works/4852201425154965845

『鳥籠の姫君』

https://kakuyomu.jp/works/4852201425154965845/episodes/1177354054880233690


 度の過ぎた安楽椅子探偵に事前情報を与えてしまうと、事件は発生すらすることなく、未然に防がれてしまう。

 情報を与えられた探偵が事件を防がなかったということは、その事件は、探偵によって発生の必要性を認められていたものだということになる。

 人が死ぬ前に事件現場に招かれる名探偵の役割は、怪盗へのカウンター、宴会の箔付け、功績への感謝、そうでなければ要人の警護くらいのもので、今回主人公たる名探偵がその場に呼ばれたのも、殺人予告への備えとして、ということになっている。


 名探偵を主人公とする探偵小説の多くでは、仮に世界が名探偵のために作られたとしても、その舞台は名探偵ならざる人のために作られている。

 それは勿論、探偵の名声が広がるにつれ、名探偵のためだけに事件を起こすような犯罪者も出てくるものだけれど、一話においては大概そんなことはない。

 例外を挙げるのは例外が出て来た時だけで十分だろう。


 だから、時として名探偵はそれに反逆する。

 つまりこれは、鳥が見出した、自分の周り以外の世界の全てを囲う鳥籠の中で起こった、そういう事件についての物語なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る