第16話 いのちの螺旋(らせん)

「そんなのっておかしいよ!」

 スットコは思わず大きな声を出してしまいます。

「おかしイ?」

「なにがです?」白い髪の女の子と、女王さまは二人して首をかしげました。


「何がおかしいのです? 私たちはこうやって命をつなげてきたのです」

 そして女王さまは話し始めました。

「私はある月夜の晩に外の世界へと羽ばたきました。そして王様と出会い、この街を作ったのです。けれども私の寿命は王様の三分の一もありません。だから私は『私自身』を生んで、その子が新しい女王としてまた王様と子供を作るのです。この街の寿命は王の寿命と一緒。王が死ねばこの街も終わります。……けれども、この街からも、新しい王と女王が巣立っています。そうなれば、私の子供たちは新しい街を作り続けることでしょう。それが私の使命。わたしたちは果てのない螺旋のその先端にいるのです。そういうものです。それが、生きるということの真の意味ですよ」

 静かに語り終えた女王さまは確かに白い女の子にそっくりな顔でほほ笑みました。

 

 スットコには正直半分も理解できない内容でしたが、女王さまのその自信に満ちた静かな言葉は、確かに正しいのかとも思わされました。

 けれども、何かが引っ掛かります。何も分からないといった顔の白い女の子を見ると、何かがモヤっとします。それが何かは分からないまま、スットコは何とか口を開きました。


「だって、だって、なんだかおかしい気がするよ。だってこの子は何にも選べないんでしょ? それでいい、なんてボクには言えない、そんな気が、するんだ」


「自由と可能性、ですか。確かにあなた方のような人間はよくそう言いますね」


「ニンゲン? こいつ人間だったのカ!」女の子はびっくりして女王さまの言葉をさえぎります。

 ええそうよ、と女王さまは女の子の言葉にうなずきました。

「この子は人間、アリの王様の力でここにいるの。そういう不思議なことは、たまにあることなのよ。あなたとドッコイ君、しあわせを買いに来たといったわよね」

「……うん、そうだよ」

「ならばあなたはお家に帰りなさい。そしてお母さまの言いつけをよく聞くのです。それがしあわせになる秘密なのですから」

 ぞわり、とスットコはこの女王さまが突然怖くなってしまいました。

 その美しい顔の下には歯車が入っているみたいな。……まるで、そうまるで機械と話しているような、そんな気持ちになってしまったからです。     

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