ボールみっけた。

戸松は神社の清掃で派遣された。


日給8000円のバイト。傍らには太田と名乗る中年の中肉おじさんが汗を垂らしている。


「じゃあよお。お前さんはそっちから始めてくれ。まあ適当になりゃあいいわ、こんな僻地めったに人なんぞこんへんだろうしな」


「わかりました」


手にはごみをごみを回収する袋、軍手を装備している戸松はこの神社の大きさに些細な、気だるさを感じたが時間があるだけに、マイペースでやっていこうとなった。


にしても、暑かった。9月の序盤とはいえ、猛暑日といっていいギンギラ太陽はエネルギーを送り込んでくる。


小一時間立った。


リュックで入った、スポーツドリンクをあおる。戸松は生物的な欲求を満たして些末な快感を得、その勢いでスマートフォンを付け、○○モンDOを起動する。


「え、モンスポになってるじゃんここ、えええ」


戸松は信じられない面持ちだ。このゲームを始めて以来、モンスポなんて一回もお目にかかったことがなかったのだ、驚嘆の面持ちで戸松は半ば、不動となり、拳を握った。


「おーい。ちゃんと仕事やれよ。何触っとるんじゃ」


タイミング悪くおじさんが常温に放置された、凍ったペットボトルのように顔面には水滴がぽつぽつと付いていて、気持ちが悪かった。


「いえ、たまたまですよ。本部からの連絡があったかも知れないですし。一応画面を覗いていたら、その刹那、太田さんが現われたんです。ほら見てください、こんなにゴミを収集しましたよ」


ごみ袋には、木の葉やペットボトルなどのごみが満タンになっている。


「おう。よくやっとるなあ。あまりにごみ袋に入っている量が少ないと本部でサボっていたのではないかと怪しまれるからな」


「そうですね。じゃああっちのほうやりますね」


戸松はそそくさとその場からある意味での忌避をしようとしたのだが


「この現場は狭い、俺の指導もあればお前のキャリアアップにもつながるだろう、よしここからは同伴行動だ」


何を言っているんだ、せっかく一人行動のできるいい派遣に巡り合えたと思った刹那、中年の空気の読めない底辺に、戸松は不快感を滲み出した。


「はい・・・」


しかし、断る度量は戸松には持ち合わせていなかった。彼は仮に断った後のことを鑑み、険悪な空気になるほうがこの現場での居心地が悪くなると踏んだのであった。


単調な作業は長時間になると苦痛になるようで戸松は、ちょくちょくトイレに行ってわ、水をゆっくりと口の中に含んで嚥下した。


太田も、ときとして【わかば】を吹かしてはトイレに行った。


「いやぁ、30代のころ、尿管結石やってよう、ありゃ、この世で生きている感じじゃないぜ」


太田は陰部を抑える動作をした。大変でしたねと戸松は苦笑いした。


 基本的に人とのコミュニケーションを苦手とする、戸松はいままでの人生の大半をニートとして過ごしてきたが、27歳になった、今年から派遣に登録しては、市内を転々としてきた。不快なことがあれば仕事を辞め、実家にてネトゲに昼夜問わず、没頭する、働く意欲が定期的に沸くようで、定期的には、新たな派遣会社に登録しては、仕事をし、辞めるの繰り返しだった。


午後7時暗闇が世界を覆う。実際的には神社の敷地内の清掃を終わらせた、戸松と太田はやめと、言った。


「本部からの迎えが来るまでは好きしとれ」


「わかりました」


懐中電灯を持ち、敷地内をスマホを持ちながら、うろつく。


モンスポになっている、神社は、蛆虫がごみにたかる勢いでモンスターが出没するので、根こそぎといっていいレベルで戸松は大量にモンスターを捕獲した。


モンスターは戸松によって選別されては取捨選択される。モンスターにはステータスがあり、人間でいうところの有能無能が存在し、無能とされるモンスターは捨てるコマンドにて、廃棄される。

同様にありきたりな、ノーマルモンスターも同じ結末をたどらされた。

 戸松からしたら最強の布陣を作っていくための高等手段であり、至極まっとうなのだ。


境内の裏手に回り、広大だユグドラシルかと!戸松は機嫌よくささやいた。

その大木はクスノキだ。夜懐中電灯で照らされた、巨樹は不気味なお化けのようだった。


不意に目の前に球体のようなものが転がってきて戸松は懐中電灯で照らす、紛れもなく、モンスター捕獲用のボールである。

拾い上げて、2,3回片手でお手玉してみる。


不意に回りが明るさを取り戻した、同時に地形も変化する。


戸松の目の前にはカンガルードラゴンが出没する。


「え?どゆこと」


困惑した様子の戸松は周りを見渡す、目の前にガルドラがいるのだ。

とりあえず後方に駆け出した戸松だが、まったく距離間隔を離さずガルドラを追尾してくる。100mほど走り、観念し、ボールを握る。そして、逆にガルドラに向かって、サイドスローでストレートを投げ込んだ。


ガルドラは木々をなぎ倒しつつ、勢いよく、回避すると、中日小林正の投球モーションから投げられるスライダーのように時速は200キロの巨体が戸松に物理的ダメージを与えた。


戸松は形をなくし、スクラップされた車のように薄くなり、周りは血だまりとなっている。

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