9 誰かの夢
他人が見た夢の話ほど退屈なものはない。
初めにそう言ったのは誰だったのだろうか。
もしそうなら“私”はとても退屈な存在だった。
なにせ“私”は、
他人の夢を見て、
他人の夢の話を聞き、
他人の夢を語らなければならないのだから。
退屈に退屈が自乗され続ける無限大の退屈。
宇宙規模の退屈。
宇宙を満たす謎の物質Xはダークマターでもなければエーテルでもない。
退屈という名前の誰かの夢だ。
それでも“私”は退屈を感じなかった。
幸運なことに、“私”は自分が誰であるのかを知らない。
蝶が人になる夢を見ているのか、
それとも人が蝶になる夢を見ているのか、
誰もその答えを知らないように、
“私”は自分が誰であるのかを知らない。
だから“私”は夢を見る。
誰かの夢を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。