第4話 すってんころりん

スットコとドッコイは双子の兄弟。お母さんから「こうふく」を買って来いと言われてお家を出ました。

 そこで出会ったアリの王様が「幸福はあそこに行けばあるぞ」と言って指さしたその先には……あれ、何もありません。


「ないよ!」

「ないよ、なんにも!」

 スットコとドッコイは怒ります。

 大人ってやつはいつだって僕ら子供をからかうんだから、こっちは真面目だってのに! でもそれは双子のカン違い。

 アリの王様はからかってなんかいないのです。


「よく見てみろ、あるじゃないか」そう言われて二人は指し示す方向へと向かいました。

 そして「あっ!」「えっ?」二人は同時に声を出します。

 

そこにあったのはアリの巣です。正確にはアリの巣穴の入り口でした。


「こんな穴、なんになるのさ!」

 とドッコイがかんしゃくを起こしかけたその時、王様は「ふっ」と息を吐き出します。

 手のひらにはアリが二匹乗っていました。そのアリがスットコとドッコイの頭に乗ると、見る間にアリの巣穴が大きくなっていくではありませんか!

 いいえ、違います。巣穴が大きくなったのではありません。二人の体が小さくなったのです。

 

「うわあ!」

「きゃあ!」

 尻もちをついてスットコとドッコイは大あわて。まさかこんなことになるとは思ってもみませんでした。

 目の前にいるのはさっきまで踏みつけていたアリと二人は同じ大きさです。こうやって見ると、鎧をつけた大きなアゴの黒いアリは文字通りの怪獣です。二人は互いに抱き合いました。


「あわてるでない」

 王様は二人の後ろで笑って言います。王様も同じ大きさになっているのです。「アリの王の知り合いをアリたちは襲わんよ。そのアリを乗っけておけばワシの魔法で小さいままじゃ」

 スットコは頭の上のアリを触ります。小さなアリが今は子猫くらいの大きさになって頭に乗っています。

「ひえええ!」

 スットコが頭のアリを引きはがそうというのをドッコイがあわてて止めます。

「このアリをとっちゃダメだよ!」

 そして振り向いてアリの王様に尋ねます。


「この穴の中に『こうふく』があるんだよね?」

「その通り」

「だからボクらはこの大きさにならなくちゃいけないんだよね」

「その通り」

「ほら、だからスットコ、このアリはこのままにしておくんだよ」スットコは涙目でドッコイの頭の上に乗っている赤茶色いアリを見ます。目が合ったアリは、にっこりと笑ったように見えました。


 「さて、ワシはここまで。ここから先は二人だけじゃな」


 ほい! と掛け声をかけるとアリの王様は二人の背中をどしんと押しました。

 すってんころりん。

 双子は穴の中に転がり落ちていったのです

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