その3-6

「しかし考えれば考えるほど、とんでもない説だな。」

 そのようだな。

「何年か前にT理論というこれに似たのをネットで見たのを今話ながら思い出した。その時はチンプンカンプンだったが、これだとなんとなく納得できる。」

 T理論?いろんな理論があるもんだ。

「あと、リサ何とかという物理学者が、異次元の世界がこの世界をとりまいているなんてことを言っているというのを聞いたことがあるが、ベリタスがそれなのかも知れないな。」

 物理学者が…スゴ…。

「今でこそ、光は波と粒子の両方の性質を持っていると言われている。」

「へ~、なんで?」

「いろいろな実験でそうなることが分かってきたらしいんだが、オレもどういうこと?って思ったからそう聞いたさ。なのに『不思議だよね~。だけどそういうものだと思ってね~』なんてごまかされたんだよ。だからオレは物理が嫌いになったんだ!」

 つくづくご愁傷様なヤツだな。

「波と粒子の両方の性質を持っているらしいと言われる前、アインシュタインが出る前になるが、光は波によって伝えられると言われていたんだ。で、何もないところには波は起きないからエーテルなんてものが宇宙空間には広がっているとされていたが。」

「エーテルランプの?」

「いや、そのエーテルとは違う。全く関係無いというわけではないが、今話しているエーテルとは別物だ。その、宇宙にあると言われていたエーテルだが、今はもちろんないことが分かっている。ベリタスもエーテルみたいなものって言えばそうだがエーテルと違うところは宇宙空間にあるわけではないという事だ。」

 そうなのか。

「あ、因みにだが。」

 ウン?

「全ての物は光の速度を超えては進めないと言われている。」

「なんで?」

「光の速度に近づいていくとその物体はどんどん重くなるらしい。」

「へ~。」

「『へ~』って。」

 そんなに苦笑するな。

「まあ、それが普通の反応だな。で、光の速度になると重さが無限大になるから、光の速度は超えられない、と言うのが理由らしいが。これって納得できるか?」

 納得できるか?と言われても。そもそもすでに僕の理解の範囲を超えているんだが。

「まあ、オレが言いたいのはそこじゃなくて、もしも光速度…光より速く動けたらと言う仮定の話だ。もしも光速度より速く動く物体があったとして、その物体がマコトに向かっていてそれをマコトが見ていたとしたら。ベリタス説ではどうなると思う。」

「速過ぎて見えない。」

「それはそうだが…。」

 ヨシオまたも苦笑。

「ベリタス説関係無しだな。そうだな…取り敢えず、一瞬、雷のようにほんの一瞬だけは見える。まあ、光速度以上で飛んでいるウルトラマンとか想像しろ。どうなると思う。」

「…………分からん。」

「ウン。光速度以上で飛ぶ。で、その物体の情報はベリタス空間を光速度で伝わる。マコトがその姿を見るまでにウルトラマンの情報はベリタス空間に光速度以上でどんどんたまってくる。マコトの目にようやく届いた時にはその情報が一気にこの空間に現れて…。」

 ……なんだ?妙な間だな。

「……爆発する。」

「…爆発?」

「そう、爆発する。おそらく地球くらいは簡単になくなるような気がする。地球どころかウルトラマンの姿を確認できる空間…例えば月とか…火星はどうかな~、まあ、それくらいはなくなると思う。」

 恐ろしい話だが。

「爆発…は大袈裟なんじゃないか?」

「いや、大袈裟じゃない。例えば超音速…音速以上の速さで飛ぶ戦闘機があるだろ。」

「あるな。」

 一瞬自衛隊の航空ショーが頭に浮かんだ。

「あの戦闘機が超音速で通った後、結構な衝撃波が地面に届く。」

 へ~。

「何年か前にロシアに隕石が落ちた…ア、落ちはしなかったがロシア上空で爆発したの覚えてるか?」

「ウン。」

「あれは上空で爆発した衝撃もあるが、実は音速の何倍もの速さで落下したことによる衝撃波も深刻で、あれで窓ガラスが割れたりした。動画を見ただろう?」

 見たような気がする。ア、結構見た。そう言えばテレビでも何回も放送されていたっけ。

「強風で窓ガラスが割れたのか?」

 ……オイオイそんなに深刻な顔をするな。それでも僕は生きているんだから。

「強風じゃない。衝撃波だ。音速の何倍もの速さで空中を飛ぶとその飛行体が空気を裂く音が発生するのは分かるな。分かりやすく言えばバットを鋭く速く振った時に出るあの音のまだすごいヤツだ。」

「ああ。」

 アニメの画しか頭に浮かばんが。

「飛行機が飛んでいる時も隕石が落下している時も空気を裂く音がしているんだ。飛行体が音速を超えて飛ぶと音が届くまでに音の波がどんどん溜ってくる。そして最終的に音が塊で届く。それが衝撃波で、窓ガラスなんか平気で割ってしまう。いいか、空気の塊だ。」

「空気の塊か…。」

 電磁郎先生の空気砲の実験を思い出した。

「いいか、空気ですらあのエネルギーだ。光のエネルギーは計り知れん。」

「え~?そんなに強くないだろう。」

「お前、光をバカにしたらいかんぞ。懐中電灯の明かりですら、手に当てると温かいと感じるだろう。それが…何倍になるか分からんが一気に来ると考えてみろ。」

 一気に…。

「それは…大変だな。」

「そうだろう?…イヤ、正直に言う。爆発するかどうかは分からん。ただ、失明は覚悟しておいた方が良いだろう。だから、光の速さを超えて飛ぶのはお勧めしない。もしかすると、光速度以上のが存在しないのは重さとかの問題じゃなくて、案外そちらが原因かもしれないな。」

 ベリタス空間の話をちょっと聞いただけでここまで話を膨らますヨシオもある意味すごいな。

「光が何に対しても秒速三十万キロなのも宇宙空間ではなくベリタス空間を進むため。ベリタス空間なら何億光年離れてても情報はすぐに届く。重力もそうなんだろうな。」

「そう言えば重力もベリタスが関係しているらしいぞ。」

「はあ?」

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