第2話 学園祭準備
明日が学園祭当日ということで、今日は学校中どこも準備で大忙し。
なんだかんだ、学園祭の前日で特に授業があるわけでもないので、全校生徒みんなが今日一日みっちり明日の準備をしている。
クラスの人に聞いたが、今回の演目に関して、台本や演出はもちろん、主役のシンデレラまで委員長のレイナさんがこなしているらしい。
彼女は、天然タイプではあるが、猪突猛進というなかなかファンタスティックな性格らしい。
そんな彼女が主役のシンデレラの相手である王子様を、誰もやりたがらないのはなんとなくだけどわかるような気がする。
そして、辺りをよく見ると、衣装やセットの大道具、そして細かい小道具までしっかり作り込まれている。
きっと王子様をやらない代わりにというか、クラス中が王子様以外なら何でもやるといった意気込みの表れかなのだろう。
だからこそ、ここまでやり過ぎなくらい完成度を高めたようだ。
そこまでしてレイナさんの相手をしたくなかったのだろうか・・・
教室内では、魔法使い役のシェインさんに各シーン毎にツッコミをいれられ、さらにネズミ役のタオくんとのバトルも少々あったものの、演目の最終確認が着々と進んでいく。
僕も成り行きとはいえ、王子様役だからちゃんと台本を読み込まなきゃと思い、教室の隅でレイナさんからもらった台本に目を通す。
見る限り、さっき彼女が言っていた事に間違いはないようだ。
台詞が殆どない・・・
というか、主役だからこんなもんなんだろうとは思うけど、シンデレラそんなにでしゃばっていいのか?ってくらいシンデレラが目立っている。
これを作った本人がここまでやるんだから、前日まで王子様役が決まっていない事も含めこの様々な準備の完成度・・・
今日転校してきた僕でも色々と納得した。
教室での打ち合わせが一通り済んだようで、セットを体育館に移動させ、王子様を入れた本格的なリハーサルが始まる。
今回の学園祭演し物
演目は『シンデレラ』
はじまりはじまり・・・・・
村はずれの小さな屋敷に住むシンデレラ。
裁縫はもちろん、食事の準備や掃除に洗濯。
毎日毎日、シンデレラは継母や姉たちにひどくこき使われていました。
しかし、シンデレラは強い心を持ち、毎日必死に頑張っていました。
そんなシンデレラの住む屋敷に、突然の朗報が届きました。
王子様のいるお城で、婚約者を探す舞踏会が行われるのです。
それを聞いたシンデレラは、自分にもチャンスがあると思い準備を進めるのでした。
しかし、継母や姉たちはそんな所にシンデレラを行かすわけがありません。
あの手この手でシンデレラに舞踏会へ行かせないようにしました。
舞踏会当日。
継母と姉たちの策略により、終わるはずのない仕事におわれシンデレラはお城に行くことが出来なくなってしまいました。
屋敷の横で、一人泣き崩れるシンデレラ。
そんな悲しみに暮れるシンデレラの前に、突然魔法使いが現れました。
魔法使いは毎日頑張っているシンデレラを見守っていましたが、今日はさすがに可哀想に思いシンデレラを舞踏会へ行けるよう魔法をかけました。
しかし、その魔法使いは見習いで魔法を間違ってしまい、なんと恐ろしいモンスターがシンデレラの前に現れました。
クルル・・・クルル・・・
シンデレラは近くにいたネズミをお供に加え、魔法使いと共にモンスターと戦いました。
モンスターを撃退したシンデレラ他2名ではありましたが、ひどく怒ったシンデレラは魔法使い(見習い)を叱りつけました。
魔法使い(見習い)はシンデレラにひどく怒られ、深く深くお詫びをし、もう一度シンデレラに魔法をかけました。
すると、シンデレラの汚れていた服はみるみる鮮やかなドレスに変わり、近くにいたネズミも高貴な使用人に変身したのです。
喜びに浮かれているシンデレラに魔法使いが一言。
「12時の鐘がなると恐ろしい事が起こるので、それまでには必ず帰るように」と伝えました。
魔法使い(見習い)が近くにあったカボチャを使い馬車を用意すると、シンデレラは急いで王子様のいるお城に向かいました。
お城に着くと、舞踏会は始まっており、色鮮やかに着飾った紳士淑女が美しくダンスをしてました。
そんな眩しい光景に、遅れて到着してしまったシンデレラは、場違いな雰囲気にのまれてしまいました。
結局、会場の隅でひっそりしていると、同じように遅れて入ってきた男性と話が合い、意気投合していくのでした。
その男性に誘われ、シンデレラは一緒にダンスをすることになりました。
ぎこちないダンスではありましたが、楽しそうにしている踊っている2人を、周りは温かく見守っていました。
楽しい時間はあっという間です。
12時の鐘が鳴り始めました。
シンデレラは急いでお城を後にしようとしますが、門の前で突如現れたモンスターの群れに邪魔されお城から出ることが出来ません。
シンデレラは一緒に踊った男性と、お供のネズミを従え、モンスターを撃破。
無事お城から出る事が出来ました。
しかし、戦闘で激しく暴れたシンデレラは、その激しい戦いのせいで、履いていたガラスの靴をお城に忘れてきてしまいました。
シンデレラは屋敷に戻りましたが、継母と姉たちの帰りを待たず寝室行き、眠りにつきました。
翌日、王子様には会えなかったが、楽しい思い出だったと昨日のことに浸っていると、王子様のお城から村中に通達が届きました。
その通達には、”このガラスの靴にぴったりの女性と王子を結婚させる”と書いてありました。
使用人達が村中の女性にガラスの靴を履かせまわりました。
そして、村で最後の屋敷であるシンデレラの屋敷にガラスの靴を持ってやってきました。
継母や姉たちの妨害をよそに、シンデレラはガラスを靴を履き、見事王子様と結ばれたのでした。
めでたしめでたし。
王子様を入れ、体育館での全体の通し稽古が終わった。
確かに、この台詞量と出番の少なさは、転校してきた僕でも出来る配役だと思う。
それに引き換え主役のシンデレラは、ほぼ出っぱなしでしゃべりっぱなし。
よくこれだけの台詞を考えて覚えたものだと関心する。
通し稽古が終わった後にレイナさんが、
「どう?!
激しい戦闘シーンもあって斬新でしょ?!」
といって僕に向かって、シンデレラの衣装のまま自身たっぷりな表情でふんぞり返っている。
そんな、自身に満ちあふた表情のシンデレラに向かっていくモンスターが1体。
背中のチャックを外し、そのモンスターの中身になっているクラスメートがシンデレラに向かって、
「ちょっとは手加減しなさいよ!
意外と痛いんだからね!」
「ファム。
このくらい本格的にやらないと、臨場感がないじゃない?
やっぱり今の時代、シンデレラだって戦うのよ!」
ファムと呼ばれたクラスメートが呆れた顔で舞台を降りていった。
そういえば、さっき教室でもふざけ合っていたというか、さっきは逆にレイナさんがもてあそばれていたような気がする。
この二人は、仲が良いのか悪いのか・・・よくわからないな。
なにはともあれ、転校初日が終わっていった。
明日は転校2日目。
というか学園祭当日。
いったいどうなっていくのか、想像がつかない。
でも、今までとはまったく違った日になった転校初日。
僕は、自分が少しワクワクしているように感じた。
でも、あのモンスター・・・
どっかで見たことあるような・・・
なんなんだろう?
僕は記憶の中を色々思い出そうとしてみたが、答えは出てこなかった。
きっと何かの記憶と重なってデジャヴでも見たのだろう。
さて、今日はしっかり寝て、明日に備えるとしようかな。
僕は、自分のベットで眠りについた。
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