第7話 ゴキブリと子供
興味のある方は見てください。決してきもちのいいものではありません。ゴキブリと子供の奇妙な話。
※
あなたは虫を殺したことがあるだろうか?
これは意地悪な質問だったかもしれない。ないと答えられる人などいないだろう。いるとしたら一日数千歩歩く全ての足下を注意して見てることになる。その一歩一歩に虫達の命がかかっていることにあなたは気付いているだろうか?
だがその結果虫を殺してしまったとしてもあなたは何も悪くない。自然の摂理に逆らっているとは言えないからだ。
では、故意に殺すのだとしたら? これは明らかに自然の摂理に逆らっているだろう。自然界に意味のない殺しは存在しないのだから。
これはある虫を殺してしまった子供の話。
「キャー! ねえ! ゴキブリがいる! 気持ち悪~い。一也お兄ちゃん退治してっ!!」
「うわ! ほんとだ。施設の中にまで入られたら殺しちゃうしかないな~。スリッパ、スリッパ!」
パン
「よし! もう大丈夫だ。大丈夫? 怖かった?」
「大丈夫! ありがとう一也お兄ちゃん!!」
ここは児童保護施設。何年か前に「名前のない少女」と有名になった虐待事件を覚えているだろうか? その時の少女が入った施設として騒がれたが今は落ち着きを取り戻している。どうやらこの施設でゴキブリが出てしまったようだ。
「なんだか最近よく見かけるなー。つい昨日だって…………」
※
「みろ! 一也! 俺が殺したんだ!!」
「こらこら、俊君。外にいる虫は殺さんなくていいの。命は大切なんだよ」
「えー! でもゴキブリだよ! キモイだけじゃん!!」
「う~ん…………。でも施設の中にでたら困るけど外なら困らないよね? だったら殺さなくてもいいんじゃない?」
「いいんだよ! キモイんだから! 一也のバーーーカ!!」
そういって俺は逃げ出す。俺は俊足だから一也も追ってこれないだろう。まえに俊君は名前の通り俊足だねーって言われたんだ。その時はシュンソクの意味が分かんなかったけど…………。俺はもう7歳になったから分かるんだ! まったく一也は難しいことを言ってるからわけ分かんない。キモイんだから殺していいじゃん!
一也はいっつもうるさいんだ。すぐに叱ってくるんだもん。俺は母ちゃんに小さい頃捨てられたらしいんだけど母ちゃんってあんな感じなのかな…………。だったら母ちゃんなんていらないね! うるさいだけだ!
それからはいつも通り友達と遊んで夜になったから寝たんだ。その夜は変な夢をみてさ。なんかゴキブリがいっぱい出てきてしゃべるやつまでいんの。
「俊…………。お前は我らの家族を殺した。なぜだ?」
「うえっ! ゴキブリが喋ってやがる…………。お前らキモイんだよ! 殺されて当たり前!!」
「…………少しも悪いと思わないのか?」
「思わないね! キモイやつは死んでいいの!!」
「…………だったらお前にも同じ目に合わせてやろう」
「へー、やれるもんならやってみろよ! また俺が殺してやる!!」
「しょうがない…………我が家族達よ…………」
じゃべるゴキブリがそういうと布団が何千匹のゴキブリに変わったんだ! 背中の下でガサガサ動いてんの!
「うわっ! なんだよこれ!! 気持ち悪い!!」
「…………」
ゴキブリ達が俺の体を登って来て全身がゴキブリで覆わたんだ。それからそのゴキブリ達が俺の体の中に入ってくんの。口、鼻、耳とかから。口の中がゴキブリでいっぱいになって…………胃とか頭とか血管にまでゴキブリが入ってきた感じがして…………体中がゴキブリでいっぱいになって…………
――――――――――うわっ!!
って自分の叫び声で起きたんだ。なんだ、夢か…………。もう外は明るくなってて朝になってた。
まったく、気持ち悪い夢だったぜ。あんなやつら地球からいなくなればいいんだ!
布団から抜け出し起き上がる。…………やっぱ普通の布団だ。昨日はこれがゴキブリになったんだよな…………。まあ夢だしどーでもいいか! おしっこしたくなったからトイレにいこうとすると△△ちゃんがいたんだ。気分が悪いからストレス発散だ! いきなり現れて驚かしてやろう! って思って飛び出すと…………
「キャー! ねえ! ゴキブリがいる! 気持ち悪~い。一也お兄ちゃん退治してっ!!」
――――――――――えっ! どこにいんの? ゴキブリなんか大っ嫌いだ! …………なんだ、どこにもいないじゃん…………
「うわ! ほんとだ。施設の中にまで入られたら殺しちゃうしかないな~。スリッパ、スリッパ!」
――――――――――おお、一也! だからゴキブリなんてどこにもいないじゃん。それより今日見た夢でさ~
そうすると一也がスリッパを持ってきて俺を叩こうとしてくんの
――――――――――おっ、おい! 止めろよ!! …………あれ、そういえば△△ちゃんも一也もメッチャでかくなって…………
パン
「よし! もう大丈夫だ。大丈夫? 怖かった?」
「大丈夫! ありがとう一也お兄ちゃん!!」
「なんだか最近よく見かけるなー。つい昨日だって俊君が…………あれ? 俊君はどこにいるんだ? まだねてるのかな? 俊くーーん! おーい、朝ご飯だよー…………」
ゴキブリは一1匹いると30匹いるという。30匹いるなら900匹。900匹いるなら…………
この子供は一匹のゴキブリを殺しました。どうかあなたはお気を付けて。
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