第13話「つかの間の平穏」

日が昇り、窓から暖かな日差しが差し込んできて、私の眼を覚まさせる。

うぅ、とまぶしさに目を開けると、いつもの天井が見えた。

目を覚ました私は、ふぁとあくびをして、洗面所へと向かう。

これがもう日課になりつつある。


ロイス「あぁ、おはよう」

ひかり「おはよう」


洗面所につくと、先にロイスが使っていた。

ロイスは窓から桶の中の水を捨てると、私に洗面所をあける。


ロイス「使え。俺はもういい」


ロイスの濡れた顔は朝の光できらきらとしていた。

思わず、ぼーっとしていると、ロイスが不思議な顔をしていた。


ロイス「どうした? 使わないのか?」

ひかり「ううん。なんでもない、使うよ」


朝食を取るためなのか、ロイスは食堂へと歩いて行った。

私もざばざばと顔を洗って、頭をしゃきっとさせる。


ひかり「私もご飯食べよう」


もしかしたら、まだロイスが食べているかも。

一緒に食べれるかもしれない。


//食堂


しかし、食堂にはロイスの姿は無かった。

残念、もう食べ終わってしまったみたいだ。

がっかりしていると、背後から声をかけられた。


アスナ「あれ? ひかり、どうかした?」

ひかり「ううん。なんでもない」

アスナ「あ、そうそう、今日は比較的安全だから、船の中を見て回るといいよ。今日はクルーもいっぱいいるから、困ったら誰かに道を聞けば、すぐに分かるよ」

ひかり「うん。ありがとう」

アスナ「今日も本当は一緒にいてあげたいんだけど、船長の職務があってね。もう、朝食すらここでは食べられないくらいなのよ」


アスナはそう言うと自分の朝食を持って、食堂を出て行った。


//暗転


私は朝食を食べて、ゆったりとした食後のお茶を飲んだ。

そう言えば、今日は安全な日だと言っていたっけ……。

いつも、みんなが何をしてるのか、知りたいし、部屋を尋ねていってみようかな。


アレックスの部屋へと尋ねてみることにした。

今はあんまり嫌われてないみたいだし。

それに、普段なにしているのか、気になる。

私はアレックスの部屋に着くと、コンコンとノックをしてみた。

でも、中からは返答がない。

寝てるのかな? こそーっと、ドアを開けて中を見てみると、机につっぷしてアレックスが眠っていた。一体、何を見ていたんだろう?

こっそりと、机においてあった本を見てみるが全く分からない。

それより、あんな格好で寝ていたら風邪ひいちゃう。

私はこっそりとアレックスを起こさないように背負うと、布団まで運んだ。


ひかり「よし、毛布でもかけてあげよう」


毛布をひっぱりあげた途端、アレックスの腕が私の腕を引いた。

無意識なのか分からないけど、アレックスは私に抱きついて、眠りこけた。

起こすのも可愛そうだし、そのまま、抱きついたままにしてあげることにした。

すやすやと子供のように眠る様子はまるで天使みたいだ。

いつも憎まれ口を叩く口からは可愛い寝言がついて出る。


アレックス「……ひかり」


お、私の夢なのかな? 私が夢の中に出ているのかな?

くすくすと笑っていると、アレックスが再び口を開く。


アレックス「馬鹿……」


って、夢の中でまで私って馬鹿にされてるってこと?

天使の寝顔から一変、悪意の塊のように見えてくる。


SE:コンコン


突然、ドアを叩く音がした。慌ててアレックスの抱擁から逃れようとするが……。


ロイス「アレックス、入るぞ」


まずい……と思った瞬間、ロイスは無常にもドアを開けた。

そして、私とアレックスが一緒に布団で眠っているのを見ると、何事も無かったように、そのまま、無言でドアを閉めた。

私は慌てて、アレックスの腕をどけるとロイスの後を追った。


ひかり「ロイス! ロイス!!」

ロイス「いや、俺は何も見ていないから、案じるな」

ひかり「絶対、見た! 何か、変な誤解してる!」

ロイス「恋愛は自由だ。俺は従者の恋愛にも神の恋愛にも制約をつけるつもりはない」

ひかり「だから、ちがうんだってば~!!」

ロイス「大丈夫だ。俺は誰にも話す気はない」

ひかり「だから、誤解なんだってばー!!」

ロイス「これからは、ノックをしても返答がないときは気をつける」

ひかり「いやいや、そんな変な気をつかわないでよ!」

ロイス「で、どこからそんな関係になった? 出来れば聞いておきたいのだが」

ひかり「ほら~!! 何か変な誤解してる~!!」


小一時間程、私は身の潔白をロイスに説明したのだが、彼は結局最後まで信じてくれなかったのだった。

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