第8話 もう一度地の底へ
スットコとドッコイは双子の兄弟、お母さんから「こうふく」を買ってこいと言われて不思議な地下の世界に行きました。ところが……
「この小童! なんという事をしてくれたのじゃ、許さぬぞ!」
女の人の怒り方はすごいものでした。もちろん自分の部屋の前でおしっこをされたのですから怒るのも当然ですけれど、その迫力がものすごかったのです。
スットコもドッコイもお母さんが怒った時が誰よりも一番怖いと思っていましたが、今はこの女の人がチャンピオンです。
「ごめんなさい」「ごめんなさい」
二人とも涙を目に一杯ためて必死に謝りますが、怒り狂った女の人、(本人は「ミチシキノオホカミ」と名乗りましたが)聞く気がないようです。
「許すはずがなかろうがこのうつけ者どもめ! これでも喰らえぃ!」
女の人の指先から「稲光」が出ます。
ビカビカっと不思議な光が暗い洞窟の中を明滅させました。
「きゃっ」
と声を出す双子たち。
もうだめだ、と思ったその時です。二人の頭の上に載っている赤いアリたちが女の人の稲光に対抗するように白く光って二人を守ったのでした。
双子は何が起きたのかもわからず、互いに見つめてパチクリしたのですが、女の人は何事か理解したみたいです。
「おのれあの男め、ここでもまだわらわの邪魔をするか、……ならば仕方ない。こうしてくれよう」
美人だった女の人は、今はもう口が耳まで裂けた恐ろしい顔で、テレビに出てくる『ギャル』という人たちよりもはるかに長い爪を双子に向けます。
「お前らにわらわの力、直接は効かぬようじゃが、しかしこの『世界』はわらわの物じゃぞ」
そういうと女の人は指をくいっと下の方へとむけました。
「あっ」と思う間もありません。スットコとドッコイの足元の地面がスコンっとなくなって、二人は地面の下へ、つまり地面の下のさらに下へと滑り落ちていったのです。
「おほほほほほ、愉快ゆかい」
女の人の声が遠くから聞こえてきます。しかし二人にその声を聞いている余裕はありません。
……どれほど長く滑ったでしょうか? ドッコイはくるんっと一回転して投げ出されました。今回も柔らかい地面だったためにケガこそしませんでしたが、もちろんお尻を打ったので痛いことは痛いです。いったいどうなったのでしょう?
「スットコ、どこお?」
そう言ってドッコイはあたりを見まわします。けれどもそこに、双子の片方、スットコの姿はなかったのでした。
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