第9話 ユキのこと

『ユキ』、2人と一緒に暮らしてる人間です。

 貧乏な会社員ですが、2人にはとても優しくしてくれます。

 2人は、『ユキ』が怒ってるところを見たことがないくらい物静かな人間。


 クロさんは『ユキ』にブラッシングしてもらうのが大好きです。

 気持ち良すぎて、時折、『ユキ』の手に噛みついたり…爪を立てたり…。

 それでも『ユキ』は怒りません。

 困ったな~といった顔をして、やさしく撫でてくれるのです。

「ゴメンね」

 クロさんは、いつも『ユキ』の血がでた手を舐めるのです。


 チョビさんは『ユキ』の膝のうえが大好きです。

 いつも眠るときは、『ユキ』の膝のうえで丸まって眠ります。

 優しく撫でてくれる『ユキ』の手は、とても気持ちいいのです。

 眠るとき、ついつい、『ユキ』の足に爪を立ててモミモミしてしまうのですが、『ユキ』は我慢してくれます。

 ずっと優しく撫でてくれる『ユキ』の手…時々、カミカミしてしまいます。


 今日は、寒い日、寒い夜。

『ユキ』のベッドに潜り込んで2人は眠ります。

 クロさんは『ユキ』に腕枕してアゴをチョンと乗せて眠ります。

 チョビさんは『ユキ』の足を枕にして眠ります。

『ユキ』はあったかいね…。


「今日も、ここで眠るのかい?クロ・チョビ」

 優しく、2匹を撫でる。

 ニャ…ニャニャニャン…クロが寝言を言います。

「痛…いたたたっ」

 チョビさんが足に爪を立てて、足をバタつかせます。


「まったく…なんの夢を見ているんだろう…」


 2匹は今日も夢の中…月の裏側で遊んでるのです。


 こんな日が続けばいいね…ずっと…ずっと…続けばいいね。

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