第14話 聖夜の願い

 月光商店街に、甘い星雪が降ります。

 白く…白く…街をキロン♪ポロン♪と小さな音をたてて降り積もるのです。


 公園には大きなツリーの先端に、これまた大きな星を飾られてキラリと光るのです。


 冷たくない星雪なので、猫達も街を走り回ります。

 大人の猫はマタタビ茶で酔っ払い、アチラコチラでグルグル、ゴロゴロ喉を鳴らします。


 お菓子も、ケーキも食べ放題…はいつものこと…。

 チキンもマグロも食べ放題。


 2日間…人間に負けないくらいクリスマスを愉しみます。

 クロさんは、あちこちと動き回り、両手に別々の食べ物を持って忙しそうです。

「甘い…しょっぱい…甘い…しょっぱい…なんか幸せ~」

 それを繰り返して交互に食べているのです。


 チョビさんは、星雪のうえを飛んだり、跳ねたり、はしゃいでいます。

 いつの間にか、マタタビ茶が評判の喫茶店を営む3姉妹も一緒にクルクルと跳ねまわってます。


 クリスマスの夜を皆が愉しむのです。


 そして…クリスマスの最大のイベント、『星流し』が始まろうとしています。


『星流し』は、ツリーに飾られた大きな星を持ってきた猫の願いを込めて、地上へ流れ星として流すのです。

 流れ星が途中で、パーッと弾けると願いが叶うと云われてるのです。


 今年は、子猫とクロさん・チョビさんの願いを込めます。

 クロさんは

「お腹いっぱいのかつおぶしが食べたい」

 チョビさんは

「たくさんのおもちゃが欲しい」

 そして子猫は

「お母さんに逢えますように…」

 そうなのです…子猫のお母さんは、今、入院しているのです。

「だから…星が欲しかったんだね…」

 クロさんとチョビさんが子猫を励まします。

「大丈夫さ、きっと弾けて、お母さんに逢えるさ」


 星を流す直前…チョビさんがお願いを変えました。

「やっぱり…お願い変えるよ…ユキといっぱい遊べるように…にね」

「じゃあ…僕も、ユキと毎日一緒に、ご飯が食べれますように」


 皆で星を運んで、地上へ落とします…。

 うまく弾けるかな…ドキドキしながら皆が見守ります。


 …………

 ユキは、ペットショップで、たくさんの缶詰と、オモチャを買って帰る途中です。

「クリスマスだからね…今日は猫用ケーキも買っちゃった」

 キンッと寒い夜空を見上げると…流れ星がパシュッと四方へ弾けます。

「変わった…流れ星だな…」


 家に帰れば…にゃあにゃあにゃあ…と2匹が擦り寄ってきます。

 今夜はクリスマス…御馳走いっぱい…オモチャいっぱいのクリスマス。


 きっと、子猫のお母さんも元気に帰ってきているはずだよ…。


 綺麗に弾けた、流れ星が皆のお願いを叶えてくれた、聖夜の奇跡…。

 小さな奇跡が皆に降り注ぐ…そんな夜。

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