第2話 おばあちゃん
スットコとドッコイは双子の兄弟。お母さんから「こうふく」を買って来いと言われて大弱り。だってどこで売っているのか、太っちょおじさんも知らないっていうんだもの。
でも双子はきっとどこかにはあるはずだ、と外へ行こうとしますが。
「スットコ!ドッコイ!どこへ行くんだね?」
赤い服を着たおばあちゃんが、外へ出ていく二人を見とがめます。
「買い物さ!」二人は答えます。
「買い物? スーパーに行くにしちゃあずいぶんと大げさな格好だねえ」
おばあちゃんはじろりと見ます。まだまだ小さな双子のやることは危なっかしいものね。
「スーパーなんか行かないよ」
「そうそう」
「おじさんが言ってたよ、スーパーでは売ってないって」
「ほう、じゃあどこで売っているんだって?」
「それを探しに行くんだ!」
双子たちは胸を張って答えます。けどもおばあちゃんはびっくりぎょうてん。
「どこで売っているかも分からないのに、買えるものかね!」それからおばあちゃんは双子の耳をつまむと、家の中に戻そうと引っ張ります。
「イタタタタ!やめてよー」ドッコイは半べそ。
お兄ちゃんのスットコは何とかおばあちゃんを説得しようと必死に話しかけます。
「だってだってお母さんが『こうふく』を買って来いって言ったんだ。僕らはそれを買ってこなくちゃいけないんだよ」
「『幸福』だって?あきれてものも言えないよ。そんなものは売っているわけないじゃないか。お前んとこのお母さんはとんでもない勘違いをしているね」
おばあちゃんの言葉は実にごもっとも。
けれども、とおばあちゃんはパッと二人の耳を離します。
「わあ」二人は声をあげて頭をごっつんこ。 急に離すんだもの。
「まあでも、確かにねえ」
腕組みしておばあちゃんは考えます。「そういうものが売ってないと言ったって、聞く子たちじゃないものねえ」それはおばあちゃん、正解です。
おばあちゃんはそろりそろりと忍び足で逃げようとする兄弟のエリをむんずとつかんで、こちらを向かせます。「いいかい、暗くなるまでに帰ってくるっていうんなら、行かせてあげる」
二人はぱあっと明るい顔。
おばあちゃんはしょうがないね、と笑って水筒に麦茶を入れてあげます。
「じゃあ、今度こそ、行ってきまーす!」
二人はとうとう外に出ました。
もちろんお使いは初めてではないんだけど、さて、これからどこに行こう?
すると右手の森から不思議な声が……。
~つづく~
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