好きの程度
白咲葵
第1話 協力
初めて話を聞いたのはいつだっけ。
梓のあの顔は忘れたことがない。
ずっと長い間、人を愛している人の顔。
私は恋愛体質だから自分の恋愛話も進んでするし、人の話も聞きたい。朝いつも一緒に学校へ行くからある日聞いてみた。
「梓ちゃんは好きな人いるの?」
そういえばまだ親しくなかった時の話だ。私がそう聞くと顔を少し赤らめて
「いるっちゃあいるよ」と答えた。
梓は短い髪を揺らしていた。
まだ髪の短い頃だった。
好きな人といえば同じ学校、同じクラスでお互いを知り合うもの(私はいつもそう)だと思っていた。でも梓は塾で一緒の彼に想いを寄せている。梓が『たっくん』と呼ぶ彼は公立中学の野球少年でバカで面白いやつらしい。塾での出来事を1年前とはいえ鮮明に覚えている梓。私はにやにやしながら梓の話を聞くのがすごく好きだった。私たちは中高一貫校に通っているので私はもちろん、梓は彼に会うことがない。そんな彼の話を聞けば聞くほど梓は本気でたっくんのことが好きなんだなと実感した。その思いは梓の恋愛を成就させたいという気持ちに変わった。
いつも私の好きな人のくだらない話も興味津々と聞いてくれる梓のために何かしてあげたいと考えた。
その時考え付いたのがLINEで連絡先をたどること。つまり私の友達の中にたっくんと同じ中学の人を探して、その同じ中学の人からもらう作戦だ。
最初はそんなうまくいくはずがないだろうと思っていたが…
『おーう、よろしくな』
簡単にたどり着くことが出来てしまった。
それは成功でもあり失敗だった。
好きの程度 白咲葵 @Aoi_Shirosaki
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