健二とさやか編

第12話 変人夫妻とその子供 (健二目線)

 

 変人夫妻とその子供の奇妙な話



 「結婚して2年でやっと俺達にも子供ができたな」

「そうね。とっても嬉しい…………あっ今動いた!」


 幸せいっぱい!


「おお! 俺みたいに元気がいい。俺に似た元気のいい子が生まれるといいな(笑)」

「あなたくらい元気だったら少し困っちゃいます(笑)」


 元気が一番!


「アハハ、そう言うなって! 検診の結果じゃ女の子なんだろ?」

「ええ、ちゃんと私みたいに女の子らしく育ってくれればいいけど…………」


  男の子で一緒にサッカーなんかもしたかったけどな


「俺の子供でもあるから大丈夫!」

「あなたの子供でもあるから心配なんです!」


 女の子ならさやかに似たかわいい子になるんだろうな


「ひどいな~俺の嫁は(笑)でも結婚してもう2年なのか…………早いもんだな」

「結婚式のことは一生の思い出です」


 結婚式…………確かに一生の思い出だが…………


「結婚式か…………あそこに雄大がいれば完璧だったんだけどな…………」

「まさか雄大さんがこんなに早く亡くなると思ってもいませんでしたからね…………心臓の病気だなんて…………」


 雄大…………あんなに元気だったのに…………


「おっと! すまんすまん! 俺ともあろう者がくらい雰囲気にしてしまった!」

「いいんですよ(笑)雄大さんは私の友達でもあるんですから」


 そういえば雄大の奥さんはどうなったんだろう?


「そうだな…………本当にこの子は元気に生まれてきてくれれば他には何もいらないよ」

「そうですね。でも私はせっかく女の子なんだからお料理や編み物なんかも教えてあげたいわ」


 健康に育ってほしい。俺みたいにあんまり勉強できなくてもいいから


「…………まあ確かに女の子で俺に似たらまずいな(笑)」

「まったくです。この子にいろいろ教えてお花みたいな女の子に育てるんですから」


 女の子で蝉なんか食べられたらたまったもんじゃない…………


「お前がいろいろを教えるのか…………きっとすぐ上達するな! 特にお前の料理は絶品だ!」

「誉めても何もでませんよ(笑) でも料理には確かに気をつかってます」


 さやかの料理は本当に美味いぞ! どれくらい美味いかっていうとクマゼミより美味い! アブラゼミより少し美味くて、ヒグラシと同じくらいだ! でもミンミンゼミには負ける…………すまん、さやか。


「ああ、お前には感謝してるよ。…………だから引っ越してもいいんだぞ」

「またその話ですか? 前にも私は気にしてないって言ったじゃないですか」


 俺はもう気にしてないけど…………


「いや、でも気持ち悪いだろ? 死体が見つかった家なんて…………」

「私は大丈夫です。 せっかくお母様とも仲良くなったのに」


 母さんと仲良くしてくれるのはありがたいけど…………怖がりなさやかは嫌がると思ってたな


「それならいいんだが…………」

「ええ。 そんなことよりこの子の名前をそろそろ決めないと」


 そうだ、名前を決めないと!


「そうだな~ なかなかいい名前が思いつかないんだ…………画数や血液型、生年月日でもその子に合った名前が変わるらしくて…………」

「健二さんは名前の時だけおまじないを信じて(笑) 心をこめて付けてあげればいいんです」


 子供の名前はちゃんと考えて付けてあげないとな! 


「それはそうなんだけどさ~」

「私は自分で考えたおまじないを心をこめて行ったら願いが叶いましたよ。あっ! また動いた!」


 さやかが言うおまじないってなんなんだろう? 今度聞いてみるか


「おお! 俺にもさわらせてくれ!」

「いいですよ(笑)」


 お腹の中でこの子は何を考えているのかな~


「…………」

「…………」


 …………


「おっ! 今動いたな! 本当に元気がいい!」

「ええ、早く元気に生まれてきてほしいですね」



 もう少し待ってね、パパ



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る