第5話 あたまの上の……
スットコとドッコイは双子の兄弟。
お母さんから「こうふく」を買って来いと言われた双子は、暗い穴の中に転がり落ちていったのです!
「アイイタタタ」
二人ともケガはありません。スットコはゆっくりと立ち上がりました。
穴の底です。普通なら何も見えるはずはありませんが、ぼおっと緑色に周りが光って見えます。不思議だな、と思うと同時に、髪の毛の中で何かがもぞもぞと動きました。
「なにか」。
それが「アリの王様」がつけてくれたアリだということに気づいて、「ひえっ」と声を出しそうになりましたが、ドッコイの前で情けない悲鳴なんて上げられません。
それに何より、暗闇でも物が見れるのは「お前たちのおかげなのかい?」スットコは頭の上のアリを触って尋ねます。もちろんアリは答えませんが、「そうだよ」とでもいうようにアリは二回アゴをカチカチと鳴らします。
「やっぱり魔法のアリなんだね!」ドッコイは単純に納得したみたい。
「うーん、そうなんだろうけど」
でも、そもそもここはどこなんでしょう? 二人はこわごわ歩き出しました。運動靴は土を踏みます。歩きやすい、不思議な通路でした。
前を見ると、分かれ道になっているトンネルの入り口がいくつも見えます。これはどっちを行ったらいいのやら、と途方に暮れる間もなく、ドッコイが先頭に立って進んでいきます。その歩みのしっかりしたこと!
スットコは(だいじょうぶかなあ)と思いながらも、弟の後についていきます。
やがていくつかの分かれ道を過ぎて、だいぶ奥へ、深くへと入っていくと、突然ドッコイが振りむいて声をだしました。
「スットコ! ここどこ?」困ったことにドッコイは、何も考えずに進んでいたみたい。
やっぱり大丈夫じゃなかったぞ、と頭を抱えそうになったスットコの鼻に、お醤油の焦げるいい香りがしてきました。
ドッコイもこの香りに気づいたようです。二人は顔を見合わせます。頭の上の赤茶色いアリたちも顔を見合わせました。・・・赤茶色? そうです、いつの間にか、二人は普通の光で見ていたのです。その光は、いい香りのするトンネルから漏れてきています。
さて、もうこうなってはやることは一つです。
「すみませーん!」二人は声をそろえてそのトンネルへと声をかけます。
返事はありません。
「すみませーん!!」今度はさっきの倍大きな声です。
たっぷり30秒は待ったでしょうか、二人は顔を見合わせるとトンネルの中に入っていきました。
そのトンネルの中では、きれいな女の人が、お箸でキノコを食べているではありませんか。
「なんじゃ?」女の人は不機嫌そうに双子をにらみつけました。 ……続く。
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