第22話 ソルジャー

【概要:アモンvsソルジャー】


ジェイムズ・アンダーソン一等兵は語る。


「指令が下ったのは、7日の午前10時頃でした」


「4人の班でアモンをヒットしろと、そういう指令です」


「メンバーはクレイ上等兵、ジェイマン二等兵、フィット伍長と私の4名」


「装備は軽機関銃、拳銃、手榴弾など」


「昨今パレナでも銃規制ができましてね。

 あまり大きな銃器は持ち込めませんでしたが

 それでも人一人殺すには十分すぎる装備でしたよ」


「先陣は私がきりました。軽機関銃で、こう横から」


「カンがいいのか、事前にこちらを見られてはいましたがね」


「とにかく奇襲は成功。鉛玉を数十発喰らわせてやりましたよ」


「まあ…普通は、これで終わるはずなんですがね」


「何と奴は機関銃の銃撃を浴びてもビクともしませんでした」


「もちろん出血してましたので完全に無傷というわけではなかったようですが、

 戦闘行為にはまるで支障がないようで」


「すぐさま私に向かって一撃を繰り出してきました」


「ええ、ビンタでしたね」


「恐らくは手加減したのだと思いますが」


「そのビンタの一撃で、私の腕は折れ、肺も損傷し、肋骨も何本かいかれました」


「吹き飛んだ先がショーウインドウでなければ、もっとやばかったでしょう」


「ええ、もう戦闘に参加はできませんでした」


「その後、すぐでしたね。ジェイマン二等兵、フィット伍長が同じようにやられたのは」


「特にジェイマンは、建物の影から銃撃していたのですが…」


「その建物ごと吹き飛ばされましたからね。いやもう、すごいのなんの…」


「最後まで食い下がったのは、スレイ上等兵でした」


「あの獣の暴風のような剛腕を掻い潜って

 銃撃を浴びせ続けていました」


「しかし対峙した者しかわからないかもしれませんが、

 そういうことを冷静にやれるような相手ではないんですよ。

 あのアモンという男にはね」


「それもリロードしながらですから…」


「私に言わせれば彼も十分、化け物です」


「事態が動いたのはスレイ上等兵の銃口が奴の顔面に向いた時でしたね」


「恐らくは目狙い…私が彼ならそうしてる」


「奴の動きを見切り、ようやく必殺の一撃を打ち込める余裕が

 できたのでしょう」


「だが次の瞬間、スレイ上等兵は宙を舞っていました」


「回転したんですよ。すごいスピードでね」


「狙いを定めるための一瞬の硬直を突かれたんですね」


「10…20、いや30回転はしたかな?」


「それで終わりです。スレイ上等兵は昏倒し辛うじて意識があったのは私だけ…」


「奴は私を一瞥するとそのまま去っていきました」


「もう私に戦う気力がないと判断したのでしょう。

 実際にはその通りでしたがね」


「翌週、医者からもう第一線には戻れないことを告げられました。

 肺の具合が思ったより酷くて手術したんですよ」


「だが、正直ほっとしてます」


「もう、あんな化け物と戦わされるのはごめんでしたからね」


「壊し屋アモン…」


「たしかに…」


「その名に相応しい壊しっぷりでしたよ」

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