第三章 「息吹き」

翌日、再び会った医師の顔は、昨日よりもずっと険しかった。

その表情を見ただけで、僕は先生の話を聞くまでもなく、芳しくないであろう結果を理解した。


「やはり、と言っては失礼ですが、赤血球と血小板の数値が極端に低くなっています。」


「・・・と、言いますと?」


「急性骨髄性白血病です。」


「嘘でしょう?」


「残念ですが。」


「まさか・・・命に関わるんですか?」


「安静にしていれば、今は良く効く抗生物質も放射線治療もあります。ただ、若い方の場合は、病の進行もより早いのです。」


「死ぬ可能性もあるってことですか?」


「最悪の場合は・・・」


「その場合、余命は?」


「持って半年から1年でしょう。勿論、治療の効果が出れば、もっと生きられます。状態が上向けば、完治することだって有り得ます。」


「先生、絶対治して下さい!お願いします!俺もなんだってしますから。」


「おっしゃる通り、この病気の治療はご本人の努力だけでなく、支えていただく周りの方のお力添えも大変重要となります。」


「彼女には家族がいません。僕がしっかりと支えてみせますから、どうかよろしくお願いします!」


「ええ、一緒に病気に立ち向かいましょう!」


「はい。」

空元気だったが、先生に約束した。




その日の夜、不安そうな彼女には病気のことだけ打ち明け、詳しい症状に関してはまだ解らないと伝えた。

彼女が死ぬ?まさか、愛する彼女のいない生活なんて、そんなことは考えられない。

絶対に良くなる。絶対に完治する。それだけを見据えて二人三脚できっと病気に打ち勝ってやる!

僕は心に強くそう誓った。




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