第67話 アルマイティ

【概要:拳姫ミーチャ、究極神拳アルマイティアーツ開眼】


「う…ん…ここは?」


『やっと気付いたのね。まあ、正確には今現在も寝ている状態なんだけども

 私を知覚できたという意味でね』


「あなたは…誰?」


『私?私は、何といったらいいかしら…まあ、あなたの"肉"よね』


「私の…肉?」


『うん。そう、あなたの肉』


『正確には、あなたの肉に内包された記憶素子の集積体って所かしらね?』


「もっと、簡単にお願いします」


『そうねえ。記憶素子でわかりづらければ…ほら、遺伝子は知っているでしょ?

 遺伝子は親から子へと受け継がれる生き物の体の設計図みたいなものよ。

 だから知識や経験などの情報は伝えないの』


『そういう情報は言葉や絵や図を使って感覚器官から伝えていくしかない。

 現に人は、そうやって情報を伝えてきたわ』


『でも、不思議じゃない?蜘蛛は産まれた時から巣の張り方を知っているし

 セミは誰にも教わることなく、一連の求愛サイクルを繰り返すわ。

 これって遺伝子だけじゃ説明できないことなの』


『そこで人は何か生命の体には記憶を伝える因子があるのではないかと

 考えたわけ。それが記憶因子』


『近年の研究で細胞の活動に付随するある種の化合物が

 知識や経験などの情報を伝えているのではないかという話があってね。

 ほら?聞いたことない?移植手術を受けた患者が本来なら知らないはずの

 言語を喋ったとか…』


「長いな…あの…すみませんが、何か具合が悪いので簡潔にお願いします」


『おっと、そうか。あまり時間がなかったわね。

 簡潔に言うと私はあなたの"ご先祖様"なの』


「私のご先祖様!!?本当に?」


『正確には全然まったく違うけど、もうその認識でいいわ。それでさっそく本題に

 入るけど、あなた私の奴隷…いや、友達になる気はないかしら?』


「今、奴隷っていいました?」


『いいえ、言ってないわ。正確には言ったけど言ってないことにする。

 それでどうなの?友達になる気はある?私と友達になれば特典満載よ。

 たとえば、今も貫かれたあなたの心臓の穴を塞いであげてるの。

 これって本当はダメなことなのよ』


「私が心臓を…?うっ!そ、そういえば思い出した…」


『そう、今大ピンチでしょ?しかもあの嫌な女、あなたの首をはねようと

 してるのよ。さすがの私でも首が取れたらどうしようもできないわね』


「と、友達になれば…死ななくて済むと…?」


『そうね。それどころか。あなたたちがもっとも欲しがるものをあげられるわね』


「私が…欲しがるもの?」


『そう、勝利よ。好きでしょ?勝つの。私は"いる"だけで満足なんだけど

 あなたたちはそうじゃないわよね?勝たなきゃ生きていけない場面もある。

 今がちょうどその状況だけども』


『それで、どうするの?さっきもいったけれどあまり時間がないの。

 あなたが負ったダメージの事もそうなんだけど、この会話が長引くのも

 マズイ状況なのはわかるわね?』


『まだあなたがダウンしてから、ほんの1秒ほどだけれど

 あと一秒経過したら、その首の保障はできないわ』


「わかった!わかったわ!あ、あなたと友達になりたい!

 どうやらそれ以外に選択肢もないようだし…」


『よろしい!では、契約は完了よ。

 それではあなたに授けましょう…勝つために、生きるために連綿と蓄え受け継いできた戦闘技術の結晶…』


『究極神拳(アルマイティ・アーツ)を!!!』


ミーチャは覚醒し、その首に振り下ろされた刃をかわした。


ミーチャvsプルエ。第二ラウンド開戦。

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