第二章 カミカクシスパイラル

僕が何に殺されそうなのかを、君は知らないまま 01

 ハローハローと彼は叫ぶ。

ずっとずっと。

 ハローハローと叫んでいた。

 この星に降下するにあたって、彼の魂は地球活動用の外殻ハードウェアに移し替えられた。

 それによって彼の発する言語は、完全に地球人と互換性を持っている筈だった。

 それなのに、彼の声は届かない。

なぜだろう。

 なぜか上手くいかない。

 任務を与えられ、マニュアルを与えられ、講座も受けた。

 提出したレポートの添削も、毎回しっかりと読んでいる。

 だけど、どうしても上手くいかない。

 彼は孤独だった。

 宇宙の全てから、自分が阻害されているようだった。

 彼は地球が嫌いだった。だから、地球も自分を嫌いなのかもしれないと思っていた。

 彼の心はゆっくりと磨耗した。

 何度も何度も繰り返される学校生活に、静かに削られ心は小さくなっていった。

 それに伴って彼の声も小さくなっていった。

 ハローハローと、最後には囁くように呟いていた。

 だけどあの日、青すぎる空に溶けてしまいとさえ思っていたあの教室で。

 彼は出会った。

 ぞんざいに、無愛想に、

 だけどハローと、確かに言ってくれたあの人に。

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