3

 また、別の日。

 放課後になると、いつものように一緒に帰ろうと声を掛けてきたまりんに用事がある、とだけ伝え、僕は学校の図書館へとやってきた。

 この学校の図書館は校舎から独立し、一つの建物として存在している。そしてこの図書館は、初等部から高等部まで、全ての課程に共通のものである。そうした事情もあってか、学校の図書館と聞いて人が想像するものよりも遥かに大きい。

 外観は校舎と同様、伝統的な木造建築といった感じだ。

 とはいえ、これも校舎と同様、だからと言って古臭い感じがするかというと全くそんなことはなく、むしろ上品で、どこか高級感さえ漂う。

 内装の方はといえばこれもまた見事なものだ。吹き抜けになった中央ホールには、吹き抜け部分を取り囲むようにいて巨大な書架がいくつも設置されている。天井に取り付けられたステンドグラスから漏れる光が神秘的で、図書館というよりは西洋の教会のような雰囲気を醸し出している。

 しかし入口には、時代の流れか、カードリーダー式のゲートが生徒たちを待ち構えている。その奥には貸出し用の端末の姿も見受けられる。

 最新の設備と、伝統的な洋風建築が実にミスマッチで、少し微笑ましい。

 そのカードリーダーに、自分の学生証をスラッシュ。

 赤いランプが緑に変わり、ゲートのバーが僕に道を空けてくれる。

「ええと、どこに何があるんだ……」

 書架が設置されているのは、何も中央ホールだけではない。

 中央ホールの外側にも、何重にもなって書架は連なっている。

 これでは、目当ての本を探すのも一苦労だ。

 一応、それぞれの書架にジャンルを示す分類番号が記されているけれど、そもそもの規模が大きすぎる。東京で通っていた学校の図書室――あちらは規模から言っても、また校舎内の一区画に過ぎなかったということからも、この名称がぴたりと当てはまる――の、優に十数倍の蔵書を抱えているらしい。

 僕が今いるのは、『文芸その他』という棚の前だ。

 どういうわけか、妙にマンガが多いような気がするのだけれど……。まりん朱里亜しゅりあは、こういうところから県外のことについての間違った知識を得たのだろうか。

 まあ、それはともかく。

 僕がこの日、まりんの誘いを断ってまでどうして図書館にやってきたのか。

 それは、この県について調べるためである。

 僕の記憶には存在せず、いつの間にか出現していた四八番目の都道府県。

 そのトップに君臨する大公。

 数々のファンタジー食材。

 先週、僕の目の前に現れたドラゴンとバジリスク。

 そして、その異常な環境を何とも思っていないらしい、ここの住民。

 その住民と同じように、何の違和感も抱かずに受け入れてしまっている我が家族。

 この県のことは、県外でいくら調べようともまともな情報を得ることができなかった。

 だが、ここなら。

 緋紗納ひしゃな県内の、しかも大公の名に於いて運営される学園の図書館ならば、何らかの情報が得られるのではないか。

 そう思って、図書館にやってきたところまではよかったのだけれど……。

「うーむ、迷った。どこだ、ここは?」

 あまりにも広すぎた。

 いつの間にか周りには、他の生徒たちの姿もなくなっている。通路のような場所で、両側の壁に本がびっしりと並んでいる。蛍光灯が切れているのか、妙に薄暗い。

「……うん?」

 その時、とある掲示の前に辿り着いた。

 そこに書かれていたのは――。

 『緋紗納ひしゃな県関連書籍』。

 僕が欲している情報は、この先にあるのだろうか。

 しかし、こんなコーナー、図書館の見取り図にはなかったような……。

「ま、いいか。行ってみよう。なかったら戻ってくればいいだけだし……。道に迷っちゃったから、帰り道はよく分からないけど……」

 独りごちながら、その掲示の奥へと足を踏み入れる。

 この図書館の規模を考えると、随分と小さめの部屋だ。その部屋の中にも、びっしりと本が集められている。

 そのタイトルを一つ一つ確認していく。

 大半は日本語のものだが、中にいくつか、全く見たことのない文字で書かれたものもある。どこの国の言葉なのだろう。

 その中から、シンプルに日本語で『緋紗納ひしゃな県』とだけ書かれた本を一冊抜き出し、ページを捲ってみる。

 僕の期待に反して、そこに書かれていたのは……。

「何だこれ、四コママンガ?」

 それは四コママンガの単行本のようだった。しかしその内容は、例えば『ドラゴンが出てきて、県庁の人が駆けつけて、戦って、やっつけて嬉しい!』みたいな、起承転結などどこ吹く風、といったようなものすごくつまらないものだった。

 本を棚に戻し、その他の本も開いてみる。

 しかしどれもこれも、絵日記だったり、単なる落書き帳だったり、酷いものは白紙だったりするだけで、僕が欲しい情報などどこにも記載されていなかった。

「となると、あとは……」

 この、何語なのか分からない、謎の本。

 読めるはずはないけれど、とりあえず手に取ってみる。文章自体は読めずとも、地図とか写真なら分かる。

 とりあえず、適当なページを……。

「ウガーーーーッ!」

「うわっ! びっくりした!」

 適当なページを開くと、そこには鋭い牙が上下に生えた大きな口が描かれており、その口が叫び声を上げた。

 急なことで本を取り落としてしまった。今、その本はハードカバーの表紙を両顎のように使って、パクパクと閉じたり開いたりしながらその辺で暴れ回っている。

「何だ、これ?」

 それだけで害はなさそうだったので拾い上げて、しっかりと本を閉じると棚に戻した。

 他にも何冊か、謎の言語で書かれた本を開いてみたけれど……。

 あるものは音痴な歌を歌い出し。

 あるものは気さくに話し掛けてきて。

 あるものは色っぽい声を上げて。

 そんなこんなで、やはりどれもまともな本ではなかった。

「当てが外れた。……帰ろう。何か疲れたし」

 全ての本を元の位置に戻し、来た道を引き返そうとしたところで、奥にもう一つ通路があることに気が付いた。

 そこにはまた掲示がされている。

緋紗納ひしゃな県の秘密』。

 そのものずばり、そう書いてあった。

「あ、怪しすぎる……」

 ここは緋紗納ひしゃな県だ。また何が起こるか分かったもんじゃない。

 あの戦慄のドラゴンやバジリスクの件をすっぽり忘れていられるほど、僕は能天気な性分をしてはいない。

 とはいえ、近寄るだけなら大丈夫だろう。

 その先を窺うだけ。

 絶対に中に這入ってはいけない。

 その先にもまた沢山の本が収められているようだった。

 でも、僕は騙されない。

 たった今騙されたばかりだし……。

「……もういいや。本当に帰ろう」

 そう思って、後ろを振り返った瞬間。


「だ、だめええええええっ!」

 鬼の形相で誰かがこちらに駆けてくる。

 まりんだ。

 何だかよく分からないけれど、珍しく慌てている。

「あれ、どうした、まりん……」

「うわわわわ! と、止まれない……っ!」

「お、おい……」

 そのまま、なすすべなく大激突。

 僕は後ろに――例の怪しすぎる空間まで突き飛ばされる。まりんはそのまま、バランスを崩して僕のいる空間に頭から突っ込んだ。

「いててて……。だ、大丈夫、王子くん?」

「あ、ああ。大丈夫なんだが……。ひょっとすると大丈夫じゃないのかもしれん」

「えっ?」

「ここ……。周り、見てみなよ」

「……あ。あああああああっ!」

 まりんは辺りを見回して、悲鳴を上げた。

 この空間――とにかく暗い。

 先程までも薄暗かったが、今は光がほとんど届いていない。

 そして、何より。

 僕たちが這入ってきたはずの出入り口。僕がまりんに突き飛ばされて通過した、まりんが自身のスピードに耐えきれずに突撃した、あの出入り口が綺麗さっぱり消失している。そこにはただ、壁があるだけである。図らずも、完全密室トリックが完成してしまった。

「ご、ごめんなさい。王子くんを助けるつもりが……。ミ、ミイラとりがミイラになる、とはまさにこのことだね……」

「不吉なたとえ話を持ち出すな。まあ、起こってしまったことはしょうがないとして、ええと、ここはどこだ?」

 急に変な空間に放り出されて、何が何だか分からない。

 ただ一つ言えるのは、また何かが起きている、ということだ。

「ダンタリオン」

「……ダンタリオン?」

 何だっけ、それ……。

 ソロモン七二柱の悪魔の名前だったかな。

 この県には悪魔までいるのか。最早その程度では驚くには値しないけれど。

「ここは、ダンタリオンが作り出した迷宮だよ。あの図書館には、昔からダンタリオンが住み着いているんだ。そして、何かの情報を求めている人が現れると、その探究心に付け込んで迷宮に誘い込むの。……王子くん、ひょっとして、何か心当たりがあるんじゃないかな」

「まあ、あるな……」

 僕はこの県が抱えた秘密を知りたくて、この図書館へとやってきた。そこをダンタリオンに付け込まれたというわけか。あの荒唐無稽な本たちも、僕を更に奥へと誘うための罠だったということだ。

「でも、僕はここまで這入るつもりはなかったんだよ。あからさまに怪しかったし……」

「えっ……。そ、それじゃ……」

「うん。言いにくいんだけど……」

 まりんが突撃さえしてこなければ、僕はここに迷い込むことはなかったのだ。

「そ、そんな……。王子くんの様子がおかしいと思って、こっそり付けてきて。そしたら王子くんどんどん奥の方に行っちゃって……。そしたらダンタリオンに引き込まれそうになってたから、慌てて走り出したら止まれなくなっちゃって……。本当にごめんなさい」

「あー、まあ、それはもういいよ」

 どうも謝られるのは苦手だ。

 それに、そんなことをしていたって、事態は好転しない。

 もっと建設的な話をしよう。

「ここからどうすれば出られる?」

「分かんない……。どこかに出口があるのかな?」

「んじゃまあ、探してみるか」

 凹み気味のまりんの手を引き、歩き出す。

 ところどころに設置された蠟燭の僅かな明かりだけを頼りに、当てもなく迷宮を彷徨う。

「ね、王子くん」

「うん?」

「せっかくだからさ……。こうじゃなくて」

 まりんは自分の左手首を掴んでいる僕の右手をとんとん、と軽く叩いた。

 その動作に促されるままに右手を解く。

「えへへー」

 すると、解かれた僕の右手に、まりんが左手を重ねて、指の一本一本を絡めてきた。

「あの、これは?」

「こうした方が雰囲気出るよねー」

 先程までの落ち込みようはどこへ飛んで行ったのか、心から嬉しそうという様子のまりん

「せっかくだから手、繫ごうと思って」

「はあ。まあいいけど……」

 しかもこの繫ぎ方は――。

 いわゆる、恋人繫ぎというものだ。

「な、何かどきどきするね……」

「あ、ああ。まあな」

 できるだけ意識しないようにしていたのだが、そう口に出されてしまうとやはり気恥ずかしいものが勝ってしまう。

 僕だってそんな経験があるわけでもないし……。

 そんなことを言っている場合ではないと思うのだが。

「今回も県庁の人とかに助けて貰えないのかな」

 気を取り直して、この事態への対処を考える。

「あー、そうだね。とりあえず助けを求めてみよう」

 海はポケットから携帯電話を取り出し、手際よく操作する。

 というかここ、電話通じるのか?

 案の定、彼女は渋い顔をしている。

「あ……。だめだ、県庁繫がらないよ」

「まあ、そうだろうな。こんなところじゃ、電波なんか……」

「ううん、そうじゃなくてね。もう、五時過ぎちゃったから……。県庁の人のお仕事、終わっちゃった」

 …………。

「ああ、そう……」

 相変わらず呑気な県民だなあ。

 しかし彼女はめげずに、再度どこかにコール。

「あ、朱里亜しゅりあくん? あのね、今、ダンタリオンの迷宮に迷い込んじゃったんだけど……。あ、うん、王子くんも一緒だよ。……えー、そんなことないよー。あはははは」

 うわー、通じちゃったよ。

 本当に迷宮なのか、ここ。

 しかも何か楽しそうに雑談してるし……。

「え、ええ!? そ、そうかな……。わ、分かった、うん。が、がんばる……」

 何か問題でも発生したのだろうか、まりんが珍しく動揺している。

 しかも、顔が少し赤い。

「ね、どうしたらいいかな? え? ほんと? うん、ありがとー。じゃあねえー」

 何か解決策は見出せたのだろうか。

朱里亜しゅりあ、何だって?」

「え……あ、うん。SNSで呼びかけてくれるって」

「はい?」

「ソーシャルネットワークサービスで呼びかけてくれるって」

「いや、別にその英略語が分からなかったんじゃなくて……。え、大丈夫なのか、そんなことで……」

 SNSで呼びかけたからと言って、誰かが助けに来てくれるのか?

 誰かって誰だ。

 この異常事態を治めることができる誰か。

 そんな人物に、SNSを用いた救難信号など届くのだろうか。

「大丈夫だと思うよ。……ああ見えても朱里亜しゅりあくん、SNS上での繫がりは一〇〇〇件を超えてるんだから!」

「そう、そりゃ、安心だ……」

 信頼のソースはそういうところにあったのか。

 それを聞かされた僕は、何とも言えない不安感に襲われていた。


 そこから、一時間ほどが経過しただろうか。

 どこをどう歩いても同じ光景が広がっている。

 違うところを歩いているのか、それとも同じところを歩いているのか。それすらも判断ができない。

「何か、疲れたね」

「まあな」

「お腹空かない? わたし、ドラゴン肉チップス持ってるけど」

「ああ、おかしいな。ついさっきまでお腹空いてた気がするんだけど……。急に満腹になっちゃったみたいだ。これじゃ、もう何も食べられないな」

「あれ、そうなんだ。じゃ、わたし一人で食べちゃうね」

 当初、ここに迷い込んだ時の緊張感は全て吹っ飛んでしまった。今はいつも通り、まったりとした空気が流れている。

「でも、ちょっとデートみたいで楽しいかも」

「それは言いすぎじゃあ……」

 流石に楽しい、とまでは僕は思えない。この先どうなるのか、全く予想が付かないのだ。

 それに、何が悲しくてこんな薄暗い所でデートなどしなければならないのか。

「えへへ。でも、王子くんがいるからね」

「僕を当てにされても困るというか……」

 僕は何の力も持たない、ごく普通の一般人だ。

 有事の際にまりんを守り切る自信など、どこにもない。

「ううん。そういうことじゃなくてね」

「はい?」

「えへへー。ないしょ」

 可愛らしく微笑むまりん

 薄暗い迷宮の中で、そこだけぱあっと明るくなったような気がした。

「い、今だ……っ」

「うん、何か言ったか」

 不意にまりんが放った言葉。その意味を捉えかねていると――。

「えいっ」

 そんな掛け声と共に、まりんがこちらにすり寄ってきた。

 こうも密着されると、どうしてもその女の子の身体を意識せずにはいられない。

「どうした?」

 そんな心境をできるだけ悟られないよう、一切の感情を排しながら答える。

「んー、別に」

 なぜだろうか、まりんの機嫌が少し悪くなったような……。

「やっぱりこれじゃだめなのかな……。もっと、そう、華良緋からひさんみたいな方が……」

 小声でまりんがよく分からないことを言う。

「え、何が? 華良緋からひがどうしたって?」

「何でもないよっ」

「そ、そうか……」

 少し怒られてしまった。

 僕は何か怒らせるようなことをしたのだろうか。

 女の子は難しい。

 僕に分かるのは妹のことくらいだ。

「それにしても、いつになったら出られるんだ、僕たち」

 少し悪くなった空気を取り繕うように言う。

「そうだねえ。もう一時間くらいは歩いてるよねえ」

「まあ、朱里亜しゅりあの人脈に期待するしかないかな」

 そのまま、またしばらく歩き続ける。

「あ、王子くん、あれ」

 やがて、可愛らしいドラゴンのイラストが描かれた袋からおぞましいお菓子を摘まみながら、まりんが前方を指差して言った。

「うん? 何だあれ?」

 いつの間に現れたのだろうか、そこには簡易的な扉が見える。ドア枠と板の間の、僅かばかりの隙間からは光が差し込んでいる。

「出口かなあ」

「僕にもそう見えるな」

「誰かが助けてくれたんだよ、きっと」

 あくまで楽観的なまりん

「だと、いいんだけど……」

 対して疑心暗鬼な僕。

 ここに迷い込んだ時も、こんな風な罠が仕掛けられていたのだ。人間は成長する。僕だって成長する。

 僕の不安をよそに、まりんは軽い足取りで扉へ向かい、ドアノブに手を掛ける。

「ああ、やっと出られるよー」

 そして、あっさりと扉は開かれる。

 その先に見えたのは――。

「図書館の……ここは、『文芸その他』コーナーだ。どうやら、戻ってこられたようだな」

 今回は罠でも何でもなかったようだ。

 そういえば、ちょうど、『緋紗納ひしゃな県関連書籍』のコーナーに迷い込む以前に、僕が彷徨っていたのがこの辺りだ。あのふざけた区画もダンタリオンの仕業だったようだから、僕はここで、ダンタリオンに引き込まれたことになるのかな。

 ようやく安堵の溜息を一つつくと、我先にとばかりに脱出を果たした海を追いかけて僕も扉をくぐった。

 するとその扉は虚空に消え、それまで僕たちが囚われていた迷宮は、姿も形も見えなくなった。

「おお、どうやら出られたみたいだな」

 と、ここで聞き慣れた声が聞こえた。

「ああ、助かったよ」

「ありがとー」

 前方の、マンガがたくさん収められた書架の影から現れた朱里亜しゅりあに礼を述べる。

「何、いいってことよ。……大体、俺は基本的に何もしてないからな」

 朱里亜しゅりあは、SNSで救助を募ってくれたのだったっけ。

 と、いうことは……。

「ええと、結局誰が助けてくれたんだ?」

「さあねえ。ま、こんな解決法を取れるのは巫女くらいなもんさ」

「巫女、か」

 一体その巫女というのは、どういう存在なのだろう。

 魔物の浄化が、巫女の役目らしい。

 今回は特殊能力で、僕たちを迷宮から救い出してみせた。

「ま、俺の直接の繫がりだけでも、巫女はSNS上に三人はいるからな。そのうちの誰かかもしれん。……自称だけどな」

「ふうん、そうか……」

 いまひとつすっきりしないけれど、とにかく助かった。

「それで――春羅木はるらぎ。どうだった?」

 朱里亜しゅりあまりんに問う。

 何の話だろう。

「全然だめだったよ。……興味、ないのかな」

 まりんの言葉に、『はああ』と大きな溜息を一つつき、朱里亜しゅりあが僕の方へ寄ってくる。

「お前って奴は、罪作りな奴だなあ」

 僕の両肩を叩きながら、そんなことを言った。

「はあ……?」

 言われのない糾弾に首を傾げる。

「それじゃ、帰ろっか。王子くん、朱里亜しゅりあくん」

「だな」

「……ああ」

 そして、三人揃って帰路に就いた。

 まだ見ぬ巫女に思いを馳せながら、この日も更けていった。

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