8.電話SideB

「もしもしお兄ちゃん!?」

 知らない番号から電話がかかってきたので出てみたら、突然妹の声が流れてきてびっくりした。

 知らない番号でも三回かかってきたら電話を取る。スパムは無視するが。てかスパムの電話って何だそれ。そんなことを考えながら電話を取ると突然妹の声が聞こえてきたので驚いた。

「あ、ああ。瞳か」

「うん」

「ところで何があったんだ?」

 誘拐されたのかとか、何で電話がかかってきたんだとか、誘拐されたのかとか、他にも色々聞きたいことはあったが、一つ質問をする。

「えっとね、かいつまんで説明するね。変なこととか言って、なにがなんだか私でも分からなくなるかもしれないけど、頑張ってね」

 そうして我が家の妹は訳の分からないような、でもなんとなく分かるような話を始めた。


 曰く、なんか手違いで天国に来ちゃった。

 曰く、そうしたら天使(?)に捕まり一週間ほど滞在することになった。

 曰く、今、瞳の中にいるのは瞳の前世であるネロである。

 曰く、アイス食べたい。


 最後のは全く関係ない気もするが、瞳が言ったことを要約したらそうなった。

 全てを聞いた後に俺が発した言葉は、

「天使リサエル、ドジっ子属性なのか……」

 電話の向こうで「不服です!」と主張するリサエルの声が聞こえた。多分。この声の主がリサエルだと思う。電話の声を聞くとは……一体どんな耳をしているのだろう。スピーカーから流している可能性もあるが。

「……で、兄ちゃん」

「ん? 何だ?」

「アイス食べたい」

 瞳はどこに行っても変わらずにアイスを愛する人だった。

 父さん母さん、今日も相変わらずに世界は平和です。

 ワーカホリック気味で今日も元気に働いているはずの両親に心の中で小言を吐きながら、それでも妹のためにアイスを何とかしなくてはと思う俺はおかしいのだろうか。

「……ため息をつく本巣隆也氏」

「おお。突然メタいことを言い出した」

 瞳から茶々が入るが無視して考える。

 十分ほど考えただろうか。その間に瞳やネロがちょっかいをかけてきたのであまり覚えていない。

「……うーん、リサエルさんに作ってもらったらどうだ?」

「ふぇ?」

 そう反応したのはリサエル。

「それだ!」

 手を叩きながらそう反応したのは瞳。

「じゃあ作ってもらうね!」

「但し一日につき一つでな」

「はーい!」

 返事の後に電話が切れた。

 さて、残りの問題は、

「ぬ?」

 暇です、と体で表現するかのようにだらけきったネロである。



 _____


 隆也はBoyなのでSideBです。

 ちなみにSideAのAはAngelです。

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