第17話 迷子の子猫

『お~い…探偵さんお願いがあるんだけど』

 お月様から頼まれごとです。

『この子を家まで送ってほしいんだ』

 2人の前に、真っ白い子猫がひょっこり顔を覗かせます。

「僕…お母さんに内緒で遊びに来たんだけど…」


 そうなのです…月の道は1本道なのは行くときだけ…帰り道は沢山あるのです。

 なんにせ、何人も好き勝手に行き来してるのですから…。

 道を間違ったら、全然違うお家に繋がってしまうのです。


 みんな自分の目印を付けておくのですが…。


「任せてよ」

 チョビさんが自信ありげに胸を張ります。

「じゃあ行こうか」

 クロさんは、子猫の手を引いて歩き出します。


 とは言ったものの…道は沢山あるのです。

 キロン♪ポロン♪と道を辿りますが…あの家でもない…この家でもない…。

 子猫は疲れて、クロさんにおんぶしてもらってます。


 不安と眠さで子猫はシクシクと泣きだしてしまいました。

「困ったな~」

 チョビさんも道の途中で座り込んでしまいました。


 そのとき、「猫面Eyeキャッツラアイ参上!」

 テレッテェ~♪ 街は煌めくパッションフルーツ♪

「子猫の首輪頂戴いたします」

 オレンジの仮面の猫が素早く首輪を咥える。

 「悔しかったら取り返してみなさい」

 アッという間に怪盗猫面Eyeかいとうキャッツラアイは道の向こう側へ踊る様に消えていきます。

「あーっ!アイツら…また」

 クロさんが言うより早く、チョビさんは後を追います。

「待ってよ~」

 クロさんも子猫をおんぶしたまま走り出します。

 怪盗猫面Eyeかいとうキャッツラアイも早いのですが、チョビさんも負けてません。

 3人は、首輪をパスしながらチョビさんを、からかう様に逃げるのです。


 青い仮面の猫が受け取り損なった瞬間、チョビさんがシャッと首輪を取り返します。

「やった!」

「チョビさん凄い」

 クロさんが拍手します。


「今回は失敗したわ…またね、探偵さん」

 怪盗猫面Eyeかいとうキャッツラアイは跳ねるように月に消えて行きます。

「まったくアイツラ…」

 チョビさんは肩で息をしてます。


「あっ!アソコ僕の家だ!」

「えっ?」

 子猫はクロさんからピョンと飛び降りて、家に駆けて行きます。

 窓際では、お母さんと兄弟達がニャーニャーと鳴いてます。

「ありがとう探偵さん」

 子猫は走って家に帰ります。


『お~い…探偵さん、早く戻ってこないと道が消えちゃうぞ~』

 お月様が2人を急かします。

「もう~」

 と言いながら走って月まで戻る2人。

「落ちるかと思ったよ…」

 クロさんはクタクタです…実際、幾度か落ちかけたのです…。


 2人は3姉妹が営む、マタタビ茶が評判のお店に行きました。

「…というわけで大変だったんだよ…」

 クロさんが真ん中姉さんにボヤきます。

「僕がサッと首輪を取り返したのさ」

 チョビさんは上の姉さん猫に身振り手振りで話してます。

「じゃあ、怪盗のおかげで家が解ったんじゃない、情けないの」

 面白くなさそうに聞いてた妹猫がチョビさんに悪態をつきます。

「なんだよ!家だって見つけられたさ…もうちょっとで…たぶん」

 自信無さ気にトーンが落ちたチョビさんに、皆が笑い出します。


 助けられたのは…子猫だったのでしょうか…それとも。


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