誰彼

名も知らない少女が救われた


救ってくれと叫んだ男がいた


僕も、誰か救ってくれないか


僕だって、名も知られてないその他大勢の内


救われる権利だってあるはずなんだ


誰か救ってくれないか


僕の叫びは群衆の靴音に紛れて


僕の嗚咽は中央線の悲鳴にかき消され


誰か救ってくれないか


僕はどこにだっている


あるときは君の隣にいた


あくる日は彼と話していた


昨日は路肩でうずくまっていた


誰か救ってくれないか


名も知らない少女なんかより


僕を!


塵屑のような僕を


すくってくれ!


ほら、僕だって叫んでるじゃないか


あの男のようにさあ!



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