第12話 寒い冬だから

私が療養中ということで厳しい寒波がわざわざお見舞いに来てくれたようだ。こう言うと、少し自意識過剰にも取れるが、それは許して欲しい。

しかし、まあ、なんだってこんなに寒いのであろうか。最近知ったのだが、野良猫ってよく凍死するらしい。ほかの動物達も同じだろう。寒さに喘いで凍えゆく生命達に憐れみを覚える。

人生もうち続く苦難の中に立てば、それは冬のようで、ああ、寒い寒いというように、辛い悲しいと言ってしまうものである。そうやってしかし、冬は乗り越えてゆくしかないだろう。どの生き物だって同じではないか。花歌を歌う気分にもならない。



どこからか。厳しい寒さを纏った風が吹いてきて、身の回りにあった温かさを吹き飛ばしてしまうものだ。残された私は、孤独と寒さを募らせて、来ているコートをギュッと締める。それ以外には方法がなかった。火の当たるところには行くことなんてできない。そうして、一生続いていくような感覚に苛まれながらも、ただ、歩いていくしかないのである。

一歩、また一歩、歩みが重い。しかし、一歩また一歩。

そうしていくうちに、気がついたら春が来ている。花の開く音が聞こえる。あんなに静かだった、虫たちも、小鳥達も賑やかにさえずり始める。

そうなるだろうか、と私は非常に懐疑的な気持ちになるのだが、ほら、耳を澄ませれば聴こえてくる。

もっと、もっと、耳を澄ませて。

あの柔らかな春の足音。聴こえてくる。

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