第7話 おしっこ
スットコとドッコイは双子の兄弟、お母さんから幸福を買ってこいと言われて、……どういう訳か今、地下深くです。
「こうふくを売っている所を知っていますか?」というドッコイの言葉に女の人はフフフと笑い出します。
「ま、酒でも飲めば幸福になる者もいようがな」
「お酒はこどもには売ってくれないんだよ」
「そうそう」
「ふむ、なるほど。面倒な話じゃがそれも道理。あれは童には毒でしかないからな」
そう言って女の人はそれの味を思い出したかのようにグビリ、と唾を飲み込み、唇を舌でなめました。
「まあそれならなおさらよ。そんなもの売っているわけがなかろう。もちろん、知っておっても話すかどうかは別の話じゃがな」
ドッコイは腕を組んで考えます。なんだか思わせぶりなことを言っていますが、どうもこの女の人、嘘は言ってないみたいです。だとすると、確かにここにいても仕方ありません。ドッコイはお邪魔しました、と言って女の人のいる部屋をあとにしました。女の人はもう既にしらんぷりです。
そこではっとドッコイは思いだします。
そう言えばスットコはどこだ?って。
なんとなく嫌な予感がして部屋を一歩出たその場で、左を向きました。
「ふーっ」スットコは満足の吐息をついています。
ドッコイは目をまん丸に見開きました。
「スットコ!なにやってるの??」
もちろんその質問の答えは見ての通りです。
スットコはこちらを振り向きもせず高らかに「オシッコ!」と答えました。
そう、スットコは女の人の部屋の出口、そのすぐ脇でおしっこをしていたのです。さっきから黙っていたのはおしっこを我慢していたからだったみたい。
慌てたのはドッコイです。青ざめるとスットコの手を取ってこの場を逃れようとしますが、時すでに遅し。
「なんじゃ、この匂いは?」
女の人が部屋の出入り口までやってきました。そして目が合ったのです。
……スットコのおチンチンと。
「が、」
と声もなく口を開けた女の人は一拍開けて、二人を怒鳴りつけます。
「なにをしておるこの痴(し)れ者めらが!我が厨(くりや)の前で尿(いばり)をするとはなんたる不浄! 汝(うぬ)らわらわを『ミチシキノオホカミ』と知っての狼藉か!」
まさにそれは雷が落ちたような大きな声でした。
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