒す…ってことは殺せと命じたの?」
れいなはサヴァンさんに確認するように言う。
「ああ、そう命じられたな。まあ、金額と理由が気に食わなかったから断ったがな。」
「彼は私を殺すことに反対しました。そして彼は、四神官に会いに行きました。すると、四神官の皆さんは、私が、研鑽が嫌で逃げ出したと、聖教の幹部から知らされていたそうです。」
「本当のことを知らされていなかったの?」
れいなが不思議そうに聞くと、シェインがれいなに言った。
「大きな組織というものは、一枚岩ではないということですね。」
「その通りだ。いいこと言うな、鬼のお嬢ちゃん。」
「なんで、それを…。」
サヴァンさんが一瞬でシェインの正体に気付いたので、シェインは面を食らった。
「長い間、裁判官をやっていたからな。この町では、人間も人間以外も、言語能力があって意思疎通が取れるものは『人』として扱って、裁判を受けたり、訴えたりしていた。まあ、お嬢ちゃんのように完全に角がないのはいなかったが。」
つまり、この想区には完全には人間でない、鬼姫や孫悟空のような人外のものも暮らしているのか…。
「そうですか。ちなみにその方々も…?」
「ああ、町人と同じく今は平和に何も見えないで生活している。」
「…。」
シェインの表情は変わっていないが、落ち込んでいるのが分かった。
「四神官の皆さんは、キール様の話を聞き、私を倒すのではなく、『カオステラー』ではない元の見習いの状態に戻す方法を探す旅に出ます。もちろん、『カオステラー』となった私は姿を隠していましたので、その私を探すという目的もありましたが…。その間、神殿に四神官が不在になる状態にするわけにはいかなかったので、次女リアンを残していかれました。その後、三人はその方法、『調律』と呼ばれていましたが、それを見つけて、神殿に帰られました。そして、それからすぐ留守中にリアンさんが見つけていた私の居場所、神殿最深部、スケエル様が眠っていらっしゃった部屋の奥に隠してあった秘密の部屋に来ました。」
「簡単に見つかるようなところだったの?そこは。」
「いえ、絶対に見つからないはずでした。しかし、リアンさんはとてもさがしものが得意な方だったので。」
「じゃあ、この場所はまだ、バレていないの?」
れいなが、少し不安そうに言うと、ラーラは、自信を持っているように言った。
「二日前に移したばかりなので、おそらく。…話をつつけます。それで、私はサヴァン様と四神官を相手に戦うわけですが、私の力のほうが圧勝とは言わないまでも、サヴァン様たちが力尽きる寸前まで追い詰めました。」
僕はその言葉を聞いて、サヴァンさんの、町の中での戦闘を思い出し、驚く。
「え⁉サヴァンさんってあんな強かったのに、それに勝っちゃったの!?」
サヴァンさんは自分が負けたことを気にする様子もなく、僕に説明する。
「ああ、あの頃の俺は金ばかりを追って、自分を磨こうとしていなかったから、まったく強くなかった。強くなったのは、『ぬいぐるみ』を狩るようになってからだな。」
「本当の物語では、そこで永遠の眠りについていたはずのスケエル様が目を覚まし、彼らを助け、私を気絶させて、`調律‘をする。そして、私は再び見習いに戻り、`ヴィラン’スケエル様が復活したことにより消滅する…。というものでした。」
「ということは、そこで邪魔が入ったということね。」
れいなの言葉に、サヴァンさんがうなずき、話し始める。
「ああ、そういうことだ。ここからは俺が話そう。そう、あれは、俺が『カオステラー』であったラーラに倒される寸前だった。ラーラの唱えた呪文を遮ったやつがいた。そいつはにやにやと笑いながらこう言った。『この程度の攻撃で倒れてしまうんですか?あなたは。投目に見ていましたが、最初のころと比べて、うでが落ちましたねえ。この想区にはもともと『ヴィラン』がいたから停滞することはないと思いましたが、思い違いだったようです。』とか言うと、俺の意識は遠のいていき、気が付くと、森の中に、『カオステラー』ではない状態のラーラと一緒に倒れていた。俺はラーラを起こし、何があったのかを聞くと、『わからない』と言ってな。近くに四神官がいないものだからどうしたものかと思ってみてみると、町には『ヴィラン』は一匹もおらず、『ぬいぐるみ』と人間が生活している世界だった。」
「それで、二人はどうしたんですか?」
「まあ、驚いたが、とりあえず、神殿に行った。すると、街中には、やはり『ヴィラン』はおらず、四神官のやつらと『ぬいぐるみ』と人しかいなかった。スケエルが消えていて、まるで四神官こそが神であるかのような光景だった。しかも、それを疑うやつは誰もいなかった。そこで俺は初めて『何かがおかしい。』と思った。そして、俺は、四神官のやつらに尋ねた。『この『ぬいぐるみ』は何だ?そしてスケエルはどこに行った?』ってな。すると四神官は『あなたたちにはこれが『ぬいぐるみ』に見えるのですか?』ってな。だから俺はこう言った。『ああそれ以外に何に見える?』ってな。そうすると、あいつら、突然『ぬいぐるみ』と人のほうを向いて、俺たちを異端者呼ばわりしたのさ。そして、『ぬいぐるみ』が襲い掛かってきた。突然のことに俺は動けなかったが、ラーラが、転移呪文で脱出してくれてな。それからは『`ぬいぐるみ』を倒しながら、この町でない場所に行ったり、森の中で量をしたり、ほぼ自給自足の生活をしている。」
「そのにやにや笑っていたやつって…。」
「間違いなくロキだな。」
脳裏にあのニヤニヤと笑う顔が思い浮かぶ。そして、カーリーのことも。
「近くに白髪の女の子はいなかったですか?」
「いえ、見ていません。」
「そうですか…。」
じゃあ、今回はカーリーは来ていないのか…。
「ちなみに、サヴァンさんから見て、今、誰がカオステラーかわかりますか?」
シェインが聞く。
…それがわかっていたら、もう、対処していると思うんだけど…。
「もし、あんたらが言うカオステラーが、俺たちの物語の『カオステラー』と同じような、元あった物語をおかしくするものだとしたら、カオステラ―は長女、イストスで、ほかのやつは操られているだけのはずだ。」
え、誰がカオステラーかわかっているの?
「そいつらの居場所はわかっているのか?」
「はい。彼女たちは町の真ん中の神殿にいます。ですが…。」
「ですが…?」
ド―――――――ン‼‼
「‼‼」
突然、爆発音とともに、アジトのドアが吹き飛ばされた。
「おーい、お前たちーっ。お前たちは包囲されている。おとなしく出てきて、お縄につけーっ」
「ふぇ、テルミエ、ドアを蹴り飛ばしたりしたら、危ないよ…。」
外からいかにも元気のよさげな少女と、少し、人見知りっぽい少女の声が聞こえた。
「おねーちゃんは心配しすぎなのっ。」
「またベタな脅しをかけてきましたよ。」
シェインが冷静なツッコミを入れる。
「ちっ、ばれていたか…。」
サヴァンさんが悔しそうに下唇をかむ。
「あれは、四姉妹のうち、次女のリアンさんと四女のテルミエさんですね。」
「どうするの?」
れいながサヴァンさんに方針を訪ねる。
「心配性のリアンのことだ。テルミエが言ったと通り、完全に包囲されているに違いない。」
「となると逃げるのは難しいな…。」
「となると、正面からぶつかるしかないな。タオファミリー出撃だ‼。」
一同がどうするか悩んでいるとき、タオが、声高にいった。
「おい、正気か?お前ら!?」
それを聞いて、サヴァンさんは、泡を食らっている。まあ、しょうがないとは思うけど…。
「ええ、でも、私たちには力を貸してくれる仲間たちがいる。だから、あの『ぬいぐるみ』をモフモフしに…じゃなくて倒しに行くわよ。」
「今、明らかにごまかしましたよね。」
「ええ、ごまかしましたね。その前の決め台詞が台無しです。」
シェイン、そこまで言わなくても…。
「キュ、キュー…」
『ぬいぐるみ』までがれいなを警戒して、近づこうとしない
「お嬢、『ぬいぐるみ』に若干引かれているぞ…」
「そんなことはどうでもいいわ‼行くわよ‼」
れいなが若干、かなり強引に締める。
………
……
…
「お前らなかなかやるな、あの二人を倒すなんて。」
「むきゅー…」
「はわわ…」
テルミエとリアンは完全にのびている。
「あ、リアンさんが起きました」
リアンと目を覚ますと周囲をきょろきょろと見渡して、テルミエに気付いた。
「はわわ、大丈夫!?」
「きゅー…」
「はわわ、お姉ちゃんのところに連れて帰らなくちゃ‼」
「あ、おいっ‼」
リアンはどこにそんな力があるのか、ボロボロになりながらテルミエを抱えてテルミエを抱えて走り出したが…。
「はぁ、はぁ、お、重い…。」
すぐ立ち止まってしまった。
「妹に結構ひどいこと言ったわよ、今。」
「でも、都合がいいですね。」
シェインはそっとリアンに近づくと、
「鬼ヶ島流拳技、裏拳‼」
「うっ…」
「一撃で落とすとは…。鬼ヶ島流恐るべし…。」
「でも、あれ、ただの裏拳じゃないの?」
れいなが言ってはいけないことを言ってしまった。
「重要なのは雰囲気です‼」
「そ、そうね…。」
シェインの気迫にれいなが押されている。
「取り合えず、イストスさんがかけた呪文を解きましょう。」
…
「んっ…あれっ、あなたたちは一体誰ですか!?」
僕たちを見て、リアンさんは早速泣きそうな顔になっていた。
「おっ、目ぇ覚ましたか。」
そこへ、外にいたサヴァンさんが帰ってきた。
「サヴァンさん‼どっ、どうゆうことですかっ…テルミエはっ‼」
「落ち着け。あいつは大丈夫だ。まだ寝ている。ところであんた、さっきまでのことは思い出せるか?」
リアンさんは深呼吸をすると。サヴァンさんのほうに向きなおっていった、
「えっ…えーとっ…はい。あの人たちはどうなったのですか…?」
「ちょっとついてこい。」
サヴァンさんがたちあがる。
「え、はいぃ。」
サヴァンさんがリアンさんを連れて捕まえておいた『ぬいぐるみ』の前に連れて行った。
「あんた、これが何に見える?」
「え?カワイイぬいぐるみさんでしょう?それより、あの人たちは…?」
リアンがいぶかしげに聞く。
「これがあんたの言っていた“あの人たち”だ。」
「え…!?」
サヴァンさんはイストスが姉妹たちを操っていることと今まで人間だと思っていた人の中に、この人形―元`ヴィラン‘―が混ざっていること、そして現状を引き起こしているのがカオステラー化してしまったイストスであることを話した。
「そんな…御姉様が…。」
リアンが落胆していると、テルミエが目を覚ましたようだ。
「んっ…おねえちゃん…どうしたの?」
テルミエは落胆している、リアンを見て、心配そうな顔をする。
「実はね…。」
リアンはサヴァンが話したことをテルミエに話した。
「そんな…御姉様が…。」
「さすが姉妹ですね。反応が同じです。」
近くにいたシェインがそんなことを言った。
…
その後、この語の方針、つまりどうやって、イストスのいる神殿に向かうのか僕たちは話し合った。しかし、神殿が町の中心にあり、サヴァンと僕たちは町人たちに顔がわられていて、町に入った瞬間、大騒ぎになるのは間違いないので、神殿にどうやって向かうのかの案はなかなか出なかった。
「やっぱり、町人が全員敵側についているのがツライな…。」
「ぐすっ、やっぱり御姉様を止めることはできないのかしら…。」
リアンが泣きそうな顔をする。
「おい、泣かないでくれよ。こうなっちゃったからにはしょうがないんだから。」
「ええ…でも…。」
「ねえ、おじさんたち。」
テルミエはなかなかに衝撃的なことといった。ていうか、サヴァンさんのこと
知っているはずだよね…?
「おじさっ…」
思わずおじさんと呼ばれた二人は絶句し、それ以外は吹き出してしまった。
「俺たちはおじさんじゃない、せめておにいさんと呼んでくれ。というか、テルミエ、お前、俺の名前知ってるだろ。」
サヴァンさんがテルミエを軽くにらむ。
「そんなことはどうでもよくてさ、どうして、町人が全員敵側についているのがツライの?」
テルミエがわかりきったことを尋ねる。
「それは…町に入ったとたん、町人たちが邪魔をして、神殿にたどり着けないから…。」
「じゃあ、町人たちに邪魔をさせなければいいんだよ。」
何を言っているのだろうか?
「テルミエ、そのためには、町人に味方してもらわないと無理だろ。」
「ああ、そうゆう手がありましたか。なかなかやりますね、あなたは。」
どうやら、シェインはテルミエの考えていることが分かったようだ。
「えへへ、ありがとう、おねえちゃん。」
「一体どうするつもりなの?危険じゃないわよね…?」
リアンが心配そうにテルミエを見つめる。
「うんっ、大丈夫。簡単なことだよ。私たちが、お兄さんたちを捕まえて、神殿に連れていく事にすればいいんだよ。」
「‼‼」
まさに逆転の発想だった。彼女たちはもともと、向こう側の人間だったことを利用するのか。
「確かにそうすれば、町人に邪魔されず、神殿まで行くことができるわね。」
「よし、じゃあ、その作戦でいこう。ラーラ、縄はあるか?」
「はい、サヴァン様。」
アジトの奥から、人を縛るのによさげな縄をらーらが持ってきた。
「作戦の決行は早いほうがいい。明日の朝、作戦を決行しよう。」
「応‼」
次の日の朝…
「では、失礼して…。」
そうして僕らはリアンたちによって、縛られていく。
ぐるぐるぐるぐる。
「えーとっ、皆さん、なんかあったら、この部分を引っ張れば、縄がほどけるので安心してください。」
「お姉様は心配しすぎだよ。」
おねえちゃんは…というように、テルミエは言う。
「備えあれば患いなしって言うからな。備えておいて損はないだろう。」
「皆さん、きつくないですか?」
リアンさんは、まだ心配そうだ。
「ええ、大丈夫よ。」
「いこう‼」
この作戦が吉と出るか、凶と出るか…。
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