ボールでモンスターを捕まえるゲームが流行った世界で実際的にモンスターが限定条件下でリアル出没しました

@maguron

EPILOGUE

ボールがある ドラゴンもいる

終電に乗り損ねたワイは歩いて、家まで帰ることにしたのだが理由はタクシー代も宿代もないからだ。

都会つうものは何でもかんでも金金だ。

ニートである社会的地位でママからくすねた微々たる小銭で今話題の○○モンDOをしにきた。ARを駆使できるゲーム性のとりこになっちまった。

残り520円を片手に置き、歩いて帰るには4時間は掛かる軽く絶望的な気分になる気分に蹌踉とした足取りになってしまう。


道は国道の側道にある歩道、高速道路が上に連なり、明かりはそれのみである、新月であり月明かりはなく、夏空は不気味な暗闇を放っていた。


せっかくやし、このゲームの卵というものを孵化しながら、歩いているんだが、電池も食うし、そろそろ、終わりにしようと僕はアプリを閉じ、マップを開く。


1キロ先のこの畑道から行けば近道そうだな。ワイの家の方向はこっちだし、右折して農道でショーカットや。


リュックに入った、ペットボトルのコーラを一飲みしてはしまい、再スタート、農道は暗闇でどんどん光が失われていく。高速道路の煌々ときらめく明かりは頼りないものになっていった。


ワイはリュックからモバイルバッテリーと急速充電用の充電コードを出し、バッテリーをズボンのぽっけに投げ入れ、コードをスマホ充電口に挿入した。


スマホのライト機能を使い、現代の松明がここ、灯された。


バイブレーション。


「もしもしママ」


『ちょっと、家の鍵も早く締めたいのよ、今どこにいるの』


「それがさあ、終電乗りそこねちゃって、歩いて帰るから朝方になるかも」


『そんな遠いとこまで行ってるの、本当にどうなってもしらないからね』


プツリと通話は途切れた。 


ニートになって以来、てっきり愛想が悪くなり、仕事の話しかしてこないママにワイは呆れていた。高卒後5年家に引きこもってたワイが今やモンスターのトレーナーとして、各地を跋扈しているんだぜ、それに対してママはくだらないなどいうが、ワイは壁にドンと穴をあけて黙らせた。


道は墓が連なる位置に来た。真夜中の墓は不気味なもんだね。


しかし、腹も減ってきやがった。リュックにはタオルとコーラ折り畳み傘くらいしかない。


周辺は墓、田んぼ、神社だ。


公園でオールナイトしやあ、よかったかな。なんて思わざるを得ない。


暗澹たる面持ちの中、なんとなく、ゲームを起動すると、神社の中がモンスポになっていた。(モンスポとはモンスタースポットといい、レアアイテムやレアモンスターが存在する。モンスポはランダムに場所を変えるため、調べてもわからず僥倖に頼るのみとファンの中ではされていた)


ワイは興奮を抑えきれずに、夜の古びた神社に入り、まだ獲得したことのない、希少モンスターを取りあさった。空腹なども忘れて。


釣果に満足する釣り人のように、心が豊かになったワイだったが


「しまった、2時間もたってしまった、夢中になると時間が過ぎるのも早いもんだな、てかまずいな」


気が付くとモバイルバッテリーの充電が底をつき、スマホの充電も19%しか残っていなかった、牛水時を過ぎ、真っ暗な中神社の外に出た。


「暗すぎる・・」


灌漑用水が道を添うように流れているため光がないと、落水の可能性がある。これは危険だ、やむおえん、神社で休もう。


神社の社につながる階段に腰を下ろしたワイは疲れもあったので(前日12時起き)小休止、目を瞑った。


時間にして、刹那と表現すべき時分。突如手にボールが握られている。


「うん?ボール。妙に精巧にできた、ボールだ」


次の瞬間、周りが草原に包まれて、


「これはカンガルードラゴンだ」


目の前にはこの○○モンDOの中で群を抜いて最強とされる、カンガルードラゴンが威勢のある姿でいる。


神社にいたワイはどこに行ったのかなんてことは知らねえが、つまりこのボールでガルドラを捕まえろってことだろ。よし。


プロ野球の大谷さながらゆったりとした投球モーションで悠然とボールをガルドラに投げ込んだ。


ピョーンとガルドラは跳躍した(回避した)。 上空に消失した。 空から小さくなった点に気づいた時にはワイの後頭部にホーミングしていることは明らかだった。


<完>

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