第101話 雪を溶く熱


 肌寒さで目が覚めた。夜の満ちた室内、電気は点けていなくてもカーテン開けっ放しの窓から入ってくる町の光で、物の輪郭がぼんやりと青く浮かび上がってくる。

 私は身震いを一つして、テーブルの上のリモコン群からエアコンのそれを取り、暖房を起動させた。ぐううんとテレビの上にあるエアコンが温かい空気を吐き出し始める。


 まだまだ温かいとは程遠い室温の我が城で、私はのそのそ動き出す。ソファーから起き上がり、壁側のスイッチを押して明かりをつける。

 真っ白なLEDライトがあまりに眩しすぎて、反射的に顔を顰めてしまう。しょぼしょぼ目を瞬かせて、やっと慣れてきたところで、今度は真っ暗な窓の外に視線が吸い寄せられた。


 時計を見ると、七時だった。スマホゲームをして寝落ちして、二時間くらい寝ていたっぽい。何もしていないから、おなかも空いていない。

 ともかくカーテンを閉めようと、ベランダに出られるその窓へ寄った。ガラス越しの冷気に縮こまったけれど、窓の外に見えるそれに目を奪われて、私はあろうことか窓を開けていた。


 二階のベランダからは住宅街を通る道路が見える。そこに並んだ街灯の元に、しんしんと降る雪の白さが浮かび上がっていた。

 道理で寒いわけだと白い息を吐きながら、その様子を眺める。交通機関が止まったり、道が歩き辛くなったりと、雪に対してはあまりいい思い出がないにもかかわらず、降雪の瞬間に見惚れてしまうのはどうしてだろう。


 ベランダの手すりには、すでにうっすら雪が積もり始めていた。空を見上げると真っ黒で、どこまでも重たい雲が敷き詰められている様子を想像できた。

 雪は、静かに少しずつ、だけどちょっとやそっとじゃ止まないぞと言ったしつこさで降り続けている。明日の積雪はどうなるのだろう。


 その時、玄関の方からチャイムが鳴った。

 あれ? と思って振り返る。宅配便を頼んだ覚えはないし、そもそも誰かが来る予定もない。とりあえず、様子を見に行くことにした。


 ドアの除き穴から外を見る。そして、あっという声を飲み込んだ。

 マンションの廊下に立っているのは、黒縁眼鏡をかけた男性。不安が濃く現れた顔で、ダークブラウンに染められた髪を引っ張るように触っている。


 秋人あきひとだ。勝手に早鐘を打つ心臓をよそに、湧き上がる疑問に頭の中がいっぱいになる前に、私はドアを開けていた。


「あ、久しぶり」


 人懐っこい笑顔。ちょっと高めの声。十二年前と、何にも変わらない。

 一瞬で、二人の間に隔たっていた時間と距離が消えてしまったかのような気持ちになる。私は、相好を崩した。


「どうしたの、急に」

「いいじゃないの。中入っていい?」

「どうぞ」


 彼は、右手にビニール傘、左手に近所のスーパーの白い袋を持っていた。「お邪魔しまーす」と、秋人は荷物をがさがさ鳴らしながら玄関に上がってくる。

 何の断りもなく、玄関の傘立てに自分の傘を入れたあと、三和土から廊下へ上がった秋人は、腕をさすりながらぶるりと体を震わせた。


「ちょっと、寒くない?」

「あ、さっき暖房付けたばっかだから」

「そうなの? 帰宅直後だった?」

「ううん。うっかり寝落ちしちゃって」


 正直に答えると、秋人は腕を組んだまま、「ははん」と目を細めた。


「俺が来ていなかったら、凍死していたな」

「そうかもね」


 訂正するのも面倒なので、そのまま彼に背を向けて、リビングに向けて歩き出す。それを、スリッパを履いた秋人がのこのこついてきた。

 背後でがさがさ言っているビニール袋に、ペタペタというスリッパの音。自分以外の生活音がこの家の中でなっていること自体、随分久しぶりだった。


 1LDKの我がマンションでは、廊下は短く、リビングの前にはドアなども取り付けられていない。今日のリビングが散らかっていなくて良かった。

 相変わらず、きょろきょろしている秋人にはソファーに座ってもらい、私はその直角、ローテーブルがベランダと向かい合う位置の椅子に腰を下ろした。


「来るなら来るって、連絡すればいいのに」

「電話番号変えたのに、教えなかったのはそっちだろ」

「そうだけど……訪問はいきなりすぎるでしょ」


 お互いに不満顔で言い合う。どちらのクレームも、そこそこ正当性があるから譲れない。

 私が文句を口にすると、秋人はしてやったりと言った表情で口元を吊り上げた。


「賭けだったよ。引っ越している可能性があるし」

「勝てて良かったね」


 他人事のように返しても、秋人は得意げに鼻を高くしている。

 それからふと思い出したかのように、指を折って数えだした。


「最後にこの部屋に来たのは、確か、十二年前だったな」

「そうそう。懐かしいね」


 高校卒業後、私は県内の大学に、秋人は電子工学の専門学校に進んだ。このマンションは、その時から借りている。

 引っ越しには、私と友達と、幼馴染である秋人が手伝いに来てくれた。みんなでワーワーキャーキャー言いながら荷物を運び入れて、夜はパーティーを開いたのを覚えている。


「あの時は、みんなテンションが上がって、お酒を飲もうってなったよな」

「うんうん。どこも売ってくれなかったから、諦めたけれど」

「その時のリベンジしようぜ」


 にやりと笑った秋人が、ローテーブルに置かれたビニール袋から二本のビールを取り出した。


「あ、ビールで良かった?」

「ううん。大丈夫」


 まだ状況を飲み込めなくてきょとんとしている私とは反対に、秋人はニコニコしながら、ビニールからさらにチー鱈、裂きイカ、ウズラのゆで卵の燻製を取り出した。


「……チョイスに年齢を感じる」

「うるせー」


 ちょっと不機嫌になった秋人は、そっけなく私にビールを手渡した。第三のとか発泡酒とかじゃない、ちょっと高級なビール、いつ以来だろう。

 プルタブを開けると、心地良い音と共に飛沫が弾ける。一先ずの乾杯をして、一口目を呷る。シュワッと広がる炭酸の刺激と苦みから、値段を感じ取れる。


「あー、おいしい!」

「秋人とこんな風にお酒が飲める日が来るなんてねぇ」

「なんだかんだで、引っ越しの時以来会えなかったからなぁ」


 しみじみと噛みしめる秋人は、ふいにビールを片手に持ったまま、ぴたりと止まった。じっと私の顔を見つめる。

 何かを言おうとしている。それを期待している自分がいるから、「何見てんの」と茶化すことができずに、私も固まってしまった。


「……こういう時、『変わったな』も『変わらないな』も失礼な気がするけれど、何と言えばいいんだ?」

「……『垢抜けたね』が一番無難だと思う」

「あー、なるほど! 勉強になった」


 納得して何度も頷く秋人を見て、ああ、こいつはこういう奴だったなと、変に和んでいた。

 私に対しては、裏表がない。だから私も、素直に振舞えるわけで、その距離感が一番心地良かったんじゃないか。


 おつまみもそれぞれ開けて、ポリポリ齧りだした。

 そのタイミングで、そうそうと秋人が切り出す。


「坂浦駅の線路沿いに、駄菓子屋あったの覚えている?」

「ああ。あったねぇ。校区じゃなかったから、数回くらいしか行ったことないじゃない?」

「だった、だった。あそこさ、久しぶりに行ってみたんだよ」

「へえ。お店開いてたの?」

「うん。俺もびっくりしたよ。おばちゃんも変わらなくてさ、まあ、俺のことなんて覚えていないと思うけれど」

「そうなんだ。あの紫色の髪で?」

「それも変わってない」

「あっちは、他の駄菓子屋よりもクジが安くって、みんな絶対に引いてたよね」

「俺もそれ思い出してさ、引いてみたんだよ」

「どうだった?」


 イカを噛みながら尋ねると、秋人はジーンズの尻ポケットからスマホを取り出した。

 そのケースも付けていないむき出しの背面に、きらきらしたキャラクターシールが貼られている。


「初めて、残念賞以外が当たった」

「うわー、すごい」

「正直、子供の時くらい嬉しいとは思わなかったけどねぇ」

「いいじゃん。自慢になるよ。あっちで当たった子、見たことなかったし」

「今考えるとあのくじ、インチキしてたんじゃないかと思うよな」

「わざと当たりを少なくしていたのかもね」


 お互いに、懐かしみながらそんなことを話している。

 それから堰を切ったかのように、秋人は色んなことを話し出した。


 隣の家の外で飼われているミニチュアピンシャーが、いつも塀くらいの高さをジャンプしていたけれど、とうとう塀を飛び越えて脱走してしまったという話。

 専門学校に行ったらお洒落になろうと思い、タンクトップを買ってみたけれどそれを着る決心がつかずに、結局タンスの中に仕舞い込んだという話。

 中学生の時、送ったはがきがゲーム雑誌に載ったのでそれを大事にしていたけれど、大人になってから母親に間違って捨てられて落ち込んで、見かねた母親がネットを使って買い戻してくれたという話。


 どの話も面白くて、私はゲラゲラ笑っていた。こういう秋人のトークショーは、私たちが小学生の頃から何度も開催されているため、その話術は年齢を重ねるごとに洗礼されている。

 閉め忘れのカーテンの向こうでは、まだ雪が降っている。すっかり温かくなった部屋の中だけが、十二年前の時間でぴたりと止まってしまったかのようだった。


 だけど、これが仮初めのものだということはよく分かっている。秋人だって、単純に私とこういうくだらない話がしたいから来たわけではないだろう。

 ただ、会話の中で秋人が自身の近況や、私の仕事のことなどを訊いてこないことには、正直ほっとしていた。自分の今のことについて、嘘をついて誤魔化すことも出来ないし、だからと言って正直なことも言えないので、どうしようもない沈黙が流れることになるのだろう。


 ふいに、ビールの缶を仰いだ秋人が、ちょっとだけ目を見開いた。

 どうしたんだろうと思ってみていると、口から離した缶を覗き込んでいる。飲んでいる缶や瓶が無くなると、それを覗き込んでしまうのが小さい時からの秋人の癖だった。


「その癖も直らないねぇ」

「……ん? ああ、そうだな……」


 からかい気味にそういってみても、彼の返事はふわふわと曖昧だ。普段なら、「三つ子の魂百まででしょ」かと言い返してきそうなのに。

 ……こういう時、会話を交わしていなくても、秋人が何を言いたいのか分かってしまうから嫌だ。付き合いが長いと、知りたくないことまで見抜いてしまう。


 意を決したように、秋人は私を正面から見据えた。その心臓の音まで聞こえてきそうなほど、彼は緊張している。

 「急に来たのは、理由があって、」と秋人は語りだした。もちろんそれは最初から気付いていたことなので、無言で頷き、次の言葉を待つ。


「専門学校を卒業した後、ゲーム会社に就職を目指していたけれど、全然ダメで、諦めて、家電量販店に入ったんだ」

「うん」


 子供の頃からゲームが好きで、話題作は必ず持っていた秋人が、将来はゲームクリエイターになりたいということは私もよく知っていた。

 ただ、実際に専門学校に行った後はどうしていたのか、風の噂も耳に入ってこなかったので、この話は意外だった。


「生活に困っているわけじゃないし、ゲームコーナーも任されていたから、不満はなかったんだけど、ちょっと、くすぶっている気持ちもあってさ、」

「うん」

「そんな時に、半年くらい前かな、専門学校の先輩から連絡があって、今度、東京でスマホゲームの会社を立ち上げるから、一緒に働かないかって誘われて……」

「うん……」


 秋人の声が小さくなってくると同時に、私の息が苦しくなる。

 それを悟られないように、前のめりになって、耳を傾けていた。


「これが最後のチャンスかもしれないって、その話に乗ったんだ。仕事も辞めて、東京に住む家も見つけた」

「そっか……」


 背負っていた重荷を下ろしたかのように、秋人は深い溜息をついた。電灯以外は何もない、私の部屋の天井を見上げる。

 私は、こわごわと、でもどうしても訊きたいことを尋ねた。


「出発はいつ?」

「明日」


 あまりに急で、絶句してしまう。

 驚いた私の顔を見た秋人は、弱々しくも笑い掛けてくれた。


「ごめん。急で」

「ううん。いいの、別に」

美冬みふゆにも言わなくちゃとは思っていたけれど、連絡先も変わっているし、直接会うしかなかったから、どうしても後回しになって……」

「秋人は昔から、苦手なものを最後に片付けるタイプだったからねぇ。給食とか、夏休みの宿題とかでも」

「あははっ、そうだったな」


 二人、顔を見合わせて笑い合う。やっと私も、心から笑うことができた。


「さっき話していた、坂浦駅で朝の十時に出発する予定だ」

「そうなんだね」

「多分、土曜日だから、それなりに見送りの人が来るとは思うけれど……」


 伺うように、秋人は私の顔を覗き込む。ああ、隠していたつもりでも分かっていたんだなと思い、苦笑が漏れる。

 もしも私が秋人の見送りに来ていたら、私の方が注目されてしまうだろう。何せ、私は今まで、成人式も同窓会も来ていないのだから、みんな私が何をしているのか気になるはずだ。


「ごめん。見送りまではいけないよ」

「うん。なんとなく分かっていたから、気にすんなって」


 秋人は豪快に笑っているが、その瞳の中の陰りを、私は見逃さなかった。

 以心伝心できる仲なんて、悪いことの方が多い。私はそんなことを心の中で毒づきながら、最後に残ったビールを一気に飲み干した。






   △






 私の半生を振り返ると、もうちょっと上手くできなかっただろうかと思うところが何度もあった。

 一番最初のターニングポイントは、大学の時のアルバイト。見事なブラックで、昼夜問わず働かされて、単位にまで響いてきて、成人式に行く余裕なんてなかった。


 この経験を生かして、今度は絶対にちゃんとした会社を選ぶぞと意気込んだ就職。会社自体は非の打ちどころが無かったが、配属された部署は部長の独裁政権により、気に入らない社員と見なされた私は長年苦しめられた。

 もう明日の暮らしなんてどうでもいい。我慢できないと、後先考えずに止めたのは三か月前だった。


 その日から、仕事探しなんてせずに、一日の大半を家の中で怠惰に過ごしている。

 このままではいけないということは分かっている。ただ、二社連続でブラックな会社を引いてしまったダメージは計り知れなく、今度もまた同じような目に遭ったらどうしようと、要らないことばかり想像してしまう。


 今の自分に、全く自信が持てない。だからと言って、新しいことを始める勇気もない。

 このままでは心身が持たない! と会社を辞めたはずなのに、本当に辞めて良かったのかなんてことすら考えてしまう。


 そんな状況なので、とてもじゃないが、友達と会う心の余裕なんてなくなっていた。

 久しぶりにあった相手に、自分のこれまでを打ち明けてしまうのは、苦しくて、恥ずかしくて、それならば誰にも会わないでおこうと決めていたはずだった。


 なのにどうして、私はこんなに早く起きているのだろう?

 時計を見たら、朝の七時。会社を辞めてから、初めて十時よりも前に起きた。


 カーテンを開けてみる。町はうっすらと雪に覆われて、木々の枝や屋根や電柱など、あらゆる所が白く輝いている。

 これくらいの雪なら、電車は走りそうだなと、また降り出してしまいそうな灰色の雲を見上げて思う。


 二度寝する気力もなくて、ぼんやりと過ごしていた。そんな中でも何度もスマホを開いて、昨晩交換した秋人の連絡先を眺める。

 行かないって決めたのに、私は身支度をして、九時半には外に出ていた。


 いまさら見送りをしたって……やっぱりやめようかな……そんな逡巡を繰り返しながらも、確実に一歩一歩坂浦駅に近付いている。信号待ちの間でも、回れ右をしようとはしなかった。

 吐く息は白く、顔に当たる風は酷く冷たい。なんで私は歩いているんだろうと、自分自身の行動に疑問を持ちながら、いつの間にか坂浦の線路沿いの道に出ていた。


 駅よりも先に、昨日秋人が話していた駄菓子屋さんが見えてきて、足を止めた。茶色い木で出来た壁に、紺色の瓦屋根で、まるで漫画に出てくる駄菓子屋みたいだと、初めて見かけた時は秋人と酷くはしゃいでいたことを思い出す。

 こんな天気だからか、子供たちの姿は見えなかった。そっと中を覗いてみる。電灯が一つだけの店内では、あちこちの陰で暗がりがうずくまっている。


 そっと氷のように冷えたガラス戸を右側に開けて、中に入ってみた。売られているものは、当時のままのはずなのに、私の身長が伸びたため、景色が変わっているように見えた。

 その中の冷蔵庫に、瓶のラムネが入っているのを見つけた。懐かしくて、手を取ってみる。初めて秋人と瓶ラムネを飲んだもの、このお店だった。


 昨晩聞いたとおり、昔のままの髪色のおばちゃんからラムネを買い、店の外のベンチに腰掛けてそれを飲むことにする。ビー玉を瓶の中に押し込むと、軽い音とともに白い泡がプチプチっと弾けた。

 季節外れのラムネは、子供の時よりもずっと甘ったるく感じた。同じ炭酸系の飲み物なのに、昨晩のビールとは大違いだ。


 スマホを取り出して時間を確認する。すでに十時は過ぎていた。

 これで良かったのだと、むしろ安心している自分がいた。もしも私が駅の見送りに現れていたら、きっと騒ぎになって、秋人に迷惑をかけていただろうと。


 目の前を、電車が走り去っていく。緑色の車体、その窓を目で追っている自分がいて、見えるわけがないんだからと苦笑する。

 電車のお尻がどんどん遠く、小さくなっていくのを眺めていると、スマホが振動した。見ると、秋人からのメッセージだった。はっと息を呑みながら、それを開く。


『今、駄菓子屋の前にいたでしょ』

『電車の中から見えたよ』

『来てくれて、ありがとう』


 返信をしなきゃ。手を振るえながら、画面にタッチする。

 なんと伝えればいいのか、自問自答の末に送れたのはたった一言だった。


『いってらっしゃい、気を付けて』


 こんなもんじゃあ、足りない。もっと言いたいことは、たくさんあったのに。いや、面と向かってするには大げさすぎるくらいにくだらない話を、あの頃のように、時間を忘れてしたいだけなのに。

 自分の過去とか、今の状況とか、プライドも恥も全部かなぐり捨てて、もっと単純に、素直な気持ちで、会いに行けばよかったのかなぁ。そんなことを言ったって、もう遅すぎるのに。


 皮肉なくらいに温かい涙が、ぽろぽろと流れてきた。暗くなったスマホの画面に、ぽたぽたと零れる。

 背中を丸めて泣いていると、音もなく雪が降ってきた。雪は、私の涙の上に落ち、一瞬で溶けていった。

























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