第18話 ユキの雪

 月には雪が降らない。

 そして月には、色々なところから猫達がやってきます。

 なかには、『雪』を知らない猫もいるのです。


「月の雪は甘くて冷たくない…地上の雪よりいいな~」

 クロさんは星雪を、おもちと一緒に食べながら夜空を見上げます。

「楽しいよね、冷たくないってのがいいね」

 星雪を丸めたり、埋まってみたり…チョビさんは星雪で遊んでいます。

「冷たいの?雪って?」

 チョビさんと遊んでいた茶トラの子供が2人に尋ねます。


 そう…今日の依頼は子猫の子守りなのです。

 子守りというか、チョビさんは同じレベルで遊んでいますが…。


「キミ、雪を知らないの?」

 クロさんが茶トラに尋ねました。

「うん…見たことないよ…僕のお家は暖かい所にあるから」

「そうなんだ…雪が降らない場所もあるんだね…月だけかと思ってたよ」

 チョビさんが驚いています。

「ユキの家では毎日振ってるのにね」

「毎日は降ってないけどね…」

 クロさんが呆れた顔でチョビさんに言いました。


「見てみたいな~冷たい雪」

 茶トラの子猫が2人にねだります。

「う~ん…夕方までに帰れば大丈夫かな~」

 チョビさんが考えてます。

「えっ?戻るのかい?」

 クロさんがチョビさんに聞きます。

「うん、ココの雪は冷たくないからね、ユキの家の雪を見せてあげようよ」

「ユキの雪って…」


 3匹は月の道をポロン♪キロン♪と走ってユキの家に戻って行きます。

「ほらっ、これが雪だよ」

 チョビさんが茶トラの子猫を庭に誘います。

「甘くないけどね」

 といつつ雪を、ひと舐めするクロさん。

 3匹は冷たい雪の上で飛んだり、跳ねたり遊んでいます。

「おや?友達かい」

 ユキが庭に顔を出しました。

 茶トラの子猫がクロさんの後ろに隠れます。


 ユキはニコリと笑って、猫用のミルクを温めて差し出しました。

 冷えた身体に、暖かいミルク。

 3匹はピチャピチャと舐めています。


「ほらっ、できたよ」

 3匹がミルクを飲み終わる頃、ユキは小さな、かまくらを作ってくれました。

 かまくらには、ダンボールの箱が入っており、寒くないように毛布が敷かれています。


 3匹は、かまくらから、やわやわと降る雪を眺めます。

「寒くなったら家に入るんだよ」

 ユキが優しく、3匹の頭を撫でます。

 ゴロゴロと喉が鳴る3匹、茶トラの子猫がユキの手にスリスリッとおでこを擦り付けます。


 夕方、3匹は『月光商店街』へ戻りました。

「今日はありがとう」

 茶トラの子猫のお母さんが迎えに来ました。

「またね、ユキの雪、冷たくて面白かったよ」


 手を振って自分の家に帰って行きました。

「僕らも帰ろうか」

 2人も、再び月の道から、ユキの家に帰ります。


「お客さんは帰ったのかい?」

「ニャー」

 2匹はユキの膝の上でゴロゴロします。

 かまくらも面白いけど…ユキの傍が一番あったかい。

 2匹は今日も、ユキのベッドで眠るのです。

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