第10話 女の子
虫の目をした女の子は、キシシッとまた笑うと、ドッコイを指でつつきました。「お前、ドコから来タ?」
ドッコイはその質問にちょっと悩みます。本当のことを言っていいのかしら? ですが、自分よりちいさなの女の子を恐れたなどとスットコに知られたら、何と言われるか分かったものではありません。
ドッコイは「ぼくは、上から来たんだ」と言います。
「上?」女の子は土で出来ている天井を見ました。
「地面の上だよ!」
ドッコイの言葉に女の子はじっと考え込む様子でした。十秒ほどが経ったでしょうか?
「オヒサマ、ってのがあるところなのカ?」
ドッコイはほっとします。
「そうそう、そこだよ。お日さまと青い空があって、こんなふうに壁で囲まれていない場所!」
「ふーん」女の子は不思議そうにドッコイの顔を見ます。
「きみは、お日さまを知らないの?」
ドッコイの物言いにちょっとむっとした様子の女の子は、
「女王さまはいちどその『地上』に行ったんだって言ってタ。広くて明るかったけれど、あんまりいいところじゃあなかった、だからこの町にいるのが一番なんダ」
ふうん、とドッコイはあいまいに返事をします。どちらかと言えば地下の世界に住むのはぞっとしません。しませんが、それはもちろんドッコイの感覚でしかないので、そのことを女の子にいうのは差し控えたのです。
「そもそも、なんでオマエこんなところにいるんダ?」
女の子の質問ももっともです。ドッコイは今までの経緯をたどたどしくも話しました。
「……なるほどナ、コウフクを探しているのか。そしてあの女神さまを怒らせてしまっタのか」それから女の子はおかしそうに大笑いしました。
「よくもまあおしっこなんかをしたもんダ。オマエの兄はそうとう大物だナ」
ケラケラと屈託なく笑う女の子につられて、ドッコイもつい笑ってしまいます。
ふと気づくと、フードを被った大人たちが二人を囲むように十人ほど、じっとこちらを見ています。一瞬どきりとしたのもつかの間、女の子は大人たちに対して物おじせずこう言いました。
「こいつはアタシの友だちダ! 女王さまに用事があるから、お城へつれていク!」
大人たちはうやうやしくお辞儀をすると二人の周りから離れていきます。君はすごいねえ、とドッコイが感嘆の声をあげると、女の子は少し誇らしげに胸を反らして、
「当然ダ、アタシは『もう一人』だからナ」と言いました。
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