誰彼

名も知らない少女が救われた


救ってくれと叫んだ男がいた


僕も、誰か救ってくれないか


僕だって、名も知られてないその他大勢の内


救われる権利だってあるはずなんだ


誰か救ってくれないか


僕の叫びは群衆の靴音に紛れて


僕の嗚咽は中央線の悲鳴にかき消され


誰か救ってくれないか


僕はどこにだっている


あるときは君の隣にいた


あくる日は彼と話していた


昨日は路肩でうずくまっていた


誰か救ってくれないか


名も知らない少女なんかより


僕を!


塵屑のような僕を


すくってくれ!


ほら、僕だって叫んでるじゃないか


あの男のようにさあ!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る