第10話 幸せをお裾分け
『お~い、今夜は月光商店街の町内清掃だよ、早くおいでよ』
お月様が、チョビさんとクロさんを呼びます。
2匹は、寝ぼけながらユキの布団を抜け出して光の道を辿ります。
キロン♪ポロン♪と音を立てて、カキン、ピカン、と光を放ち、2匹は月の街へ走って行きます。
「忘れてたね…チョビさん」
「僕…覚えていたよ…掃除嫌なだけ…」
いまいち、チョビさんは乗り気ではありません。
商店街では、皆が、ほうきを持ったり、下水をさらったりとガヤガヤと慌ただしい。
なんとなく、雰囲気に呑まれてクロさんもチョビさんもワタワタと動き回ります。
皆が、ハァフゥと息を切らした頃、お月様が皆に声を掛けます。
『ご苦労さま、綺麗にしてくれてありがとう。コレは私から皆にお礼だよ』
暗い空から白いフワフワしたものが舞い降りてきます。
「雪?」
チョビさんが首を傾げます。
クシュン!
白いフワフワがクロさんの鼻をくすぐる様に、フワリと舞い降りてきました。
「なんだいコレ…フワフワでワタワタだ…」
クロさんが手にとって見ています。
フワフワでワタワタは、沢山、舞い降りてきます。
「ケサラン・パサランよ…」
喫茶店の3姉妹が話しかけてきました。
「ケサンパサン?」
「ケサラン・パサランよ、持っていると幸せが訪れるのよ」
「ホント?」
チョビさんが、飛びついて捕まえようとしますが…ケサラン・パサランはフワリと手をすり抜けます。
「地面に落ちる前に取らなきゃダメなんだからね」
末っ子の猫がチョビさんを馬鹿にしたように言います。
むーっとしてチョビさんがジャンプ・ジャンプを繰り返します。
クロさんとチョビさん、息を切らしながらも2人で3個づつ捕まえました。
「なんだか…疲れたけど楽しかったね」
クロさんがチョビさんに帰り道で話しかけます。
「幸せになるんだって…楽しみ…」
チョビさんは嬉しそうです。
キロン・ポロンと帰り道。
ユキのベッドに潜り込む2人。
「そうだ…ユキにも1個あげる…」
チョビさんがユキの髪の毛にピトッとケサラン・パサランを付けました。
「僕も…もうユキが泣かないように」
クロさんも反対側の髪の毛にくっ付けました。
「おやすみ…ユキ」
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