第七章 「懺悔」

この夏のあまりの暑さに参ってしまったのか、彼女の容態が急に悪化した。

もう自宅療養は難しいとの担当医の判断により、彼女のご両親とも相談して総合病院に入院させることになった。

病院で過ごすのを嫌がる彼女をなんとかなだめすかして説得するのは一苦労だったけれど、ボクが毎日見舞いに行くからと約束して、ようやく受け入れてもらえた。

その日を境にして、ボクは残業を大目にみてもらう代わりに少し早めに出勤する様になった。

彼女の看病を理由に仕事が遅くなっただなんて人に言われたくはなかったから。

そして、自分の所為でボクの仕事が捗らないのではないかだなんて、彼女に余計な心配を掛けさせたくなかった。

事実、彼女はしょっ中そう尋ねてきた。


彼女はボクの生きる支えであり、今のボクの総てだった。

帰り際に病院に寄ることも、ちっとも苦にならない。

むしろ、毎日彼女を見舞うことがボクの大切な日課となった。

けれども、その残された時間が徐々に少なくなってきているのを感じている。

日増しに彼女の身体が弱ってきているのが、目に見えて判る様になってきた。

弱々しくもボクへの笑顔を絶やさない様に心掛けてくれる彼女の心積もりが、傍に居るだけでどうする事も出来ない無力なボクの胸を締めつける。


ああ神様、どうかなによりも大切な彼女の命を、そして、ボクたちふたりの幸福な時間をこれ以上奪わないでください。

もしも、この時の終わりが有るというのなら、今この瞬間に凍結して欲しい。

ボクはそう祈らずにはいられなかった。




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