第13話 心に効く薬

 事務所で2人が悩んでいます。

「ユキの元気がないね~」

 チョビさんがクロさんに話しかけます。

「うん…ユキはよく泣いてるからね…」

 ユキのことは心配なのです。


「そうだ!クスリ屋さんに行ってみようよ」

 チョビさんが手をポンッと合わせます。

「クスリ屋さん?」

「うん…飲むと治るんだよ」

「あ~ユキに飲まされたことがあったな~」

「食べすぎだったね…クロさん…」

「うん…」


 クスリ屋さんにチョビさんが聞きます。

「薬ください、涙が出なくなる薬をください」

「涙が出なくなる薬…花粉症かい?」

「違うよ!メソメソ泣かなくなる薬!」

「う~ん…そうだな~、そんな薬はココにはないね~」

「無いの?」

「無いね~、どうしてそんな薬を探してるんだい?」

「それはね~…」

 チョビさんとクロさんは一生懸命、身振り手振りでユキのことを話します。


「なるほどね~、そのユキって人が泣かなくてもいいようにすればいいんだね」

「そういうこと…かな」

「よし!薬は無いけど…物知り婆さんを紹介してやろう」

 クスリ屋さんは、月の街一番の物知り婆さんの家を教えてくれました。


 2人は、地図を見ながら、物知り婆さんの家に駆けていきます。

「物知り婆さん、教えておくれ」

 チョビさんが婆さん猫に尋ねます。

「おやおや…おチビちゃん…何を知りたいんだい?」

 2人はまた、身振り手振りでユキのことを話します。

「ふんふん…そうかい…そうだね~、『月の平野』に咲く花を持っておいで」

「月の平野?」

「そうだよ…行くには、高い山を登らなければいけないよ」

「へいちゃらだよ…僕は」

 チョビさんはそう言うと、ハッとクロさんを見ます。

「なんだよ…僕だって大丈夫だよ」


 2人は早速、山を登ります。

 高く険しい山を、一生懸命登ります。

 頂上に着くと、『月光商店街』の明かりが遠くに視えます。

「あそこが商店街だね~遠くに来たね~」

 チョビさんが大きく伸びをします。

「ほらっ、アレが『月の平野』だよ」

 下りは早い、早い、あっという間に平野に着きました。

 平野には、色んな色の花が咲いています。

「どの花だろう?」

 2人は迷ってしまいます。

「この花かな?…あの花かな?」

 どれを選んでいいのか解りません。

『ユキにあげたい花を選んでご覧』

 お月様が話かけます。

「ユキにあげたい花…」

 2人は、それぞれ花を選びます。

 摘んだ花が萎れないうちに早く戻らないと。

『送ってあげるよ』

 お月様は、2人を家まで星の馬車で運んでくれます。

「うわぁー早い」

 星の馬車は、流れ星になりユキの家まで2人を運びます。

 眠っているユキの枕元へ、そっと花を置きます。

 いつものように…ユキと、くっ付いて眠ります。


 翌朝…花の香りでユキは目を覚ましました。

「花?摘んできたのかな…チョビ・クロ…」

 ニャー…2匹がユキに擦り寄ります。

「ありがとう…」

 ユキは2匹の頭を撫でて…やっぱり泣くのです。

 嬉しくて…嬉しくて…涙が出てしまうのです。


(なんだよ…物知り婆さんの嘘つき…ユキは泣くじゃないか…)

 でも…なんだか幸せな気持ちです。

(まぁ…いいか…)

 嬉しくても…涙は流れるのです…。

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