第14話 春花びら
春来たり。
満開の梅が先駆けして、物悲しい錆色の風景がだんだんと赤や黄色やピンクに染まっていけば、嵐のような風が幾重にも吹いて、今年も春がやってくる。
私は菜の花が好きだ。可愛らしい小さな黄色の花を高い背丈の上にちょんと乗せて、密集して咲くあの花々を見ているととても心が和む。そして、ああ、今年も麗らかな春がまたやってきたのだなと思うものである。
そういえば幼少の頃、九州、福岡の八女の山奥の爺の家の近くで菜の花の密集した所に子犬がぽつんと捨てられていた。神社の社の下に捨てられていて、そこには菜の花が咲き薫っていた。私は姉や従姉妹と共にその犬を菜の花ナナと名付け、しばらく餌やりをしたりして可愛がっていたものだ。しばらくして、その子犬は貰われていったが、近所だったのでまたよく遊びに行った。
春には花が咲いて、その薫りに人は様々な風景を思い出させられるものだと思う。その風景のどれもが人生の幸せであることを祈り、今年も散りゆく桜の花びらを見つめ、足を進める。
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