第114話 不思議体験を語るスレより「とある村の革ジャン男」


35:名無しの都会出身


 私が小学生の頃の話です。


 夏休みに、祖父母が住んでいる田舎の村へ遊びに行きました。

 その村の近くには、綺麗な渓流があったので、父と一緒にそこへ釣りをしていました。

 しかし、全然釣れなくて、すぐに飽きてしまった私は、父に断って、その近くを散策し始めました。


 カブトムシを素手で掴んだり、野生のたぬきを追いかけたりして、楽しく遊んでいましたが、気が付くと、夕方になっていて、私は父の元へ帰る道を見失っていました。

 当時は、携帯などを持っていなくて、だんだん暗くなっていく周囲に恐怖心を抱き、その場に座り込んでしまいました。


 その時突然、革ジャンを着た、金髪のお兄さんが現れました。

 最初、私は驚きましたが、お兄さんはとても優しく、私の手を引いて、一緒に父のことを探してくれました。

 しばらくして、私は父と再会出来ました。私達がお礼を言うと、お兄さんは「気にしないで」と言って、森の奥へと去っていきました。


 家に帰ってから、祖父母にこの話をしましたが、そういう人は村にいないと断言されました。狭い村のことですから、祖父母の言うことは間違いありません。

この辺りには、キャンプ場やツーリングスポットもありませんので、たまたま通りかかったというのも変な感じがします。

もちろん、観光客などの可能性はありますが、そうとは言い切れない雰囲気が、彼にあったような気がします。


 地味ですが、これが私の不思議体験です。



36:名無しのF県出身


 まあ、こういう出来事を聞くと、なんか期待しちゃうよね。

 十中八九、ただの人だと思うけれど。



37:名無しのS県出身


 でも、森の中に向かって言ったんだよね?

 何か、普通じゃないように思えます。



38:名無しの都会出身


 >>36

 そうですね、私も半信半疑です。


 >>37

 そう言ってもらえて、有り難いです。



39:名無しのA府出身


 送り狼みたいな感じだけど、ちょっと違う気がするんだよなぁ。

 何か、「これを破ったら、悪いことが起きる」みたいな制約はなかったの?



40:名無しの都会出身


 >>39

 はい。転ぶなとか、言われませんでした。



41:名無しのI道出身


 どんな会話をしたか覚えている?



42:名無しの都会出身


 >>41

 当たり障りのないことを話しましたね。

 どこに住んでるのか? とか、何年生か? とか、そういう感じですね。



43:名無しのS県出身


 革ジャンのお兄さんのことは何か聞きましたか?



44:名無しの都会出身


 >>43

 そう言えば、何も聞いていませんね……。

 森の中で、何をしていたのかくらい、話しても可笑しくないと思いますが……。



45:名無しのK県出身


 もしかしてだけど、その村って、N県にあって、普通には読めないような当て字だったりする?



46:名無しの都会出身


 >>45

 ――正解です。



47:名無しのA府出身


 マジか……。



48:名無しのI道出身


 もしかして、その革ジャンお兄さんじゃあ……。



49:名無しのK県出身


 >>48

 申し訳ないけれど、違う。

 実は、この前のスレに、田舎の村で革ジャンのお兄さんに助けてもらったという話を見かけたから、ちょっと聞いてみただけ。



50:名無しのF県出身


 >>49

 マジ!?



51:名無しの都会出身


 >>49

 すみませんが、その部分を教えてもらってもいいですか?



52:名無しのK県出身


 >>51

 いいよー。

 ちょっと待ってて。



53:名無しのS県出身


 すごい話ですね。

 こんな偶然があるんですね。



54:名無しの都会出身


 まだ、鳥肌が収まらないです……。

 何気に書いたことが、こんなことになるなんて……。



55:名無しのK県出身


 引っ張ってきたよ。貼り付けるね。



  767:名無しのN県出身


   今から十年前、僕が小学生だった時の話。

   当時、僕は田舎の村に住んでいた。名前が当て字になっている、何も変哲のな

  い村。


   そこには、森と渓流があって、僕はそこへよく遊びに行っていた。

   ある日、学校の帰りに、そっちの方に寄り道した。川のギリギリまで近づい

  て歩いていたら、ズルッと滑って、中に落ちてしまった。

  

   ランドセルが浮き輪になって、沈まなかったけれど、体が流され始めた。僕は

  泳ぎが得意だったけれど、パニックで手足をばたつかせることしか出来なかっ

  た。

   その時、誰かが、僕のランドセルを掴んで、岸に引っ張り上げてくれた。


   それは、金髪に革ジャン姿の見たことのない青年だった。

   僕がお礼を言うと、彼は無事で良かったとほっとした表情で返した。


   河原から上がって、大人を呼んでくるから待っててくれと言って、彼は僕を置

  いて去っていった。

   しばらくして、僕の家族と近所に人が駆けつけてくれた。金髪の青年に呼ばれ

  て来たという。


   体をタオルに拭かれながら、周りを見ても、その金髪の青年はいなかった。

   僕が、あの人は? と訊いてみても、いつの間にかいなくなっていたらしく、

  この場の誰も、どこの誰だか知らなかった。


   ……大人になってから、僕が生まれるよりも前に、あの川でおぼれて亡くなっ

  た人がいることを知った。

   当時の新聞を見ても、その顔は分からなかったけれど、僕は、その人が自分の

  ことを助けてくれたんだと、今も思っている。



 ――という話だったね。



56:名無しの都会出身


 確かに、共通点がありますね。

 私が会ったのも、N県出身の方と同じ人(?)かもしれません。


 ただ、私がそのお兄さんに遭遇したのは、二十年ほど前なんですね……。



57:名無しのF県出身


 >>56

 年取ってないじゃないですかー。ヤダー。



58:名無しのA府出身


 溺れて死んでしまったのに、人を助ける存在になるというのは、聞いたことないなぁ。

 何気に、新しい怪奇現象のパターンなのかもしれない。



59:名無しの都会出身


 実は密かに、いつかその革ジャンのお兄さんに会って、改めてお礼を言いたいと思っていました。

 でも、彼はこの先も、本当に困った人の前にしか現れない。そんな気がします。













































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