第9話 黒板とチョーク

ここでノラさんは、ヤクの国からクサリ君を派遣してもらっていた。クサリは、料理人を目指す、ヤクの国の兵士長だったよね。クサリは黒板の知識が豊富らしい。

トメさんによると、

「すでに20パーセント位のテスの兵士が、動いています。ドントは半数近く用意すると、私は推測します。そして、目的地はコレクターの拠点です!」

バーンは問う。

「チョークさんの派閥の支配率は?」

トメさんはバーンに報告する。

「バーン様は、残念ながら7パーセントから13パーセントへ上がった程度です。それはそれで凄いのですが、女王ミドリの策に無理があったようです」

あの強さを誇るチョークでも無理ってことは、コレクターの個人としてのパワーは、計り知れないぜ。

クサリは言う。

「テスとコレクターのどちらに付くんだ? って、両軍の目的はバーンじゃねぇか」

すでに小競合いは始まっている。『黒板』とは、テスとコレクターが奪い合うほどの魅力があるのか。

コレクターのリーダー格の一人ハントは言う。

「チョークの指図は受けん。黒板さえ手に入れば、チョークなどたやすい」

「それは、こっちのセリフだ」

と、コレクターは統率がとれていない。

これは、テスが有利か? 黒板のついでにコレクターも潰せば、テスは飛躍する。

チョークはメンバーに向かって言う。

「キサマらは、黒板の使い方を知っているのか?」

「挑発には乗らねえよ」

とハント。

コイルのドリルの兵も動いた。ドントも構える。こいつらは、テスのトップクラスだ。他にも大きな戦力を持つテスだが、ドントは、コイルとドリルが今回の作戦に適していると、判断したようだ。ノラさんは、だから前回逃したくなかったのかよ。

バーンは言う。

「チョークさんはどうだ? 援護するためぞ」

ドントは言う。

「バーン、いや黒板の本体よ、景品はおとなしく見ていろ!」

「それは、どうだろうな」

と、何故かチョークが答える。

コレクターの兵士たちは、どの派閥に付くか悩んでいるものが多い。今更かよ。いや、チョークが動いたのが理由だ。コレクター内で、派閥争いが激化した。テスは見逃さない。ノラさんとトメさんは、危険人物を優先して攻撃する。

ノラさんとトメさんに、どういう意図があるのだろう? クサリは言う。

「これが黒板と呼ばれるまな板だ。料理人としては気になるはず」

バーンはクサリに言う。

「おいおい、俺は多分人間だ」

「悪りい」

とクサリ。

ノラさんはテスを叩いている。やはり、テスが有利かあ。バランスをとるか、片方を潰すか、難しいな。トノサよ、力は残しておけよ。僕もカエルハンマーで暴れる。

チョークとドントの戦い。

チョークは、相当強かった。しかし、チョークの方が押されるのかよ。テスのリーダードントは、コレクターを潰せなかった理由はブラッドオークションのみと言う。そして、黒板こそブラッドオークションとなるものだ。

バーンを利用されてなるものか。バーンはこの戦いに何を見る? って、バーンはボーッとしているだけだ。元いた組織、コレクターチョークの派閥が、そんなに気になるのか、バーン!

ヤバいぞ。チョークがひるんだ。チョークは叫ぶ。

「今だ、ドントを叩けー!」

しかし、…。

「キサマがな、チョーク」

コレクターの兵士たちは、ドントではなくチョークを狙い打つ。

「これを狙っていたのか」

と、チョークのマシンは大破した。

バーンに動揺が見える。

「そんなバカな。こんなことで、チョークさんが戦死するなんて…」

僕も驚いている。しかしバーンよ、ここは応戦するべきだ。テス軍は、

「チョークが消えれば、コレクターも終わりだ。バーンを捕らえるんだ」

テスの士気が上がってしまった。

バーンは戦意を失っている。クサリがバーンを援護する。

「バーンよ、エンペラーはお前だ。キサマは一人ではないハズだ。黒板に記される者ってなれ」

記される者って、クサリは何を言っている? バーンに残されたもの。解らないけれど、信じていいんだな、クサリとバーン。

『なあ、俺たちはコピーであり、オリジナルに従う者ではない。個人としての自由を持つ。池野など忘れろ、バーン』

「チョークさんは、まだ生きている?」

『そうだ、俺たちは生きている。エンペラーのブラッドを持つバーンを、俺は恐れていた。今なら解るぞ』

「何が解るんだよ、チョークさん。バラバラになって何が!」

と、バーンは何かと戦っている。

僕はバーンを援護するが、クサリが止める。

「これは、黒板にチョークが文字を記している。『二人だけ』にしてやれ、ロウヘイ」

ここで何故かドントが、テスの兵士たちに撤退命令を出す。

「一旦引いて、立て直すぞ!」

「ドントさんは、何を言っている。チャンスじゃねーか」

「命令だ」

「は、はい」

と、テスはあわてる。

『そうだ、バーン。お前は孤独な戦士。エンペラーなどではない。だけれど親友を、ロウヘイを守りたいのだろう? 『黒板』は『まな板』へ。さあ、好きに暴れろ、コレクターの兵士たち』

クサリは驚く。

「これが、黒板とチョーク。エンペラーのブラッド。圧倒的すぎる」

かつて池野の見た景色を、バーンは眺めていた。

コレクターの兵士たちに、バーンの魂が宿る。

「チョークは、この力つまりバーンを恐れていたのか」

バーンはチョークにより覚醒した。僕はバーンを黒板にしては『ならない』と思った。バーンのブラッドが、どんなに魅力的でもな! コレクターの兵士たちは、バーンの炎を燃やす。

コイルは叫ぶ。

「ドリルー、早く撤退しろ!」

バーンはドリルに迫る。ドントも叫ぶ。

「コイルだけでも生き残れ! チョークの遺志を継いだバーンは、手がつけられん」

「でも…。解った、ドント」

と、コイルは撤退。

バーンとドリルの戦いだ。ヨムコは近くにいる。ギルドからやって来たのか。

「バーン、チョークはそうは言ってないんだよ」

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