第8話 虐待のライン(その1)

何をすれば“虐待”なのか。


これについては、線引きが非常に難しく、今も学校で「指導として頭を軽く叩いた」が体罰だったり、セクハラだったり、と判別が困難です。


でも「判別が困難だから、存在しないのか」と言えばそんなことはなく、そこには、体罰か、セクハラか、虐待か、何かしらの事象があったことは確かです。


〇躾と虐待のライン


どこからが躾で、どこからが虐待なのか。親が「これは躾です」と言えば躾であるし、子が「虐待を受けた」と言えば虐待になる。


おそらく、どちらかであることには間違いないのですが、家庭内のことなので、客観的に判断できる人がいない、というのも大きな問題です。


また、本当に躾のつもりで叩いたら、骨折してしまった…という場合もあるし、こどもが完全に親の支配下にいれば、「虐待という認識そのもの」がないので、子は虐待を虐待として認識しない場合もあります。


ということで、躾と虐待のラインは「存在します」が、その線を引ける人がいない、というのが現実ではないのか、と思います。


〇モラルにお任せ!


モラルだとか常識だとか、学校の授業では教えてもらえないことが、社会に出ると一番大事なわけですが、たとえば「空き缶をポイ捨てしない」みたいな常識について、皆さんどう思っているんでしょうか。


きっと「ポイ捨てしちゃダメ」ってことは、表面上知ってる人が大半です。


ところが、

「いや、でも人が見てなきゃいいよね」

「ゴミ箱が見当たらない場合は置いて行ってもいい」

「誰かが拾って捨ててくれるからいいんだよ」

「このへんは汚いから、ひとつ捨ててもバレないでしょ」

という人もいますし、


「いやいや、いかなる場合も捨てちゃダメ」

「ポイ捨てするような人の顔が見てみたい」

など、厳しく考えている人もいます。


似たようなことで言えば、交通ルールなんかでも、人によって認識が違うので、赤信号だけど車来てないから渡っちゃえ、っつって渡ったら轢かれた。または轢いちゃった、みたいなこともあります。


そこらへんの認識って、正直、「ルールはあるけど、あとは個人のモラルにお任せしますよ」ってことなので、いくら「ダメだ」っつってんのにやる人がいるのは、もう自己責任と言わざるを得ないです。


〇日本の宗教観が独特だから


以前、ルーマニア人と仕事をしていたとき、彼女たちは熱心なクリスチャンで、事あるごとに「神様が見てるよ」と言っていたのを思い出します。


彼女たちの宗教では、神様はひとりで、どこにいても、いつでも見ているから、絶対に悪いことはしてはいけないし、いつでも神様が見守ってくれているので安心できる、というものでした。


ところが、日本で「宗教」と言えば何か悪い集団のようなイメージですし、八百万の神様がいるので、いたるところに神様がいて、人は死んだら神になる、という場合もあります。(「二柱神社」などは、ひとつの神社に神様が2人いますもんね)


仏教・神道はごちゃまぜな部分もあって、さらに「オカルト的なもの」には否定的な人が多いので「神様?幽霊?ばかじゃないの?」という現実主義者も多いです。


言ってみればそういう「現実主義」が、今の日本の宗教なのかな、とも思います。


現実主義では、何をやっても自業自得で、自己責任。誰も助けてはくれない、もし助けてもらったら過剰に「感謝しろ」。弱者が強者に搾取されるシステム。個人主義なので他人には無関心。自分だけよければそれでいい。他人は敵。


そこに存在する“モラル”が、果たして“モラル”としての役割をこなしているか…と言えば、疑問です。


社会のルールは、集団が集団として生きるために作ったものであるはずなのに、社会のルールの裏をかいて“自分だけが生き残るために利用する”、というのが当たり前になりつつある。


これって、

自分ひとりが生き残るためには、100人を犠牲にしてもいい。

自分ひとりが生き残るために、自分の子を犠牲にしてもいい。

あとのことは知らない…ってことではないでしょうか。


「子を育てる」ということは、“親自身の満足”を求める作業ではないのは周知の事実ですが、“虐待のライン”の上でウロウロしている親たちは、どこか「自分のために子を利用しようとしている」節が見られるような気がします。


つづく


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毒こども!~毒親からの脱出~ @midorimaru033

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