第11話 カザン理論の崩壊

長老オリースは、何故かカザン国へと向かっているらしい。ということは、テスの狙いもそこにある? 解らないが、トノサたちはカザン国へと向かっている。

トメさんは言う。

「バランスが保てないとなると、何が出てくるか解りません。私トメが出てくるとも…」

ノラさんは笑う。

「トメさんが冗談を言うとはな」

それだけ緊迫した状況ということだ。少し気を緩めよう。

カザン国に辿り着くと、テスの軍隊が『何か』と戦っている。長老オリースは言う。

「カザンの理論『山ガエル』よ、鎮まるのだ。中立を保つのだ!」

これが世界の中立を保っていたもの。

カザンの理論は、『最初から』山に住んでいた山ガエルの大将に、理論を託したのか! 40メートルクラスの巨大山ガエル…。山ガエルは暴れる。カザンの国を飲み込む。僕は叫ぶ。

「ヨムコの才能を認めやがれー!」

ドントとコイルは、後方支援に回っている。テスの兵士たちが、次々と倒されていく。バーンも行った。生き残るぞ、みんな! 僕は主人公でなくとも、カザンの理論など認めん!

山ガエルは一人なのか? カザンは一人だったのかよ。だから、個人能力にすがる。いや、何かがおかしい。僕は何処で間違った? 何処だ!

とにかく、今は山ガエルに集中する。パワーアップしたトノサも、傷ついていく。ここでドントは問う。

「オリースよ。これは、避けられぬ戦いなのか? 私はもう、倒れていく兵士を見たくはない!」

オリースは答える。

「テスがやる必要はない。しかし、山ガエルを止める戦力は他に有るか?」

「くっ」

と、ドントは。

何故山ガエルは、こんなに怒っているんだ? そうか。山ガエルの目的は、『虹色のヒロイン』だったんだ。ヨムコと僕が、それを覆してしまった。

ノラさんは強い。山ガエルと対等に戦う。これほどだったとは、バーンも驚く。ノラさんが抱えているものは何だろう? よく考えれば、僕はノラさんのことをほとんど知らない。

主人公ギルド長ノラ。池の楽園の迷子ノラ。主人公トラップを、池野料理長から受け継いだ存在ノラ…。僕の情報はそれぐらいだ。

これはいけると思ったが。山ガエルのパンチがノラさんを直撃する。これはヤバいぞ。トメさんも心配する。

「ノラさん、回復を優先して下さい」

バーンと僕で、山ガエルに突っ込む。山ガエルが 喋りだした。

「キサマか、ロウヘイ。最高のブラッド、主人公を持つロウヘイ。ブラッドを持たぬヒロイン、ヨムコー!」

「そこまで虹色のヒロインにこだわるのかよ、カザンの理論」

「こだわるよ。成立していればカザン大陸は保たれた。ロウヘイこそが、『個人』のヨムコにこだわっているのだ!」

「何!」

確かにそうかも知れない。僕は言い返せない。それでも、僕はヨムコを主張する。

カエルハンマーが、山ガエルを捕らえた。どうた? やったか? 山ガエルは苦しんでいる。まだだ。行くぞ、トノサ!

山はあるよな、トノサ。ヨムコの登る山は何処かにある。無責任な答えだね。だが次の瞬間、僕とトノサは山ガエルにぶっ飛ばされた。

意識が遠のく。僕ではダメだった…。ならば、誰が山ガエルを止める?

「ロウヘイ様。私が止めてみせます」

声の主は、何とトメさんだった。トメさんは、ナイフで山ガエルを圧倒する。

ノラさんは叫ぶ。

「止めろー、トメさん! それは、池野料理長のご主人様の『タブーの力』だ」

トメさんは不気味に笑う。

「フフフ、池野様はノラさんばかり見ていた!」

「違うぞー!」

ノラさんの叫びが空しく響く。トメさんの力が、山ガエルを砕く。カザンの理論は崩壊した。闇に染まったトメさんを止めるのは、池野料理長の託した少年、バーンしかいないのか?


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