混沌のダブルリバース

ハチロク

001 カオス化されたヴィランのいない想区

僕ら、タオファミリーはまた新たな想区に来ていた。その想区は樹海といってもいいほどの深い森と、大きな神殿を中心とした町、そして小さな丘のある想区だ。

「ここは誰の想区なのかな?」

僕は、隣の金髪の少女―れいなに聞く。

「さあ、どこかしらね?」

「あ、あそこに人がいますよ。」

すると、黒髪の少女―シェインが言うほうを見てみると…。

「この、化け物たちめ、成敗してやる!ついてこい、ラーラ‼」

「はい、援護します。」

そこには、ファンタジーなかんじの『ぬいぐるみ』、そして『動くチェスの駒のようなもの』に剣を向けて、切りかかっている男と、呪文を唱えている少女、そしてその二人を遠巻きから見ている町人たちがいた。

「なんか、『ぬいぐるみ』と『チェスの駒』と戦っているね…。」

「どう見てもアブナイ感じの人たちね。」

れいなが、気の毒そうな顔で、その二人組を眺めている。

「もしかして、またドン・キホーテの想区に来ちまったんじゃねーか?」

長身の青年―タオが、言う。

「待ってください、ドン・キホーテにしては若すぎます。それにドン・キホーテの想区だったら、『チェスの駒』がいるのはおかしいです。だから、ここは『鏡の国』で、彼らは『マッドハッター』と『3月ウサギ』ではないでしょうか?」

「でも、『マッドハッター』程はアブナそうではないわね。」

『マッドハッター』、僕たちは彼とは『鏡の国』と『不思議の国』で会ったが、確かにあそこまでアブナイ感じの人ではなさそうだ。

「じゃあ、やっぱ、ドン・キホーテの想区なんじゃないのか?」

タオと僕たちがそんなことを話していると、彼らに僕たちの会話が聞こえたらしく、彼らは僕たちのほうに駆けてきた。たくさんの『ぬいぐるみ』と『チェスの駒』を連れて。

「あ、こっちにきましたよ。」

「やべっ、俺たちの声が聞こえたのか!?エクス、何とかしてくれ。」

なかなかの無茶ぶりだ。

「えっ…シェイン…。」

僕は、シェインに助けを求めようとする。が、

「無理です、新入りさん。というか、もうそこまで来てますよ。」

シェインがそう言い終わるかぐらいのところで、その二人組のうち、青年のほうが、焦った様子で僕たちに話しかけてきた。

「おいっ、君たち、もしかしてあいつらが人間ではなく、ちゃんと『ぬいぐるみ』に見えるのか!?」

青年は僕たちに当たり前のことを聞いた。

「ええ、そうだけど…。」

「というか、あれのどこが『ぬいぐるみ』以外のものに見えるんですか?」

れいなとシェインがそう答えると、後ろから青年を追いかけてきた少女がつぶやいた。

「だとしたら、この方たちも…やっぱり、危ないっ。」

突然、さっき彼らが戦っていた『ぬいぐるみ』がその姿に似合わない、鋭い爪で僕らを攻撃をしてきた。

「うわっ。」

間一髪でよける。

「どうゆうこと!?これは。」

「おい、こいつらもしかして新手のヴィランか!?」

「だとしたら、どうして私たちだけを攻撃してほかの町人には攻撃しないの!?」

「わかりません、でも、とりあえず、反撃しないとまずそうですよ。」

僕らが突然のことに慌てていると、青年が叫んだ。

「おまえら、話をしている暇はないぞ!」

そうだ。今は目の前のやつらがヴィランかどうかを考えている暇はない。

「みんな、いくよ!」

………

……

「よしこれでラストっ」

僕は最後のぬいぐるみを倒した。

「これでもう安心でき…」

シェインがそう言いかけたところで、それよりも大きな声で、近くにいた、町人が叫んだ。

「おい、お前たちっ、なんで罪なき町人を殺したんだっ。」

「えっ…僕たちはヴィランを倒しただけで…。」

そういっている間にも、僕たちを見て、野次る町人は増えていく。

「ヴィラン?この人たち何を言っているのかしら?」

「縛って、イストス様のもとにいれていこう。」

「おーっ‼」

「一体、どうゆうことなのよ⁉」

ジリジリと壁際に追い込まれていく僕らと町人たちの間に『チェスの駒』との戦いではぐれてしまったさっきの二人が立ちふさがった。

「なっ、お前たちは…」

「こいつらは俺たちが預かる。文句があるなら、俺を倒すか、それなりの金を用意して来い。」

青年は僕たちを野次っていた町人たちに向かって、宣言をする。

「くっ…すきにしろっ。」

すると、男性は悔しそうな顔を浮かべていたが、そこから立ち去り、ほかの町人も蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。

「おい、お前たち、さっき『ぬいぐるみ』といったよな?」

それを確認すると、青年は僕たちに、さっきと同じ質問をした。

「ええ、そうだけど…あなたたちは誰?」

「ここは人目が多すぎるので、お話は私たちのアジトに来ていただいてからにしましょう。キール様。」

れいなの質問に少女は答えず、僕たちについてくるように言った。

そして、キールと呼ばれた青年は僕たちのほうを向いて言った。

「ついてくるか、ついてこないかは、お前たちの勝手だ。選べ。」

すると、タオが即答した。

「わかった、あんたらについていこう…。」

「えっ!?」

れいなは驚き、タオのほうを振り返る、

「そうですね、今事情を知ってそうな彼らについていかないで、明らかにシェインたちを敵視しているであろう、町人の中にいるのは賢明じゃないですからね。」

シェインが賛同する。

「…そうね。そうしましょう。エクスは?」

…シェインの言うように、ここにいても、安全ではない。だから、寧ろ、この人たちについていったほうが…。

「うん。ついていこう。」

「…決まったようですね、では、ついてきてください。」

少女は言った。

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