第3話 秋雨な日々に
今日も雨か…とそう思う。
秋雨前線……梅雨前線と並ぶ雨ばかりの日は過ぎ去って行く。雨が降ると地面が濡れるよ。いつの間にか、靴にも泥がついている。いつも汚れた靴を履いていると気持が悪くて、私は手のひらで靴の泥を払う。珍しく。この靴だけはもう汚すわけにもいかない。
悲しみの雨ーーーか。
天空が悲しみを放出させるように激しい雨が降った。
私も悲しいよ。誰かが泣いている、声が聞こえるよ。
雨は悲しさの象徴か。しかし、空には雲が散らばっているのに、ふと、かすかな陽の光が差し込んで、素敵なアーチを描いた。誰かの悲しみに寄り添って、天空は喜ばせようとするらしい。それで悲しみの中にもまた、喜びがあるのかと思った。
誰かが言った。「インドでは雨は大変縁起がよいものだそうだよ」
一年中暑くて暑くて仕方がなくて、雨が全くふらない日々がつづくそうだ。
その中での雨は最高なんだそうだ。聞いた話だ。でも、その人たちの心を感じる時、雨があんまり恨めしくなくなった。
誰かが言った。「傘を指すのは日本人だけだ」
喜びの雨ーーーか。そうか、そうかもしれない。人々は傘もささずに、時には自ら濡れ歩く。そんな人たちには、悪い天気なんてどこにもないのだろう。
ああ、人の悲しみか、喜びか。
どちらも分かるような、そんな人はどうだろうか。そんな人になりたいものだ。
そう思いながら、ポツポツと、涙と喜びを噛み締めながら、今日は傘を閉じて歩いた。
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