DAY3

13.無言の腹パン

「じんぐるべーるじんぐるべーるくりすーますーきょうはーたのしいくりすますー」

 よりによって父親の歌声で目が覚める日が来るとは思わなかった。

「ジングルベルはクリスマスの歌じゃねぇよ父さん。あとおはよう」

「おはよおおお!」

 あーもー朝からうるさいな。こんな調子じゃリサエルも連絡すら取れないだろう。

「あ、そうそう。零零零零零なんて市外局番有ったんだな」

 一応連絡自体は来たらしい。どうしたんだよ。

「え? 出たけど特に何も無かったぞ?」

 俺のプライバシーってもんは無いのか。あと父さんには話が通じない的なアレなんだろうか。

 細かいことは考えても仕方ない。

「あとさ、父さん。まさか今日休み?」

「ああ。全力で楽しむために二連徹夜で仕事したのは内緒でな」

 誰にだよ。そう思ったけど言わない。てか効率落ちるだろ。大丈夫かよ我が家の大黒柱。倒れたりなんかしたらおしまいだぞ。

「そうならないために儲けている」

「俺の心を読むな! てかなる前に休め!」

「いやー、隆也はいい嫁になるな」

「なるか! 女になるとかどこのファンタジーだ!」

 ……まあ、今のネロのことを思うと現状はファンタジーではあるのだろう。天使とかまだ百パーセント信じてはいない。

 そもそも俺のどこを見てそう思ったのか。子供の顔でも拝みたいもんだ。ちゃんと反面教師として捉えてるか不安であ……俺が子供か。反面教師かどうかは知らん。

「でだな、隆也」

「何だよ」

「我が家の妹が、妹では無い件についてどう思う?」

 言葉が詰まる。どういうこと? 何でバレた? そもそも色々大丈夫なのかこれ? 詳しくは知らないけども。

「とりあえずネロは起こしたぞ」

 ……おーけーおーけー。完全にバレてますねこれ。

「いやー、普通に電話に出たら普通に応対してくれたあのリサエルって天使、いい天使だな」

 もうなんか色々めんどくさいです父さん。

「今年と来年を一週間に纏めるんだろ?」

 要約すればそうなりますかね。

 なるようになれ。返事も適当に済ます。

「まあ俺が言いたいのは、隆也、よくやった」

 サムズアップ、と父さんは言った。

 思わず無言で腹にパンチを食らわせている自分がいた。自分でいうことかよそれ。そもそも俺はそれの意味を知らない。


 _____


 土曜日更新します(先週のではない)状態とか笑えないですねごめんなさい。

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