第3話「ランプの持ち主を探せ」
とにかく衰弱しきったアラジンを僕たちは治療すべく、荷物を広げた。
レイナが水筒をアラジンに手渡す。
「大丈夫?飲める?」
アラジンは水筒を奪い取るように受け取ると、一気にごくごくと飲んでしまった。
そして、僕が差し出したサンドイッチを飲み込むように食べてしまった。
「ぷはー、生き返ったっす!ホント、命の恩人っす!」
まさか、本人の前で、以前の『主役』アラジンに僕たちが命を助けてもらったことに比べれば安いものだとは言えず、皆、苦笑いした。
「時にアラジンさん、これからどうしますか?無一文なのですよね?」
結構、現実的な事をシェインが言うと、アラジンは「たはは・・・」と力なく笑った。
「海賊さえ見つければ、とっちめて商品を取り返せるんすけどねー」
ちらちらと僕たちを見て、暗に手伝って欲しいと言わんばかりだ。
ふと、違和感を覚えた僕はアラジンに聞いた。
「海賊って有名な海賊なの?」
アラジンは声を潜めるように言った。
「有名も有名!ここいらじゃ、誰も名前を知らない人はいないっす」
呆れ顔でシェインが呟く。
「そんな海賊船に乗るなんて、無謀ですね」
慌てて、アラジンは弁解する。
「一般船を装ってたんす・・・。まあ、確かに料金が安かったから使ったってのもあるんすけど。まさか、あの有名なホーキンズ海賊団だとは思わなくて」
「「ホーキンズ海賊団!?」」
僕たちは驚きを隠しきれなかった。なにせ、ジム・ホーキンズがカオス化して、ヴィランを手下にしているのがホーキンズ海賊団なのだから。
「アラジン、よく生き残れたね!」
「運がいいのだけが取り柄っすから!」
胸を張って言える取り柄なのだろうか・・・。
「新入りさん、とにかく、この暑さでは姉御が溶けます」
「そうだね。街へ移動しようか。ホーキンズ海賊団についても何かわかるかもしれないしね」
こうして、僕たちはアラジンを連れて、街を目指した。
はずだったのだが・・・。
【戦闘:ヴィラン】
「港になってる・・・」
そう。あの時、宮殿があった場所は港になり、たくさんの船が停泊していた。
この中からジム・ホーキンズを探し出すなんて無理だ・・・。
僕は一気に絶望に突き落とされた。
あぜんとしている僕らを尻目に、アラジンは何の不思議もなく港町へと入っていく。
「あれ~?どうしたんすか?」
そう。彼は全く持って疑っていない。
《ここが最初から港であったことに》
せっかく調律した『想区』がまたしても混沌と化していることに、レイナは落ち込みを隠しきれない。
「うそ・・・でしょ・・・」
ガクリとしたレイナを引きずるようにして、僕たちはとにかく、アラジンの荷物を探すことにした。万が一にでも、その荷物の中に『魔法のランプ』でもあった日には目も当てられない。
港町で聞き込みを開始した僕たちだったが、『ホーキンズ海賊団』の名前を聞くと、皆、口を固く閉ざしてしまう。
どうにか、盗品を買っているという行商人の元へとたどり着いた時には、もう夕刻を回ったころだった。
ドスのきいた声でタオが太った行商人に詰め寄る。
「あんたか?盗品を買っては転売してるっていうのは?」
行商人はまるでなんの事かわからないと言いたげに、眉根を寄せた。
「そ、そんなの知らない」
ガツン。
面倒になったのか、タオが手近な木製の箱を蹴り飛ばした。
「正直に話してくれりゃ、なんもしねーよ」
タオの凄みに観念したのか、行商人は両手をあげて、降参のポーズをとった。
「話す、全部はなす!」
「あんた、最近、ホーキンズ海賊団から大量の盗品を買い取ったな?」
「ああ」
渋々といった感じで太った商人の男は答えた。
「その中に『ランプ』は無かったのか?」
そう。問題はあの『願いを叶えてくれるランプ』がどこにあるのかだ。
悪用されれば、この『想区』を壊し、『また』僕らはアラジンが死ぬところを見る羽目になる。
太った商人は首を左右に振って、答えた。
「ランプなんて物は無かった!嘘じゃない!本当だ!」
とても嘘を言っているようには見えなかった。
しかし、『ランプ』がないとすると・・・。
カオス・ジムが持っている可能性が高まる。
僕たちは頭を抱えることになった。
まさしく、最悪の事態だ。
もし、カオス・ジムがあの『ランプ』を使ったらめちゃくちゃになってしまう。
暗がりの中、エクス達の会話を盗み聴きしていた人物がいた。
暗がりで全く顔すらも見えない人物は首をかしげた。
「この薄汚れた『ランプ』に一体、どんな価値があるってんだ?」
その人物は懐からランプをだし、矯めつ眇めつ見てからため息をついた。
「ただの薄汚れた『ランプ』じゃねーか・・・」
「まあ、なんにせよ、おっかない連中がこれを狙ってるのは確かだな・・・」
「ジムにも狙われるは、変な連中は『ランプ』を狙ってるは、俺ってば狙われすぎだろう・・・」
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