第14話 わが姫

 そのころドッコイは、女の子の後をついていました。

 曲がり角をいくつ曲がったでしょうか。いい加減くたびれちゃったな、と思った頃、「ここダ」と赤い目の、触角をもった白い女の子は指さしました。

 大きなフードをかぶった大人が立っている大きな扉です。 


「通るゾ」言うと女の子はものおじもせずにその扉を押して入っていきます。

 門番の大人たちはちらとドッコイの方を見たような気もしましたが、なにせフードを目深にかぶっているのでよくは分かりません。とはいえ怒られるようなこともなかったし、女の子についていけば安心でしょう。


「ただいま! 女王さま!」

 女の子はいうと、とっとっと、と駆けていきました。

 その先にいるのは、黒い髪の美しい女王さまです。いくつもの大きな白いクッションの中に下半身が埋まっているのでその腰から下は見えませんが、女の子と同じ、赤い目、それに触角をもっています。ですが着ている物は黒いワンピース、そして長い黒髪でした。


「おかえりなさい」

女王さまはにこりと笑います。その笑顔は確かに女の子と似ていました。

「そちらの方は?」

 女王さまの問いに女の子は「こいつはドッコイ! 兄弟とはぐれたんだってサ! 困っているらしいからつれてきタ!」と答えます。

 女王さまは優雅にほほ笑むと、「そうですか、それは大変でしたねえ。わたしの子供たちに聞いてみましょう、あの子たちはいろいろと知っているでしょうから、どこかで見ているかもしれません」

 

「あ、ありがとうございます」

 とぴょこっと頭を下げると、ドッコイは「子供たち?」と不思議な顔をしました。


「そうダ、この町にいる奴らはみんな女王さまの子供なんダ!」女の子の言葉にドッコイはびっくりします。どう見たって百人やそこらではきかない数ですもの。

「何を驚いてるんダ、そういうもんだろう?」

 と言われても、ドッコイにはピンと来るはずもありません。


「じゃあ、ここにいるのはみんな君の兄弟ってこと?」 

「そうサ、その通り! ま、半分だけだけどな」 

「半分?」

 怪訝そうな顔のドッコイに女王さまは優しく語りかけます。 


「ここにいる者たちで、『わが姫』以外は王との間の子なのです。しかしこの『わが姫』だけは私が一人の力で産んだ子、私の分身、『クローン』と、そういう言い方をすれば分かるかしら?」

 

 もちろんドッコイには分かりませんでした。     

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