第20話 冬に


 信号が赤に変わり、私はブレーキを踏んだ。


 年が明けたばかりの、新しくて冷え冷えとした風が、空けた運転席の窓から入ってくる。

 日が落ちて、愛車の頭上には紺色の夜がその闇を深めているが、まだ西はオレンジ色に輝いていた。


 手押し式の歩行者信号が青になり、機械のカッコウが鳴いている。薄暗い中を一人の男性が横断歩道を渡っていた。

 ふと右を見ると、図書館に続く道が見えた。


 その道の途中には学習塾があり、丁度そこから一人の小学生の女の子が出てきた。

 白いセーターにジーンズ生地の短パンという、いかにも小学生らしいちぐはぐな格好の彼女は、でたらめなスキップを踏んでショートボブの髪を揺らしている。

 そのまま彼女一人しかいない道を渡り、塾の真ん前にある、白い光でアスファルトを照らす自動販売機へと向かっていた。


 なんでもない光景のはずなのに、妙にそれは美しく見えた。

 カッコウが鳴き終えて、私は前を向く。


 信号が青に変わり、右足がアクセルを踏んで車が走り出しても、あの光景を何度も頭の中で反芻していた。































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