第6話 時雨

雨が好きだ。

ザー、ザー、と天高くそびえるくらいくらい雲から大量の水の粒が地表を目指して降ってくる。水の粒たちからしてみれば、進んでいくのかもしれない。

1粒1粒は地表に落ちても、大して音を立てないだろう。

試しに一粒落としてみる。

微かな音が聞こえるだけだ。

時雨は1粒1粒の集まりだが、大きく大気を揺らすように地表に降り注ぐ。

まるで自分達がここにいるということを皆で知らせているように地表を叩く、叩く、ひた叩く。


それは悲哀か、それとも怒りか、

はたまた、歓喜か、慈しみか、


私は窓辺に座っている。

じっと、時雨の叩く先を見つめる。

じっと、時雨の叩く音を聞く。


そして、わが身のこの孤独をそっと地面に投げ出して、

時雨に我が身を差し出しながら、

心の臓を温める。

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